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序章
死の魔女と闇龍
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(どうして人間とは、愚かなのだろうか?)
龍地球の子と呼ばれる十龍の一頭、闇龍 キーカンバーは、そう感じずにいられなかった。
キーカンバーは自らの四つ脚で立ち、巨大な尻尾を振り、長い鼻を象のようにかかげ、人間を睨みつけた。
暗闇に映るキーカンバーの容姿は、20メートルを越す巨大な象のような龍であり、本来の龍のイメージと掛け離れている。
一時前に黒色の闇龍の眠りを妨げる者が、サーカッシュの洞窟と呼ばれる闇龍の住処に侵入してきたのだ。
本来なら、この龍地球で最も最強と呼ばれる十龍の住処に、訪れる者などいない。
キーカンバーに殺害されるのが落ちだからだ。
この場に訪れる者がいるとしたら、自らの能力に自信がある龍殺し英雄の称号を欲する冒険者か、自殺志願者のどちらかだろう。
闇龍キーカンバーの前に立つ者。
20メートルの体長をもつ闇龍と対峙する距離は、闇龍と同じ体長位に離れている者は、冒険者にも自殺志願者にも見えない。
「愚かなる人よ、そのような死臭を放つ人形を束ねようとも、我を倒すなぞ不可能ぞ…」
と、キーカンバーは象のような鼻を、目の前に立つ者に突き刺すように言った。
「これは私の軍隊。死の軍隊とでも言っておきましょう、キーカンバー……」
初めて闇龍の前に立つ者が答えた。
女の声だ。
女の姿は、洞窟内の為、闇に閉ざされ、容姿がはっきりわからない。
ただキーカンバーには、死者が旅立つと呼ばれる、死の国ボーライへの衣装…白い装束、それだけは確認できた。
(どうでもよい…この者の容姿なぞ興味がない。すぐに我が息吹で消滅するのだからな…)
闇龍はそう感じ、死に装束を着た女の周りに目をやる。
はっきり見る事は無理だが、闇龍の長い鼻は感じた。
女が放った言葉…
死の軍隊が百は越す。
(この者は死を操る魔法使いか…)
闇龍の鼻に強烈な死臭がつく。
動く死体、動く骸骨それらが、洞窟内で強烈な臭いを充満させていた。
女の周りには、白い人型の気体がいくつも浮遊する。
亡霊だ。
亡霊は苦しそうな表情、憎しみの表情など様々な形相で具現化され、闇龍の視力は退化していても、鼻でそれを感じていた。
闇に生きる龍に視力は不要。
鼻で感知し、象のような二本の牙で闇夜の森の獲物を狩り食す。
そして自らの住処、サーカッシュの洞窟で身体を闇と同化するように眠りにつく。
闇龍キーカンバーは、この習慣を数千年繰り返してきたのだ。
闇龍は鼻から大きく、死臭の立ち込める空気を吸い上げた。
行動にでたと、女は感じ身構えた。
「死を束ねる者よ、死の国ボーライに旅立つ前に問う…」
闇龍は静かに女に問いた。
「何を問うのです…」
女は笑うように答え、右手に杖のような物をもち、闇龍に掲げる。
闇龍は、女を死者使いと認知した。
だが、ネクロマンサーがゾンビを動かすのは、個々の能力によるが、せいぜい十体が限度だ。
それ以上のゾンビやスケルトンを操るには、魔力が制御できず、死者達が暴走し、主人を殺してしまうのが落ちだからだ。
だが、女は百を越す死の軍隊を操り、洞窟内に侵入してきた。
おまけにゴーストという怪物まで召喚している。
謎だ。キーカンバーは感じたが、常勝の闇龍には不安や迷いはなかった。
「我の命を狙う理由はなんぞ…」
どうでも良い事だが、問いただすにいられなかった。
女は明らかに闇龍キーカンバーの命を狙いに来たのだ。
「貴方達、十龍を倒し、この龍地球を我が物とすること…」
女は高らかに宣言した。
「愚か…」
闇龍は一言放ち、女と死の軍隊に死の国ボーライへ誘うと判断した。
死の国ボーライへ誘う…、すなわち死を女に…、戦闘開始の合図だった。
キーカンバーは先程、吸い上げた空気を一気に死の軍隊に吐きだした。
たちまち息吹は高熱となり、ゾンビやスケルトンは、まるで氷が熱で溶けるように溶けていった。
闇龍の命を狙う大低の冒険者や、自殺志願者はこの息吹で絶命する。
闇高熱息吹
闇龍キーカンバーが常勝と呼ばれる最大の攻撃。
闇の中でも大気が歪み、なんの為に甦ったのか、死体自身が思うのではないかと感じる程、呆気なく死の軍隊は消滅した。
瞬時に戦いは終焉を向かえた。
「あの者も消えたか…」
闇龍の鼻には、死臭の臭いも女の気配も感じなかった。
静寂の洞窟内にキーカンバーの声が反響した。
「亡霊も死の国ボーライへ帰ったか…」
またキーカンバーの独り言だけが、反響する。
しかし……。
突然、キーカンバーの象のような身体に黒い液体が、噴水のように噴き出した。
キーカンバー自信にも何が起きたか一瞬、解らなかった。
だが、すぐに理解した。
自分の身体から激しく、流血している事を……。
「何者ぞ~~っ!?」
キーカンバーの雄叫びが洞窟内で凄まじく反響する。
何処かで、蝙蝠達の慌てた泣き声と翼音が聞こえた。
恐らく洞窟の外の森の動物達も、闇龍の叫びに驚き逃げはじめただろう。
「…愚問です、キーカンバー、貴方は誰と戦っていたのです?」
洞窟内に反響する音を、静かに消す声がした。
死に装束姿の女の声だ。
「消滅したのでは、ないのか?」
キーカンバーは、苦しみに声を震わせた。
退化した目の前に、白い亡霊と共に女が宙に浮遊している。
闇龍は怒りに声を高らげ、長い鼻から身体に大きく息を溜める。
即座に容赦なく、女に闇高熱息吹を吐き散らす。
理性を失った象の形をした龍は、洞窟の壁をも溶かし始めた。
闇龍の怒りは凄まじい。
闇で女がどうなったか解らない。
息吹が治まる。
洞窟内の岩が落ちる音と、闇龍の荒い息だけが聞こえる。
だが、すぐに別の音が洞窟に反響した。
血しぶきの音が……。
「ぐぉっ…」
闇龍に鋭い痛みが走る。
「女…」
女が微笑み、闇龍の前に浮遊する。
「貴方は、私の物になる…」
闇龍がその一言に恐怖した。
龍地球、最強の十龍の一頭が絶望に恐怖した。
「すぐに楽にしてあげる…」
優しく女は言った。
その直後、女に纏わり付く七、八の亡霊が女の前に一体化し始めた。
女は、ぶつぶつと何かを口にする。
明らかに魔法を唱える呪文の文句だ。
「まさか?」
闇龍は女の呪文に驚愕する。
「…き、禁断魔ほ……」
キーカンバーの言葉は、突然にして途切れた。
女がした何かを喰らった為に……。
その何かの攻撃のさい、初めて暗かった洞窟内が、一瞬だけ輝く。
女の顔が写る。
腰まで伸びた黒髪……。
美しい成人女性……。
龍地球で、最も忌み嫌われるネクロマンサーと思えない、聖女を思わす印象……。
静かに光りは消え、女は闇と一体化した。
女の名は………、
ミレア。
後に、龍地球ドラゴンアースの混沌と破壊を代表とする邪悪なる者として、人や亜人種族から、こう呼ばれる事となる。
死の魔女……と。
ただ、闇龍キーカンバーにはこの美しき死の魔女・ミレアの名を知る事は……、
永遠になかった……。
龍地球の子と呼ばれる十龍の一頭、闇龍 キーカンバーは、そう感じずにいられなかった。
キーカンバーは自らの四つ脚で立ち、巨大な尻尾を振り、長い鼻を象のようにかかげ、人間を睨みつけた。
暗闇に映るキーカンバーの容姿は、20メートルを越す巨大な象のような龍であり、本来の龍のイメージと掛け離れている。
一時前に黒色の闇龍の眠りを妨げる者が、サーカッシュの洞窟と呼ばれる闇龍の住処に侵入してきたのだ。
本来なら、この龍地球で最も最強と呼ばれる十龍の住処に、訪れる者などいない。
キーカンバーに殺害されるのが落ちだからだ。
この場に訪れる者がいるとしたら、自らの能力に自信がある龍殺し英雄の称号を欲する冒険者か、自殺志願者のどちらかだろう。
闇龍キーカンバーの前に立つ者。
20メートルの体長をもつ闇龍と対峙する距離は、闇龍と同じ体長位に離れている者は、冒険者にも自殺志願者にも見えない。
「愚かなる人よ、そのような死臭を放つ人形を束ねようとも、我を倒すなぞ不可能ぞ…」
と、キーカンバーは象のような鼻を、目の前に立つ者に突き刺すように言った。
「これは私の軍隊。死の軍隊とでも言っておきましょう、キーカンバー……」
初めて闇龍の前に立つ者が答えた。
女の声だ。
女の姿は、洞窟内の為、闇に閉ざされ、容姿がはっきりわからない。
ただキーカンバーには、死者が旅立つと呼ばれる、死の国ボーライへの衣装…白い装束、それだけは確認できた。
(どうでもよい…この者の容姿なぞ興味がない。すぐに我が息吹で消滅するのだからな…)
闇龍はそう感じ、死に装束を着た女の周りに目をやる。
はっきり見る事は無理だが、闇龍の長い鼻は感じた。
女が放った言葉…
死の軍隊が百は越す。
(この者は死を操る魔法使いか…)
闇龍の鼻に強烈な死臭がつく。
動く死体、動く骸骨それらが、洞窟内で強烈な臭いを充満させていた。
女の周りには、白い人型の気体がいくつも浮遊する。
亡霊だ。
亡霊は苦しそうな表情、憎しみの表情など様々な形相で具現化され、闇龍の視力は退化していても、鼻でそれを感じていた。
闇に生きる龍に視力は不要。
鼻で感知し、象のような二本の牙で闇夜の森の獲物を狩り食す。
そして自らの住処、サーカッシュの洞窟で身体を闇と同化するように眠りにつく。
闇龍キーカンバーは、この習慣を数千年繰り返してきたのだ。
闇龍は鼻から大きく、死臭の立ち込める空気を吸い上げた。
行動にでたと、女は感じ身構えた。
「死を束ねる者よ、死の国ボーライに旅立つ前に問う…」
闇龍は静かに女に問いた。
「何を問うのです…」
女は笑うように答え、右手に杖のような物をもち、闇龍に掲げる。
闇龍は、女を死者使いと認知した。
だが、ネクロマンサーがゾンビを動かすのは、個々の能力によるが、せいぜい十体が限度だ。
それ以上のゾンビやスケルトンを操るには、魔力が制御できず、死者達が暴走し、主人を殺してしまうのが落ちだからだ。
だが、女は百を越す死の軍隊を操り、洞窟内に侵入してきた。
おまけにゴーストという怪物まで召喚している。
謎だ。キーカンバーは感じたが、常勝の闇龍には不安や迷いはなかった。
「我の命を狙う理由はなんぞ…」
どうでも良い事だが、問いただすにいられなかった。
女は明らかに闇龍キーカンバーの命を狙いに来たのだ。
「貴方達、十龍を倒し、この龍地球を我が物とすること…」
女は高らかに宣言した。
「愚か…」
闇龍は一言放ち、女と死の軍隊に死の国ボーライへ誘うと判断した。
死の国ボーライへ誘う…、すなわち死を女に…、戦闘開始の合図だった。
キーカンバーは先程、吸い上げた空気を一気に死の軍隊に吐きだした。
たちまち息吹は高熱となり、ゾンビやスケルトンは、まるで氷が熱で溶けるように溶けていった。
闇龍の命を狙う大低の冒険者や、自殺志願者はこの息吹で絶命する。
闇高熱息吹
闇龍キーカンバーが常勝と呼ばれる最大の攻撃。
闇の中でも大気が歪み、なんの為に甦ったのか、死体自身が思うのではないかと感じる程、呆気なく死の軍隊は消滅した。
瞬時に戦いは終焉を向かえた。
「あの者も消えたか…」
闇龍の鼻には、死臭の臭いも女の気配も感じなかった。
静寂の洞窟内にキーカンバーの声が反響した。
「亡霊も死の国ボーライへ帰ったか…」
またキーカンバーの独り言だけが、反響する。
しかし……。
突然、キーカンバーの象のような身体に黒い液体が、噴水のように噴き出した。
キーカンバー自信にも何が起きたか一瞬、解らなかった。
だが、すぐに理解した。
自分の身体から激しく、流血している事を……。
「何者ぞ~~っ!?」
キーカンバーの雄叫びが洞窟内で凄まじく反響する。
何処かで、蝙蝠達の慌てた泣き声と翼音が聞こえた。
恐らく洞窟の外の森の動物達も、闇龍の叫びに驚き逃げはじめただろう。
「…愚問です、キーカンバー、貴方は誰と戦っていたのです?」
洞窟内に反響する音を、静かに消す声がした。
死に装束姿の女の声だ。
「消滅したのでは、ないのか?」
キーカンバーは、苦しみに声を震わせた。
退化した目の前に、白い亡霊と共に女が宙に浮遊している。
闇龍は怒りに声を高らげ、長い鼻から身体に大きく息を溜める。
即座に容赦なく、女に闇高熱息吹を吐き散らす。
理性を失った象の形をした龍は、洞窟の壁をも溶かし始めた。
闇龍の怒りは凄まじい。
闇で女がどうなったか解らない。
息吹が治まる。
洞窟内の岩が落ちる音と、闇龍の荒い息だけが聞こえる。
だが、すぐに別の音が洞窟に反響した。
血しぶきの音が……。
「ぐぉっ…」
闇龍に鋭い痛みが走る。
「女…」
女が微笑み、闇龍の前に浮遊する。
「貴方は、私の物になる…」
闇龍がその一言に恐怖した。
龍地球、最強の十龍の一頭が絶望に恐怖した。
「すぐに楽にしてあげる…」
優しく女は言った。
その直後、女に纏わり付く七、八の亡霊が女の前に一体化し始めた。
女は、ぶつぶつと何かを口にする。
明らかに魔法を唱える呪文の文句だ。
「まさか?」
闇龍は女の呪文に驚愕する。
「…き、禁断魔ほ……」
キーカンバーの言葉は、突然にして途切れた。
女がした何かを喰らった為に……。
その何かの攻撃のさい、初めて暗かった洞窟内が、一瞬だけ輝く。
女の顔が写る。
腰まで伸びた黒髪……。
美しい成人女性……。
龍地球で、最も忌み嫌われるネクロマンサーと思えない、聖女を思わす印象……。
静かに光りは消え、女は闇と一体化した。
女の名は………、
ミレア。
後に、龍地球ドラゴンアースの混沌と破壊を代表とする邪悪なる者として、人や亜人種族から、こう呼ばれる事となる。
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