10 / 43
王国襲撃
2.
しおりを挟む
アールド王国の南の外れの墓地に永眠するすべての遺体が、一夜にして消えた事件と、龍地球の子と呼ばれる最強の十龍、闇龍キーカンバーが、永遠の愛の森の教会近くで目撃された報告が、ルイ国王の頭を悩ませていた。
遺体泥棒は何者か、見当もつかなかった。
そして闇龍が何故、教会付近に現れたのか…。
別に闇龍の狩猟の場だから問題はないのだが、現れた時間に問題があるのだ。
闇の龍と呼ばれる所以、キーカンバーは夜にしか行動を起こさないからだ。
発見された時間は正午。
太陽がもっとも輝く時間だった。
それ以来、国民は森へと近づく者はいなかった。
当然、結婚式をあげるはずなどなかった。
「その後、何か情報は入ったか?」
アールド王国の中心部に位置する王城の中にある会議室で、国王は静かにに口を開いた。
二十は越す幹部達の円卓の場の奥に座る齢六十を越える往年の王は、白髪頭に金と宝石をあしらった冠をかぶり、鋭い視線と顔に刻まれた皺(しわ)が王という貫禄を創りあげている。
ルイ・アールド三世、その人である。
円卓の場に座する幹部は、宮廷魔術師。男爵。軍師。隊長と役の就いた者達だ。
その中の一人が挙手する。
「なんだ、セレケ」
挙手した男を睨みつけるように名前を呼んだ。
男爵の地位に就くセレケは、生唾を飲みこむ。
国王の機嫌が悪いのは、この場にいる者すべてが悟っている。
男爵セレケは国民からも尊敬される人物であり、王と違う貫禄を持っている。
が、国王ルイの前では、その貫禄も意味をもたなかった。
「実は…」
セレケが申し訳ないように答える。
国王は王座にもたれ、静かに目をつむる。
目を綴じてるだけでも貫禄がある、セレケはそう国王に尊敬の念を抱いた。
「言いにくいのですが…」
「勿体振るな…」
国王がセレケを一喝する。
「第二騎士隊長アストが警察に逮捕されました」
「何だと!?」
国王は勢いよく目を開き、セレケに向かって怒鳴った。
幹部達は恐怖感を覚え、身体を硬直させた。
「アストは何をした?」
国王はセレケを尋問する。
「はい、酔っ払って…、一般人男性と…、け、喧嘩をし、駆け付けた警察官二人と男性を一方的に…」
「あの馬鹿者がーっ!」
国王ルイは円卓のテーブルに拳を叩きつけ、大声で怒鳴った。
「警察が身柄の引き渡しを…」
「しばらく捨てておけっ!」
セレケの言葉を遮(さえぎ)り、国王はその場にいないアストへと、怒りをあらわにした。
しばらくすると、会議も終わり、ひとりの宮廷魔術師だけが、その場に残っていた。
青色の法衣を着た青年だった。
歳はアストと同じ位だ。
そして、青年は静かに呟く。
「しかたない、オレが迎えに行くか…」
青年は鼻で失笑し、その場をさった。
遺体泥棒は何者か、見当もつかなかった。
そして闇龍が何故、教会付近に現れたのか…。
別に闇龍の狩猟の場だから問題はないのだが、現れた時間に問題があるのだ。
闇の龍と呼ばれる所以、キーカンバーは夜にしか行動を起こさないからだ。
発見された時間は正午。
太陽がもっとも輝く時間だった。
それ以来、国民は森へと近づく者はいなかった。
当然、結婚式をあげるはずなどなかった。
「その後、何か情報は入ったか?」
アールド王国の中心部に位置する王城の中にある会議室で、国王は静かにに口を開いた。
二十は越す幹部達の円卓の場の奥に座る齢六十を越える往年の王は、白髪頭に金と宝石をあしらった冠をかぶり、鋭い視線と顔に刻まれた皺(しわ)が王という貫禄を創りあげている。
ルイ・アールド三世、その人である。
円卓の場に座する幹部は、宮廷魔術師。男爵。軍師。隊長と役の就いた者達だ。
その中の一人が挙手する。
「なんだ、セレケ」
挙手した男を睨みつけるように名前を呼んだ。
男爵の地位に就くセレケは、生唾を飲みこむ。
国王の機嫌が悪いのは、この場にいる者すべてが悟っている。
男爵セレケは国民からも尊敬される人物であり、王と違う貫禄を持っている。
が、国王ルイの前では、その貫禄も意味をもたなかった。
「実は…」
セレケが申し訳ないように答える。
国王は王座にもたれ、静かに目をつむる。
目を綴じてるだけでも貫禄がある、セレケはそう国王に尊敬の念を抱いた。
「言いにくいのですが…」
「勿体振るな…」
国王がセレケを一喝する。
「第二騎士隊長アストが警察に逮捕されました」
「何だと!?」
国王は勢いよく目を開き、セレケに向かって怒鳴った。
幹部達は恐怖感を覚え、身体を硬直させた。
「アストは何をした?」
国王はセレケを尋問する。
「はい、酔っ払って…、一般人男性と…、け、喧嘩をし、駆け付けた警察官二人と男性を一方的に…」
「あの馬鹿者がーっ!」
国王ルイは円卓のテーブルに拳を叩きつけ、大声で怒鳴った。
「警察が身柄の引き渡しを…」
「しばらく捨てておけっ!」
セレケの言葉を遮(さえぎ)り、国王はその場にいないアストへと、怒りをあらわにした。
しばらくすると、会議も終わり、ひとりの宮廷魔術師だけが、その場に残っていた。
青色の法衣を着た青年だった。
歳はアストと同じ位だ。
そして、青年は静かに呟く。
「しかたない、オレが迎えに行くか…」
青年は鼻で失笑し、その場をさった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる