冤罪をかけられた聖女見習いは同情して助けてくれたイケメン騎士と楽しく暮らす

くるむ

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ヒラリーの嫉妬

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 その後洗濯は浄化で済ませることにし、アルバート様は度々私に会いに来てくれた。それを同じ聖女見習いのヒラリー様に見られてから、嫌がらせが増えた。

「あなた、ご自分の身なりは棚に上げて、メイ様のお洋服をけなしたんですって?」
「えっ? ち、違います。私はそんなこと言っていません」
 それどころか、その話題で盛り上がっていたのはヒラリー様たちだ。ヒラリー様は嫉妬深いのか、可愛らしい容姿をしている聖女見習いの人たちのことを陰で悪く言っていることが多い。

「メイ様、ココさんってば、おとなしい顔して陰で何を言っているかわからないんですから、気をつけなきゃダメですよ」
「メイ様、違います私は……」
「行きましょうメイ様、こんな人相手にしてはダメですわ」

 メイ様はちらりと私を見てヒラリー様に言われるまま一緒について行ってしまった。彼女は私に別に好意を持ってくれてはいなかったと思うけれど、かといって自分から率先して嫌がらせをするような方ではなかった。
 だけどあの様子では、私のことを信じてくれてるとも思えない。

 さみしいな……。

 一人ぼっちに慣れてはいても、大勢の仲間がいるのに相手にしてもらえないのはさみしい。
 外の空気でも吸おうかと、一人で裏庭へとぼとぼと歩いた。    

「ココ!」
 聞き慣れた声に振り向くと、アルバート様が知らない男の人とこちらに向かって歩いてくる。  

「休憩中?」 
「あ、……はい」
 こそっと出てきてしまったので休憩中と言っていいのかわからず、私は俯いて小さな声で返事をした。

「休憩中じゃ悪いかな」
「いいえ大丈夫です。なんでしょうか」
「こいつ、ベンにヒールをかけてやってくれないか」

「えっ?」
    
「ベン・ド・ケンワーシーだ。訓練中に頭を打ってそれから頭痛が治まらないんだ。突然の申し出で悪いが、良かったらお願いしたい」

 軽くとは言え貴族の方に頭を下げられて私は焦った。こんなに丁寧に私に対応してくれるのはアルバート様だけかと思っていたけれど、このベン様も私の知る貴族とはまた感じが違う人なのかもしれない。見た目はちょっぴり厳つい感じの人だけれど目元は優しい。

「もちろん大丈夫です。お願いですから頭を上げてください」

 顔を上げたベン様は、ほっとした表情をしていた。
 頭痛がすると言うので頭の方に手のひらを向けて、治りますようにという願いを込めてヒールをかけた。
 白くまばゆい光が放たれて、それはベン様の頭上でいっそうキラキラと輝いた後、光が吸収されたように消えていった。

「…………」
「あの、ベン様?」

 光が消えてもベン様は呆けたような表情で突っ立ったままだ。
 もしかしたら効いていなかった?

「おい、ベン。何とか言ってやれ」
 アルバート様に肩を叩かれ、ベン様はハッとした顔になって私を見た。

「すごい、本当にすごいよきみ。さっきまであった頭痛が嘘のように消えて、おまけに疲れまでなんだか消えてしまったような感じだ。信じられない、こんなことがあるのか」

「そうだろ? ココはすごいんだ」
「何ドヤ顔してるんだよ、アルバート」
「え? いや……だが俺の見たところ聖女はココに決まりだろう。能力は申し分ないし性格もいい」

「だといいな」
「ああ。俺も護衛騎士として仕えがいがある」
「アルバート様……」

 数日後にもう一度聖女判定をすることになっているので、その時の結果次第ではどうなるか分からない。私よりももっとすごい力を秘めた方がいらっしゃるかもしれないし。平民よりも貴族の方が聖女の見込みがあると言われている。
 それでも、アルバート様の言葉は嬉しかった。

「ありがとうございます。嬉しいです」
「あ、まあ、本当のことだから」

 アルバート様は頭を掻きながらそっぽを向いた。

「照れてるよこいつ」
「バカ、なに言って……。それより、今日は休憩中に悪かったな。こいつの頭痛をなおしてくれてありがとう」
「あっ、本当に助かった。ありがとうな」
「いいえ、そんな。大したことじゃありませんから」

「じゃあ、ありがとう。また来る」
「はい、お待ちしてます」

 私はほっこりと温かい気持ちでアルバート様たちを見送った。




「ココさん、ヒラリー様があなたに話があるそうなの、来てくれる?」

 浄化していた洗濯物を片付けていたらジュリア様に声をかけられた。
「はい」

 私は洗濯物を棚におき、ジュリア様について行った。
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