ドラゴンアース anotherstory ‐死の魔女‐

とと

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王国襲撃

2.

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アールド王国の南の外れの墓地に永眠するすべての遺体が、一夜にして消えた事件と、龍地球の子と呼ばれる最強の十龍、闇龍キーカンバーが、永遠の愛の森の教会近くで目撃された報告が、ルイ国王の頭を悩ませていた。

遺体泥棒は何者か、見当もつかなかった。

そして闇龍が何故、教会付近に現れたのか…。

別に闇龍の狩猟の場だから問題はないのだが、現れた時間に問題があるのだ。

闇の龍と呼ばれる所以、キーカンバーは夜にしか行動を起こさないからだ。

発見された時間は正午。
太陽がもっとも輝く時間だった。

それ以来、国民は森へと近づく者はいなかった。

当然、結婚式をあげるはずなどなかった。

「その後、何か情報は入ったか?」

アールド王国の中心部に位置する王城の中にある会議室で、国王は静かにに口を開いた。

二十は越す幹部達の円卓の場の奥に座る齢六十を越える往年の王は、白髪頭に金と宝石をあしらった冠をかぶり、鋭い視線と顔に刻まれた皺(しわ)が王という貫禄を創りあげている。

ルイ・アールド三世、その人である。

円卓の場に座する幹部は、宮廷魔術師。男爵。軍師。隊長と役の就いた者達だ。

その中の一人が挙手する。

「なんだ、セレケ」

挙手した男を睨みつけるように名前を呼んだ。

男爵の地位に就くセレケは、生唾を飲みこむ。

国王の機嫌が悪いのは、この場にいる者すべてが悟っている。

男爵セレケは国民からも尊敬される人物であり、王と違う貫禄を持っている。

が、国王ルイの前では、その貫禄も意味をもたなかった。

「実は…」

セレケが申し訳ないように答える。

国王は王座にもたれ、静かに目をつむる。

目を綴じてるだけでも貫禄がある、セレケはそう国王に尊敬の念を抱いた。

「言いにくいのですが…」

「勿体振るな…」

国王がセレケを一喝する。

「第二騎士隊長アストが警察に逮捕されました」

「何だと!?」

国王は勢いよく目を開き、セレケに向かって怒鳴った。

幹部達は恐怖感を覚え、身体を硬直させた。

「アストは何をした?」

国王はセレケを尋問する。

「はい、酔っ払って…、一般人男性と…、け、喧嘩をし、駆け付けた警察官二人と男性を一方的に…」

「あの馬鹿者がーっ!」

国王ルイは円卓のテーブルに拳を叩きつけ、大声で怒鳴った。

「警察が身柄の引き渡しを…」

「しばらく捨てておけっ!」

セレケの言葉を遮(さえぎ)り、国王はその場にいないアストへと、怒りをあらわにした。



しばらくすると、会議も終わり、ひとりの宮廷魔術師だけが、その場に残っていた。

青色の法衣を着た青年だった。

歳はアストと同じ位だ。

そして、青年は静かに呟く。

「しかたない、オレが迎えに行くか…」

青年は鼻で失笑し、その場をさった。

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