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落ち着かない気持ちになるのです
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「ごちそうさま」
「ごちそうさま。やっぱり美味しいものを食べると元気が出ますね」
「ああ、そうだな」
やっぱり私、みんなが美味しそうに食べてる姿を見るのも好きだな。
「そろそろ戻ろうか」
「はい」
アルバート様はすっと私の横にやってきて肩を抱いて歩き出した。突然の筋肉質の逞しい身体と力強い腕の感触に、恥ずかしいことに一瞬のうちに顔が熱くなって心臓がバクバクとうるさくなってしまった。
背後からは,「きゃあ」とか「えーっ?」とか小さな悲鳴が聞こえてきた。さっきの女性たちかもしれない。アルバート様の顔をちらりと見上げると、口角を上げた意地悪な顔をしていた。
わざとなのね。
もう、私のための意趣返しなのかもしれないけれど、心臓に悪いからこういうことはほんとやめて欲しい。
「可愛いなー」
「えっ?」
今度はカッカと熱い私の顔を見ながら笑っている。からかわれているのか励まされているのか。
だけど、なんだかその表情がいたずらっ子みたいで、不覚にも私はちょっと笑ってしまった。
.
さっきは目を覚ましたばかりでボーっとしていたから何も考えていなかったけど、ひとつの部屋にベットが二つ。こんなきれいな男の人と私は同じ部屋で寝泊まりするわけだ。
ちょっと、いや大分緊張するんですけど。そりゃアルバート様みたいな綺麗な人なら私なんて歯牙にもかけないはずだから、緊張するなんて言うのもおこがましいかもしれないんだけど。
それに、さっき私に言ってくれたもったいないような言葉は、あの女性たちの心ない言葉で傷ついた私を励ましてくれただけだっていうのもちゃんと分かっているから。
アルバート様が私に背中を向けたまま、上着をかけながら話しかけてきた。
「部屋が一つしか借りれなくてすまなかったな。空いていなかったというのもあるが、君を一人にするのを危惧したからなんだ。追っ手がどれくらい本気で君を探しているのかわからないし、俺の目の届かない所に置いておくのが少し怖かったんだ」
「アルバート様……」
表情が見えないけれどその真摯な言葉に、胸にきゅうんと甘い痛みが走った。
なんだろう。最近アルバート様とのことで、こんなふうに落ち着かない気持ちになることが増えた。
上着をかけ終わったアルバート様が、くるりとこちらを振り向いた。
「見つからないに越したことはないが、何かあっても絶対に助けてやるから安心してほしい」
言葉通り真剣な表情で私を見ている。
「……っ、すみません。本当に迷惑かけてしまって」
「迷惑なんかであるもんか。俺は自分がしたいように勝手に君と行動しているんだ。だから気にしないで良い。だが、君はそうじゃないだろう? あんな訳の分からない冤罪を受ける道理なんかないんだ」
アルバート様は怒っているのかと思うぐらいの顔つきだ。眉間にしわが寄っている。
他人のことにこんなに親身になって、本当に何て優しい方なんだろう。
おまけにこの方は、キラキラとした金髪に天使のような人目を引くきれいな顔立ちなのだ。
「あっ」
「ん?」
「髪色変えたほうがいいのですよね?」
「ああ」
アルバート様が私を助けたいと言ってくださるように、私も彼を助けたい。どれくらいのことができるか分からないけれど。
「ごちそうさま。やっぱり美味しいものを食べると元気が出ますね」
「ああ、そうだな」
やっぱり私、みんなが美味しそうに食べてる姿を見るのも好きだな。
「そろそろ戻ろうか」
「はい」
アルバート様はすっと私の横にやってきて肩を抱いて歩き出した。突然の筋肉質の逞しい身体と力強い腕の感触に、恥ずかしいことに一瞬のうちに顔が熱くなって心臓がバクバクとうるさくなってしまった。
背後からは,「きゃあ」とか「えーっ?」とか小さな悲鳴が聞こえてきた。さっきの女性たちかもしれない。アルバート様の顔をちらりと見上げると、口角を上げた意地悪な顔をしていた。
わざとなのね。
もう、私のための意趣返しなのかもしれないけれど、心臓に悪いからこういうことはほんとやめて欲しい。
「可愛いなー」
「えっ?」
今度はカッカと熱い私の顔を見ながら笑っている。からかわれているのか励まされているのか。
だけど、なんだかその表情がいたずらっ子みたいで、不覚にも私はちょっと笑ってしまった。
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さっきは目を覚ましたばかりでボーっとしていたから何も考えていなかったけど、ひとつの部屋にベットが二つ。こんなきれいな男の人と私は同じ部屋で寝泊まりするわけだ。
ちょっと、いや大分緊張するんですけど。そりゃアルバート様みたいな綺麗な人なら私なんて歯牙にもかけないはずだから、緊張するなんて言うのもおこがましいかもしれないんだけど。
それに、さっき私に言ってくれたもったいないような言葉は、あの女性たちの心ない言葉で傷ついた私を励ましてくれただけだっていうのもちゃんと分かっているから。
アルバート様が私に背中を向けたまま、上着をかけながら話しかけてきた。
「部屋が一つしか借りれなくてすまなかったな。空いていなかったというのもあるが、君を一人にするのを危惧したからなんだ。追っ手がどれくらい本気で君を探しているのかわからないし、俺の目の届かない所に置いておくのが少し怖かったんだ」
「アルバート様……」
表情が見えないけれどその真摯な言葉に、胸にきゅうんと甘い痛みが走った。
なんだろう。最近アルバート様とのことで、こんなふうに落ち着かない気持ちになることが増えた。
上着をかけ終わったアルバート様が、くるりとこちらを振り向いた。
「見つからないに越したことはないが、何かあっても絶対に助けてやるから安心してほしい」
言葉通り真剣な表情で私を見ている。
「……っ、すみません。本当に迷惑かけてしまって」
「迷惑なんかであるもんか。俺は自分がしたいように勝手に君と行動しているんだ。だから気にしないで良い。だが、君はそうじゃないだろう? あんな訳の分からない冤罪を受ける道理なんかないんだ」
アルバート様は怒っているのかと思うぐらいの顔つきだ。眉間にしわが寄っている。
他人のことにこんなに親身になって、本当に何て優しい方なんだろう。
おまけにこの方は、キラキラとした金髪に天使のような人目を引くきれいな顔立ちなのだ。
「あっ」
「ん?」
「髪色変えたほうがいいのですよね?」
「ああ」
アルバート様が私を助けたいと言ってくださるように、私も彼を助けたい。どれくらいのことができるか分からないけれど。
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