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第一章

体育祭の出場種目を決めるよ

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休み時間になると、駿介目当ての一年生がわらわらとやって来た。この光景はよく小説にも出て来ていたのでなんの驚きもない。駿介自身も全く意に介す様子もなく、親友の青島信也と何やら話し込んでいる。

「また一年生が駿介のこと見に来てるよ」

少しでも樹に駿介のことを意識してほしくて、樹の袖を引っ張りアピールする。

「うん、いつもの光景だね。愛想のないところも」
「それは駿介が一途だからだよ」
「え、何それ。真紀、駿介の好きな人が誰だか知ってるの?」

俺の言葉に驚いたように眼を見開き、樹がこちらを凝視する。

あ、ヤバかったか。駿介は樹にまだ告白していないんだし、関係ない俺なんかが横から口出ししたらまずいかもな。

「いや、知ってるんじゃなくて。相手の事は知らないけど、誰かが駿介は一途だから他のやつらを相手にしないんだって言ってたから」

「ああ……、そういうこと」
「? 何?」
「ううん。別に」

なんだろうな、樹のやつ。意味深な表情なんかして。

「何話し込んでるんだ?」
「うん? 大した事じゃないよ。あ、それよりさ、次の時間、体育祭の種目決めるんだろ?」
「ああ、そうだったな。……樹の希望は、やっぱりリレーだけか?」
「当たり前だろ? 俺は良介と違って運動は苦手なんだから」
「威張って言うことか」

呆れ顔の良介に剥れ顏の樹。

ああそう言えば、こんなシーンあったよな。確かこの後の時間に樹は、駿介との二人三脚をすることが決まって、俺は歓喜にうち震えたんだ。
LHRをワクワクする気持ちで待って、いよいよ競技の種目が発表された。

あ、あった。二人三脚リレー。樹も駿介も人気者だから、二人三脚を希望する奴らがみんな二人と組むのを狙ったせいで収拾がつかなくなっちゃって、結局二人が組むことになったんだ。

俺ははっきり言って傍観者だし、それに実際俺も樹と同じで運動には自信が無いので、普通のリレーだけに出ようと思った。
壇上に立ち進行役を務めているのは柏木だ。彼はこのクラスの委員長なのだ。

「それでは、まずリレー希望の人。20名」
「はい」
「はい」
「はい」

俺と同じ考えの人が大勢いて、規定以上の人数が我先にと手を挙げている。必死でアピールするみんなの様子を見た柏木が、目に付いた人から容赦なく黒板に名前を書き上げていく。
あれよあれよという間に20名の名前は書き終わり、その中には樹の名前も俺の名前も無かった。
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