55 / 57
これからです
暖かく心地よい気持ちで目をあけた。
いつものぼくの部屋じゃない感じとゆるく抱きしめられている感覚に顔を上げると、目を細めたルークと目が合った。
「気分はどう?」
ルークの手が、ぼくの髪を優しく撫でる。
「気分……」
どういうことだろうと一瞬考えて、でもすぐにボンッと顔が熱くなった。
「だ、大丈夫です。全然大丈夫!」
「そう?」
ルークの顔が嬉しそうに綻ぶ。もともとキラキラしているのに、今はいつもの倍以上で、眩しいくらいの輝く笑顔だ。
あっ!
突然のんびりしていちゃいけないことに気がついた。今日ぼくは婚約式を済ませてからそのままここにお邪魔しているんだ。そろそろ帰らなくては。
「ルーク様!」
「ルークだ」
ああ、そうだった。敬称と敬語禁止だった。
「すみ……、ごめんルーク。長居しちゃって。そろそろ帰らなくちゃ」
「大丈夫だよ、それなら。モンゴメリー公爵と話はついているって、父上が言ってた」
「えっ、そうなんですか?」
いつのまにそんな話になってたんだろう?
「だからね、もう少しのんびりしててもいいんだよ」
「そ、そうですか?」
「ノエル、敬語」
「あ、うん」
キュルルルル。
「何、その可愛い音」
「ぼくのお腹の音だ……」
穴があったら入りたいとは、きっとこのことだ。なんでこんな時に、お腹が鳴るかな?
「夕食の時間はとっくに過ぎてるものね。仕方がないよ、僕もお腹空いたな」
もうすでに食事を済ませている時間だからと、ルークはメイドに言って食事を部屋に運ばせた。
「大丈夫かな? 最初からこんなわがまましちゃって」
「大丈夫だよ。 母上は今頃、思い通りになったと喜んでいるに違いないよ」
思い通り……。
カーッと顔が熱くなった。
「ねえ、ノエル」
「はい」
「僕はね、実は最近までちょっとよくわからない気持ちを抱えていたんだ」
きょとんとするぼくに、ルークが苦い笑みを浮かべる。
「ノエルのことを思うとき、今度こそ間違ってはいけないって、何かを強く後悔しているような感情なんだよ」
「ルーク……」
「それはきっと、あの闇魔道士に強制的に思わされていたサラへの感情のことだったんだね。君には本当に酷いことを」
「ルーク、それはもういいんですよ。終わったことですから」
ぎゅっとルークの手を握り、その瞳を見つめた。
ルークはキュッと唇を噛んだ。
「……そうだね。――ノエル、これから僕は、君のことを大事にして一生守ると誓うよ。だからずっと僕のそばにいてくれ」
「はい、ルーク」
見上げた先のルークの瞳は少しうるんでいる。
「ぼくもルークを一生守ると誓います」
「うん、ありがとう」
穏やかで暖かい気持ちに満たされる。この時、キリンスがぼくの庭で揺れているような気がした。
いつものぼくの部屋じゃない感じとゆるく抱きしめられている感覚に顔を上げると、目を細めたルークと目が合った。
「気分はどう?」
ルークの手が、ぼくの髪を優しく撫でる。
「気分……」
どういうことだろうと一瞬考えて、でもすぐにボンッと顔が熱くなった。
「だ、大丈夫です。全然大丈夫!」
「そう?」
ルークの顔が嬉しそうに綻ぶ。もともとキラキラしているのに、今はいつもの倍以上で、眩しいくらいの輝く笑顔だ。
あっ!
突然のんびりしていちゃいけないことに気がついた。今日ぼくは婚約式を済ませてからそのままここにお邪魔しているんだ。そろそろ帰らなくては。
「ルーク様!」
「ルークだ」
ああ、そうだった。敬称と敬語禁止だった。
「すみ……、ごめんルーク。長居しちゃって。そろそろ帰らなくちゃ」
「大丈夫だよ、それなら。モンゴメリー公爵と話はついているって、父上が言ってた」
「えっ、そうなんですか?」
いつのまにそんな話になってたんだろう?
「だからね、もう少しのんびりしててもいいんだよ」
「そ、そうですか?」
「ノエル、敬語」
「あ、うん」
キュルルルル。
「何、その可愛い音」
「ぼくのお腹の音だ……」
穴があったら入りたいとは、きっとこのことだ。なんでこんな時に、お腹が鳴るかな?
「夕食の時間はとっくに過ぎてるものね。仕方がないよ、僕もお腹空いたな」
もうすでに食事を済ませている時間だからと、ルークはメイドに言って食事を部屋に運ばせた。
「大丈夫かな? 最初からこんなわがまましちゃって」
「大丈夫だよ。 母上は今頃、思い通りになったと喜んでいるに違いないよ」
思い通り……。
カーッと顔が熱くなった。
「ねえ、ノエル」
「はい」
「僕はね、実は最近までちょっとよくわからない気持ちを抱えていたんだ」
きょとんとするぼくに、ルークが苦い笑みを浮かべる。
「ノエルのことを思うとき、今度こそ間違ってはいけないって、何かを強く後悔しているような感情なんだよ」
「ルーク……」
「それはきっと、あの闇魔道士に強制的に思わされていたサラへの感情のことだったんだね。君には本当に酷いことを」
「ルーク、それはもういいんですよ。終わったことですから」
ぎゅっとルークの手を握り、その瞳を見つめた。
ルークはキュッと唇を噛んだ。
「……そうだね。――ノエル、これから僕は、君のことを大事にして一生守ると誓うよ。だからずっと僕のそばにいてくれ」
「はい、ルーク」
見上げた先のルークの瞳は少しうるんでいる。
「ぼくもルークを一生守ると誓います」
「うん、ありがとう」
穏やかで暖かい気持ちに満たされる。この時、キリンスがぼくの庭で揺れているような気がした。
あなたにおすすめの小説
【本編完結】断罪される度に強くなる男は、いい加減転生を仕舞いたい
雷尾
BL
目の前には金髪碧眼の美形王太子と、隣には桃色の髪に水色の目を持つ美少年が生まれたてのバンビのように震えている。
延々と繰り返される婚約破棄。主人公は何回ループさせられたら気が済むのだろうか。一応完結ですが気が向いたら番外編追加予定です。
義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。
竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。
あれこれめんどくさいです。
学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。
冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。
主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。
全てを知って後悔するのは…。
☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです!
☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。
囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317
やり直せるなら、貴方達とは関わらない。
いろまにもめと
BL
俺はレオベルト・エンフィア。
エンフィア侯爵家の長男であり、前世持ちだ。
俺は幼馴染のアラン・メロヴィングに惚れ込み、恋人でもないのにアランは俺の嫁だと言ってまわるというはずかしい事をし、最終的にアランと恋に落ちた王太子によって、アランに付きまとっていた俺は処刑された。
処刑の直前、俺は前世を思い出した。日本という国の一般サラリーマンだった頃を。そして、ここは前世有名だったBLゲームの世界と一致する事を。
こんな時に思い出しても遅せぇわ!と思い、どうかもう一度やり直せたら、貴族なんだから可愛い嫁さんと裕福にのんびり暮らしたい…!
そう思った俺の願いは届いたのだ。
5歳の時の俺に戻ってきた…!
今度は絶対関わらない!
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。
【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。
天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。
成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。
まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。
黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
完結しました!ありがとうございました。
春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....