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アストとミレア

1.

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「ユニコーンに乗れるなんて…」

記憶を無くした少女を目にし、二人の少年は一変にその少女に恋をした。

野原にかける一頭の一角白馬一角白馬ユニコーンに跨がる少女。

歳は17歳。

ユニコーンに跨がけるのは、紛れも無い汚れなき乙女のみに許される。

二人の少年、一人は甲冑を着た茶味のかかった髪の騎士見習いといった風貌の少年。

名をアスト。

もう一人は青い法衣を着た魔術師見習いの少年。

名はパラガス。

二人共、18歳の将来、有望の王国を背負うであろう逸材である。

「アスト…俺はあいつと共になる……」

パラガスは呟いた。

「えっ?」

アストはパラガスの発言に驚いた。

二人は先日、ユニコーンに跨がる少女を、ある山の崖下で気を失ってるところを発見した。

王国に戻り治療をし、数日後、少女は目を覚ました。

少女は驚く事に記憶を無くしており、名前だけしか覚えてなかった。

アストとパラガスは、体調の戻った少女を王国近くの野原へと招待した。

少女は初め、二人の少年に怯えさえし、近寄りもしなかったが、毎日看病に訪れる二人に次第に心を許し、今日を向かえたのだ。

「アスト様、パラガス様…」

不意にユニコーンに跨がる少女の声が二人を呼ぶ。

少女は巧みにユニコーンを操り、二人の少年に近づく。

野原に着くなり、一頭のユニコーンが少女に近づき、少女に甘え始め、気がつくと少女はユニコーンに跨がっていた。


「こんなに楽しいなんて、二人に感謝します」

少女は屈託のない笑顔で答えた。

アストもパラガスも少女の笑みに顔を赤くした。

そして少女はまた、野原にユニコーンを誘導し、その場からさる。

「パラガス様…駄目です…」

不意にアストが放つ。

「何が…だ」

パラガスはアストの言葉に懸念する。

「俺も彼女に恋しました…」

アストは少女に目をやり、力強く答えた。

「そうか…」

パラガスは騎士見習いの少年に目もくれず、静かに答えた。

同じように、ユニコーンに嬉しそうに跨がる少女に向けて…。

その時、ユニコーンに向かって空から物体が飛来してきた。

「危ない!!」

二人の少年が同時に叫ぶと同時に、少女へと走り出す。

ユニコーンが驚き、前脚を天高く掲げた。

少女はその勢いで、地面に転倒した。

空に飛来してくるのは、鷲の頭に獅子の胴に翼を生やす怪物、獅子鷲グリフォンだ。

二人の少年は走りながら、少女の名を大きく叫んだ。

「ミレアーッ!!」





そして、その事件から三年の月日が立つ……。
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