ドラゴンアース anotherstory ‐死の魔女‐

とと

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悲しみの対峙

4.

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数十メートル離れたパラガスも、アスト達の行動を目にした。

しかし、アスト達に気を配る余裕はなかった。

眼前にはキーカンバー。

巨体さゆえ、近くにいても気付かれなかったのは幸いだった。

「アストならなんとか…」

パラガスは友の安否をやめ、精神を集中した。

魔法の呪文を唱えだした。

超豪炎球魔法スーパーファイヤーボール

パラガスが出した巨大な火の球が、闇龍へと目掛けて飛んだ。

キーカンバーの脇腹に火の球が命中する。

肉の燃える嫌な臭いが、たちまちに辺りに充満した。

しかし、キーカンバーは苦痛の表情もださず、黙々と王城を破壊していた。

もはやキーカンバーの周りは、兵達の死体の山。

生存者は見当たらなかった。

絶望…。

パラガスの脳裏に国王の死が過ぎった。

「宮廷魔術師パラガス到着か…」

ミレアは巨龍の頭の上から、下で魔法を使う青色の法衣を着た青年を見て、呟いた。

「面白い、私の魔術とどちらが上か…」

ミレアは微笑みながら、浮遊魔法を使い、ゆっくりと降下した。




アストとタンクは、迫り来るゾンビに後ずさりしていた。

「剣さえあれば…」

アストが苦虫つぶしたような顔で、呟いた。

「ワシには槍があれば、鬼に金棒ダ」

「そうかい、頼もしいな…」

タンクの発言に、アストは皮肉っぽく答えた。

「お主、魔法は使えるダ?」
「生憎、魔法使いでもなければ、神官でもない…、ただの騎士だ」

アストは、魔法を使えない自分を呪った。

いつの間にかゾンビは、数十に増え、アスト達に近付いてくる。

さらに…。

「お主、象もどきが!」

「なんだ、ドワ…!」

タンクの叫びに、アストは振り向き、そして言葉を失った。

キーカンバーの長い鼻が、アスト達に向かっていたのだ。

キーカンバーの巨大な身体が、向きを王城へとでなく、アストへと向けた。





「貴方様に、つ、仕えて幸せで、した…」

「何も言うな、セレケ」

今、ルイの膝元に血を流し、セレケが横たわっていた。

致命傷だった。

先程、崩れ落ちてきた瓦礫が、国王の上に迫り、身を投げだして国王を救った。

それがセレケの国王への忠義だった。

「国お……」

セレケは息絶えた。

「セレケ…」

国王ルイは、悲しみと怒りに声を失った。

「…死の国ボーライに先に待っておれ…」

国王は立ち上がり、剣を握りしめ、キーカンバーへと歩き始めた。




「宮廷魔術師パラガス……」

突如、パラガスの頭上に女の声がした。

聞き覚えのある声、パラガスは夜空へと頭を上げた。

「ミ、ミレア?」

死に装束姿のミレアがパラガスに立ちはだかった。

パラガスは、天女が舞い降りたと錯覚した。




アストとタンクは絶望していた。

「ドワーフ、覚悟しろ、ボク達はあのゾンビ達に生きながら食われるか、象もどきに踏み潰されるか…、どちらかだ…、逃げ場はない」

アストは絶望に微笑んだ。
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