13 / 59
blood (出血) モート編
11
しおりを挟む
モートの今朝は、アリスが来る時間までノブレス・オブリージュ美術館の正門を押しつぶしてしまうかのような大雪を取り除くことから始まった。深夜からここホワイトシティでも記録的な雪が降り続けたせいだ。正門の前を行き交う通行人は、皆、モートに挨拶をしていた。
「やあ、モート君。今朝もよく働くね」
「ああ……いってらっしゃい」
いつも挨拶をする通勤途中の配管工にモートは、軽く手を振った。配管工は今夜も記録的な大雪が降るのではとも言っていた。そんないつもの日常がモートには嬉しかった。モートはせっせと青銅の正門の隙間を埋めてしまった氷をスコップで丹念に削ったりしていた。ノブレス・オブリージュ美術館の使用人たちは、ヘレンが率先して広い館内の大掃除であった。
道路はすでに雪が固まっていて、交通が滞っていた。エンストを起こす車が目立っている。
午前9時過ぎになると路面バスが停まり。アリスが反対側の道路から歩いて来た。珍しくオーゼムと一緒だった。
「モートくん。アリスさんについた聖痕現象の意味がわかりましたよ。聖痕と血の雨との関係はまだよくわかりませんが……」
「オーゼム……? それは本当かい?」
「ええ、はい。恐らくは聖痕がついた人たちは全部で七人いるはずなんです。何故かと言うと、今まで助けた少女たちの名前がエペソとスミルナという変わった名前だったからです。これはヨハネの黙示録の七つの教会へのメッセージです」
「???」
モートは首をかしげたが、アリスは深々と白い息を吐いて少しだけ頷いた。どうやら、アリスはヨハネの黙示録を知っているようだった。だが、モートは知らなかった。
行き交う人々も吐く息は白い。
空からシンシンと降る雪と共に風も出てきた。
「恐らく、後はペルガモとテアテラ。サルギス。フィラデルフィア。ラオデルキヤという名前をしているでしょうね。いずれにしても、終末で起こる前触れなんでしょうね」
「オーゼム? それと……どうしてアリスに……聖痕が?」
モートは考えようとした。
だが、突然。
空から真っ赤な雨が降りだした。
「多分ですが……七人の人物たちは何かを封印しているのでしょうね。全員が少女の可能性もあります。さあ、モートくん出番ですよ。行ってください! その七人を守るのです!! あ、言い忘れていました! その七人の家は恐らく教会のはずなんです。エペソとスミルナの家も教会でしたので……。そうです教会は神の家ですからね」
「ああ……わかった」
モートは激しく降りだした血の雨の中で、シルバー・ハイネスト・ポールへと走った。
美術館から数十ブロックもモートは様々なものを通り過ぎる。シルバー・ハイネスト・ポールは石造りのホワイトシティでもっとも高い塔で、おおよそ400年前にホワイト・シティの統治者が建立した歴史的な建造物の一つだ。今では大勢の観光客が年に二回は訪れる場所だった。猛スピードで辿り着いたモートは、立ち入り禁止の扉を通り抜け、石階段を頂上まで行くと赤い魂を探した。
シルバー・ハイネスト・ポールの頂上からは、血の雨が降り注ぐホワイトシティの真っ赤な全容が見え。モートが目を凝らすと、その中で赤い魂は幾つも見えるが、またしてもウエストタウンに小さい。だが、非常に激しく光る赤い魂が一つあった。
「……また、ウエストタウン……か……きっと、あそこだ」
「やあ、モート君。今朝もよく働くね」
「ああ……いってらっしゃい」
いつも挨拶をする通勤途中の配管工にモートは、軽く手を振った。配管工は今夜も記録的な大雪が降るのではとも言っていた。そんないつもの日常がモートには嬉しかった。モートはせっせと青銅の正門の隙間を埋めてしまった氷をスコップで丹念に削ったりしていた。ノブレス・オブリージュ美術館の使用人たちは、ヘレンが率先して広い館内の大掃除であった。
道路はすでに雪が固まっていて、交通が滞っていた。エンストを起こす車が目立っている。
午前9時過ぎになると路面バスが停まり。アリスが反対側の道路から歩いて来た。珍しくオーゼムと一緒だった。
「モートくん。アリスさんについた聖痕現象の意味がわかりましたよ。聖痕と血の雨との関係はまだよくわかりませんが……」
「オーゼム……? それは本当かい?」
「ええ、はい。恐らくは聖痕がついた人たちは全部で七人いるはずなんです。何故かと言うと、今まで助けた少女たちの名前がエペソとスミルナという変わった名前だったからです。これはヨハネの黙示録の七つの教会へのメッセージです」
「???」
モートは首をかしげたが、アリスは深々と白い息を吐いて少しだけ頷いた。どうやら、アリスはヨハネの黙示録を知っているようだった。だが、モートは知らなかった。
行き交う人々も吐く息は白い。
空からシンシンと降る雪と共に風も出てきた。
「恐らく、後はペルガモとテアテラ。サルギス。フィラデルフィア。ラオデルキヤという名前をしているでしょうね。いずれにしても、終末で起こる前触れなんでしょうね」
「オーゼム? それと……どうしてアリスに……聖痕が?」
モートは考えようとした。
だが、突然。
空から真っ赤な雨が降りだした。
「多分ですが……七人の人物たちは何かを封印しているのでしょうね。全員が少女の可能性もあります。さあ、モートくん出番ですよ。行ってください! その七人を守るのです!! あ、言い忘れていました! その七人の家は恐らく教会のはずなんです。エペソとスミルナの家も教会でしたので……。そうです教会は神の家ですからね」
「ああ……わかった」
モートは激しく降りだした血の雨の中で、シルバー・ハイネスト・ポールへと走った。
美術館から数十ブロックもモートは様々なものを通り過ぎる。シルバー・ハイネスト・ポールは石造りのホワイトシティでもっとも高い塔で、おおよそ400年前にホワイト・シティの統治者が建立した歴史的な建造物の一つだ。今では大勢の観光客が年に二回は訪れる場所だった。猛スピードで辿り着いたモートは、立ち入り禁止の扉を通り抜け、石階段を頂上まで行くと赤い魂を探した。
シルバー・ハイネスト・ポールの頂上からは、血の雨が降り注ぐホワイトシティの真っ赤な全容が見え。モートが目を凝らすと、その中で赤い魂は幾つも見えるが、またしてもウエストタウンに小さい。だが、非常に激しく光る赤い魂が一つあった。
「……また、ウエストタウン……か……きっと、あそこだ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる