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トカゲ王の城
6.
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「帰れっと言ってるのがわからんのかっ!」
「貴様ら、ワシに斬られたいのかっ!」
ラッドビード王国の薄暗い王室で、二つの頭をもつ蜥蜴王ロッツロットが怒りに叫ぶ。
怒りの矛先は、亡国の騎士アストと宮廷魔術師パラガスの二人に向けられていた。
ドワーフのタンクは微動だにせず、エルフのペテンは双頭の蜥蜴王の迫力に、ただ腰を抜かしていた。
アストとパラガスは、ロッツロットに怒鳴られても床に膝をつき、頭を下げ一行に立ち上がろうとしなかった。
その態度にロッツロットは王座の横にある四つの剣の一つを手にし、アストとパラガス目掛けて歩き始めた。
四つの腕を持つ王は、アストとパラガスの髪を無造作に持ち上げ、二人は髪の力のみで宙に浮く状態になった。
アストにパラガスは頭部の痛みに耐えながら、蜥蜴王を睨んだ。
三メートルの身長をもつ蜥蜴王は、右手に持つ剣でアストの首筋を捉える。
いつでも殺せる状態だった。
ペテンは恐怖に声をあげることも出来ないでいた。
「お、お言葉ですが、オレ達は我が主、ルイ・アールド国王の仇をとりたいのです」
パラガスがようやく口を開いた。
「どうか、ボク達にも戦わせて下さい」
アストも口を開いた。
「だからこの国に、その女とキーカンバーが来る保証はないのだろう!」
「それに万が一、来たとしてもワシの力の半分もない人間に何が出来る!」
二人の眼前に、双頭の蜥蜴顔が凄まじく怒鳴る。
「ボクの妻は必ず、この王国を通ります…、どうかボクの手で彼女を…」
アストが再び懇願した。
「自分の妻をどうすると?」
左頭の蜥蜴王が質問した。
アストは蜥蜴王を睨み、答えた。
「ボクは妻を今でも愛してます、でも妻が王国を破壊し、国王や罪のない人々を殺害したことは、許されない…」
アストは涙目になりながら、意を決意した。
「妻ミレアをボクの手で必ず殺します」
その言葉に、ロッツロットは二人の髪を離した。
不意に離され、二人は床に倒れた。
「面白い…」
ロッツロットが微笑んだ。
「では?」
パラガスが協力を承知したのだろうと、喜びに声をだした。
「勘違いするな!」
右頭の国王が怒鳴る。
「先程から、妻とか自分の手でとか、ほざいているが、ワシはいまいち、貴様を信用できん」
ロッツロットは肩膝をついて、地につくアストを睨みつけた。
アストは生唾を飲みこみ、ゆっくりと口を開いた。
「真剣です、オレはこの手でミレアを…」
「利き腕だけでも、妻は殺せるよな」
突然の蜥蜴王の発言に、この場にいるアスト達は耳を疑った。
「ワシの民達が死ぬかもしれんのだ、万が一貴様の妻が死者の軍隊や、キーカンバーを連れに来たのなら、ワシの民も犠牲になるのだろう」
「貴様らの敵討ち、解らんでもない、だがアストとやら、貴様の腕一つワシにくれれば、協力を呑もう」
ロッツロットは非情な発言をした。
確かにミレアが攻めてくれば、ラッドビードの爬虫類系亜人達も無傷ではいられない。
無秩序の国の王は、右上の手に持つ剣をアストにかざした。
「どうする?アストとやら、今ならこの国から出て行けるぞ」
蜥蜴王が冷たく笑った。
パラガス達は黙って見守るしかなかった。
アストは目をつむり、ゆっくりと立ち上がった。
「構いません、妻は片手だけでも倒せます」
アストは左腕を横へと開いた。
「アスト、やめるんだ」
パラガスが制止する。
「気に入った、アストとやら、その腕貰うぞ」
ロッツロットが剣を天に構えた。
アストは覚悟を決め、歯を思いきり噛み締めた。
ロッツロットの非情な剣は振り下ろされる。
パラガスやペテン、タンクは目をつむった。
薄暗い王室に沈黙が流れる。
「貴様の決意は本物のようだ」
「よかろう、アストにパラガスとやら、共に戦おう…」
沈黙を破ったのは双頭の蜥蜴王だった。
国王はアスト達に背を向け、ゆっくりと王座に戻る。
アストら四人は、ゆっくり目を開けた。
「腕がある…」
ペテンが叫ぶように言った。
アストは呆然とした。
「国王、ありがとうございます」
パラガスが歓喜した。
「パラガス、貴様の魔術に期待する」
王座に座ったロッツロットが答えた。
「アスト、貴様の剣にも…」
「………けるな」
ロッツロットがアストにも労おうとすると、アストがぶつぶつと何かを言いはじめた。
「どうした?」
ロッツロットが質問した。
すると……。
「ふざけるなっ蜥蜴王っ!ボクは生半可じゃないっ!」
アストがロッツロットに叫んだ。
「アストッ!」
パラガスが状況を掴めずにも叫んだ。
ロッツロットは四つの腕を組み、沈黙する。
「ボクは妻を殺す!愛してるから!これしかないんだ!」
アストは怒り、腰にかけた剣を引き出した。
「アスト、何をするんだ!」
パラガスが立ち上がり、アストに近づく。
「蜥蜴王、ボクの腕を献上するっ!」
アストは右手に持った剣を、自信の左腕に振り落とした。
王室に鮮血が飛び散る。
「馬鹿野郎っ!」
パラガスが、今にも倒れそうなアストを支える。
「ボ、クが…ミレアを、倒し、ます…」
アストはそう言うと、気を失った。
ついでにペテンも…。
床にはアストの左腕が落ちていた。
「わははははっ」
その光景にロッツロットが豪快に笑った。
「気に入ったぞ、ワシはこの馬鹿を気に入った」
「部下にアストの手当をさせよう」
ロッツロットの双頭がそれぞれに言った。
「アスト、馬鹿野郎…」
パラガスはアストの信念を痛い程、感じた。
ラッドビード王国国王ロッツロットを、アストらは味方につけた。
左腕の代償を払って…。
「貴様ら、ワシに斬られたいのかっ!」
ラッドビード王国の薄暗い王室で、二つの頭をもつ蜥蜴王ロッツロットが怒りに叫ぶ。
怒りの矛先は、亡国の騎士アストと宮廷魔術師パラガスの二人に向けられていた。
ドワーフのタンクは微動だにせず、エルフのペテンは双頭の蜥蜴王の迫力に、ただ腰を抜かしていた。
アストとパラガスは、ロッツロットに怒鳴られても床に膝をつき、頭を下げ一行に立ち上がろうとしなかった。
その態度にロッツロットは王座の横にある四つの剣の一つを手にし、アストとパラガス目掛けて歩き始めた。
四つの腕を持つ王は、アストとパラガスの髪を無造作に持ち上げ、二人は髪の力のみで宙に浮く状態になった。
アストにパラガスは頭部の痛みに耐えながら、蜥蜴王を睨んだ。
三メートルの身長をもつ蜥蜴王は、右手に持つ剣でアストの首筋を捉える。
いつでも殺せる状態だった。
ペテンは恐怖に声をあげることも出来ないでいた。
「お、お言葉ですが、オレ達は我が主、ルイ・アールド国王の仇をとりたいのです」
パラガスがようやく口を開いた。
「どうか、ボク達にも戦わせて下さい」
アストも口を開いた。
「だからこの国に、その女とキーカンバーが来る保証はないのだろう!」
「それに万が一、来たとしてもワシの力の半分もない人間に何が出来る!」
二人の眼前に、双頭の蜥蜴顔が凄まじく怒鳴る。
「ボクの妻は必ず、この王国を通ります…、どうかボクの手で彼女を…」
アストが再び懇願した。
「自分の妻をどうすると?」
左頭の蜥蜴王が質問した。
アストは蜥蜴王を睨み、答えた。
「ボクは妻を今でも愛してます、でも妻が王国を破壊し、国王や罪のない人々を殺害したことは、許されない…」
アストは涙目になりながら、意を決意した。
「妻ミレアをボクの手で必ず殺します」
その言葉に、ロッツロットは二人の髪を離した。
不意に離され、二人は床に倒れた。
「面白い…」
ロッツロットが微笑んだ。
「では?」
パラガスが協力を承知したのだろうと、喜びに声をだした。
「勘違いするな!」
右頭の国王が怒鳴る。
「先程から、妻とか自分の手でとか、ほざいているが、ワシはいまいち、貴様を信用できん」
ロッツロットは肩膝をついて、地につくアストを睨みつけた。
アストは生唾を飲みこみ、ゆっくりと口を開いた。
「真剣です、オレはこの手でミレアを…」
「利き腕だけでも、妻は殺せるよな」
突然の蜥蜴王の発言に、この場にいるアスト達は耳を疑った。
「ワシの民達が死ぬかもしれんのだ、万が一貴様の妻が死者の軍隊や、キーカンバーを連れに来たのなら、ワシの民も犠牲になるのだろう」
「貴様らの敵討ち、解らんでもない、だがアストとやら、貴様の腕一つワシにくれれば、協力を呑もう」
ロッツロットは非情な発言をした。
確かにミレアが攻めてくれば、ラッドビードの爬虫類系亜人達も無傷ではいられない。
無秩序の国の王は、右上の手に持つ剣をアストにかざした。
「どうする?アストとやら、今ならこの国から出て行けるぞ」
蜥蜴王が冷たく笑った。
パラガス達は黙って見守るしかなかった。
アストは目をつむり、ゆっくりと立ち上がった。
「構いません、妻は片手だけでも倒せます」
アストは左腕を横へと開いた。
「アスト、やめるんだ」
パラガスが制止する。
「気に入った、アストとやら、その腕貰うぞ」
ロッツロットが剣を天に構えた。
アストは覚悟を決め、歯を思いきり噛み締めた。
ロッツロットの非情な剣は振り下ろされる。
パラガスやペテン、タンクは目をつむった。
薄暗い王室に沈黙が流れる。
「貴様の決意は本物のようだ」
「よかろう、アストにパラガスとやら、共に戦おう…」
沈黙を破ったのは双頭の蜥蜴王だった。
国王はアスト達に背を向け、ゆっくりと王座に戻る。
アストら四人は、ゆっくり目を開けた。
「腕がある…」
ペテンが叫ぶように言った。
アストは呆然とした。
「国王、ありがとうございます」
パラガスが歓喜した。
「パラガス、貴様の魔術に期待する」
王座に座ったロッツロットが答えた。
「アスト、貴様の剣にも…」
「………けるな」
ロッツロットがアストにも労おうとすると、アストがぶつぶつと何かを言いはじめた。
「どうした?」
ロッツロットが質問した。
すると……。
「ふざけるなっ蜥蜴王っ!ボクは生半可じゃないっ!」
アストがロッツロットに叫んだ。
「アストッ!」
パラガスが状況を掴めずにも叫んだ。
ロッツロットは四つの腕を組み、沈黙する。
「ボクは妻を殺す!愛してるから!これしかないんだ!」
アストは怒り、腰にかけた剣を引き出した。
「アスト、何をするんだ!」
パラガスが立ち上がり、アストに近づく。
「蜥蜴王、ボクの腕を献上するっ!」
アストは右手に持った剣を、自信の左腕に振り落とした。
王室に鮮血が飛び散る。
「馬鹿野郎っ!」
パラガスが、今にも倒れそうなアストを支える。
「ボ、クが…ミレアを、倒し、ます…」
アストはそう言うと、気を失った。
ついでにペテンも…。
床にはアストの左腕が落ちていた。
「わははははっ」
その光景にロッツロットが豪快に笑った。
「気に入ったぞ、ワシはこの馬鹿を気に入った」
「部下にアストの手当をさせよう」
ロッツロットの双頭がそれぞれに言った。
「アスト、馬鹿野郎…」
パラガスはアストの信念を痛い程、感じた。
ラッドビード王国国王ロッツロットを、アストらは味方につけた。
左腕の代償を払って…。
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