4 / 43
アストとミレア
2.
しおりを挟む
龍地球には三つの大陸が存在する。
龍の胴体尾だったと伝えられる大陸・暗黒大陸クーフェ。
龍の右翼大陸・古の水大陸。
そして龍の左翼大陸・アランミューア。
物語はアランミューア大陸の南部に位置するひとつ王国から始まる。
シーフー山脈に囲まれた王国は、人間の国王により統治されている。
王国の名はアールド王国。
わずか建国百年の他国に比べ、比較的歴史の浅い王国だ。
生活に安定した土地であり、流れる川で水と魚。
王国の東の森に実と動物。
一万の国民にとり、アールド王国は住み良い環境である。
その場にいる限り……。
アールド王国を南に二つ山を越えると、混沌と破滅の王国ラッドビードが存在する。
爬虫類系の亜人種族、蜥蜴人蜥蜴亜人、亀亜人や蛇亜人が支配する無秩序の王国だ。
当然のごとく、両国は異種族の為に、お互いを疎遠しあっている。
東の森の奥深くには、サーカッシュの洞窟があり、十龍の一龍、闇龍キーカンバーが住処がある。
王国の西には、悪名高き盗賊都市バルキルが、徒歩五日程の距離に存在する。
アールドの国民なら誰しも、好んでバルキルには行かないだろう。
北には徒歩半月と遠いトムクス城塞王国があるが、かなりの遠征になるので、余程の用がない限り誰も行かないだろう。
国民の誰もが、国を愛し、生活に満足をしている。
ここアールド王国は、平穏と安全が約束されたアランミューア大陸で、数少ない平和な王国だ。
やはり国王の政権がしっかりしているからだろう……。
国王の名は、ルイ・アールド三世。
齢六十を越える老年の王だ。
この老年の王の今は亡き祖父が、アールド王国の建国王である。
アールド王国の学問の書に、建国王の伝説が二つ知るされている。
一つは、アールド王国の前に設立されていた吸血魔城の主を、南の爬虫類系亜人の王と共に倒し、王国を建国した。
そして二つ目は、幼なじみの女性と東の森で、永遠の愛を誓いあった所以がある。
学問の書には、その森の名を、永遠の愛の森と記しており、国民はその森の一角に建てられた教会で、式を上げるのが常識となっていた。
その永遠の愛の森で今日、一組の男女が式を挙げる。
春の日差しが、森に建てられた教会の門の前まで照らす。
王国より近くとはゆえ、東に一日歩けば、闇龍の住処がある。
闇龍の被害があるとすれば、夜の狩りの時だけだろう…。
風のせせらぎが木々をざわつかせ、小動物達が枝から枝へと移る。
白銀の甲冑を着た騎士や、法衣を着た者、ドレスを身に纏う女性達の談笑が、森の音を掻き消す。
数は約、五十人。ほとんどの者が王国に使える侍女、それに爵位を持つ男女だ。
普通の結婚式にしては、人数は多い方である。
だが、不思議な事に新婦になる女性の客は誰一人としていなく、すべての招待客は新郎になる男の知人であった。
新婦の事を知らない招待客は不思議に思ったが、丸太のテーブルに並べられた料理や酒が、その疑問を掻き消した。
そして人々の視線が、教会の入り口へと集中した。
教会内での儀式を終え、新郎新婦が腕を組み、外へと出てきたのだ。
人々は歓喜に拍手をし、二人を祝福する。
新郎は白銀の鎧と白のマントを纏っている。
茶味のかかった髪が日差しにより、輝く。
アールド王国騎士団第二隊長の座につく、二十一の青年。
名をアスト。
そして横で照れ笑いを見せる純白のウェディングドレスを着た女性。
ミレアだ。
ミレアの髪は腰まで伸び、これまた日差しがミレアを美しく際立たせていた。
この場にいる者は誰一人として、ミレアの出生を知る者はいない…。
夫となるアストでさえも……。
人々は踊りや食事を楽しみ、時間と共にやがて王国へと帰路していった。
二人の門出を祝い…。
そして森に残されたアストとミレアは、王国の習わしにより、教会内の一室で初夜を迎える事となる。
この永遠の愛の森で、二人は初めて互いの身体を重ねる事となる……。
龍の胴体尾だったと伝えられる大陸・暗黒大陸クーフェ。
龍の右翼大陸・古の水大陸。
そして龍の左翼大陸・アランミューア。
物語はアランミューア大陸の南部に位置するひとつ王国から始まる。
シーフー山脈に囲まれた王国は、人間の国王により統治されている。
王国の名はアールド王国。
わずか建国百年の他国に比べ、比較的歴史の浅い王国だ。
生活に安定した土地であり、流れる川で水と魚。
王国の東の森に実と動物。
一万の国民にとり、アールド王国は住み良い環境である。
その場にいる限り……。
アールド王国を南に二つ山を越えると、混沌と破滅の王国ラッドビードが存在する。
爬虫類系の亜人種族、蜥蜴人蜥蜴亜人、亀亜人や蛇亜人が支配する無秩序の王国だ。
当然のごとく、両国は異種族の為に、お互いを疎遠しあっている。
東の森の奥深くには、サーカッシュの洞窟があり、十龍の一龍、闇龍キーカンバーが住処がある。
王国の西には、悪名高き盗賊都市バルキルが、徒歩五日程の距離に存在する。
アールドの国民なら誰しも、好んでバルキルには行かないだろう。
北には徒歩半月と遠いトムクス城塞王国があるが、かなりの遠征になるので、余程の用がない限り誰も行かないだろう。
国民の誰もが、国を愛し、生活に満足をしている。
ここアールド王国は、平穏と安全が約束されたアランミューア大陸で、数少ない平和な王国だ。
やはり国王の政権がしっかりしているからだろう……。
国王の名は、ルイ・アールド三世。
齢六十を越える老年の王だ。
この老年の王の今は亡き祖父が、アールド王国の建国王である。
アールド王国の学問の書に、建国王の伝説が二つ知るされている。
一つは、アールド王国の前に設立されていた吸血魔城の主を、南の爬虫類系亜人の王と共に倒し、王国を建国した。
そして二つ目は、幼なじみの女性と東の森で、永遠の愛を誓いあった所以がある。
学問の書には、その森の名を、永遠の愛の森と記しており、国民はその森の一角に建てられた教会で、式を上げるのが常識となっていた。
その永遠の愛の森で今日、一組の男女が式を挙げる。
春の日差しが、森に建てられた教会の門の前まで照らす。
王国より近くとはゆえ、東に一日歩けば、闇龍の住処がある。
闇龍の被害があるとすれば、夜の狩りの時だけだろう…。
風のせせらぎが木々をざわつかせ、小動物達が枝から枝へと移る。
白銀の甲冑を着た騎士や、法衣を着た者、ドレスを身に纏う女性達の談笑が、森の音を掻き消す。
数は約、五十人。ほとんどの者が王国に使える侍女、それに爵位を持つ男女だ。
普通の結婚式にしては、人数は多い方である。
だが、不思議な事に新婦になる女性の客は誰一人としていなく、すべての招待客は新郎になる男の知人であった。
新婦の事を知らない招待客は不思議に思ったが、丸太のテーブルに並べられた料理や酒が、その疑問を掻き消した。
そして人々の視線が、教会の入り口へと集中した。
教会内での儀式を終え、新郎新婦が腕を組み、外へと出てきたのだ。
人々は歓喜に拍手をし、二人を祝福する。
新郎は白銀の鎧と白のマントを纏っている。
茶味のかかった髪が日差しにより、輝く。
アールド王国騎士団第二隊長の座につく、二十一の青年。
名をアスト。
そして横で照れ笑いを見せる純白のウェディングドレスを着た女性。
ミレアだ。
ミレアの髪は腰まで伸び、これまた日差しがミレアを美しく際立たせていた。
この場にいる者は誰一人として、ミレアの出生を知る者はいない…。
夫となるアストでさえも……。
人々は踊りや食事を楽しみ、時間と共にやがて王国へと帰路していった。
二人の門出を祝い…。
そして森に残されたアストとミレアは、王国の習わしにより、教会内の一室で初夜を迎える事となる。
この永遠の愛の森で、二人は初めて互いの身体を重ねる事となる……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる