夜を狩るもの 終末のディストピアⅡ meaning hidden

主道 学

文字の大きさ
14 / 59
blood (出血) モート編

12

しおりを挟む
 モートはここから遥か西にあるウエストタウンへと飛翔した。
 銀髪とロングコートから赤い水滴を零しながら宙を飛翔していると、しばらくすると、ウエストタウンの真っ赤に染まった林立する建造物が見えてきた。すでに真っ白な雪の姿は無い。道路へとモートが着地する頃には、真っ赤に染まった行き交う人々は皆、肌の苦痛を訴えていた。
 モートは何も感じないが、どうやら、血の雨は人間には有害なのだろう。血の流れる道端で、せっせと水掻きをしていた老人が苦痛に顔を歪めて急に倒れだした。

「だ……大丈夫か?」

 モートが駆け寄ると、老人は急にのろりと立ち上がった。具合が悪いのだろうとモートが肩に手を置いた。だが、何故か老人は何が可笑しいのかカラカラと笑いだした。
 
 老人がモートの方へと振り向くと……。

 そこには、生気のない灰色の死んでしまったような顔になった老人がカラカラといつまでも笑っていた。 
 
 モートは銀の大鎌をロングコートから取り出したが、一際目立つ赤い魂の人物を優先して、向きを変えて探した。

 周囲を見回すと。
 道路の真ん中に一人の少女が真っ赤な魂をして佇んでいる。

 周りの人たちもどこかおかしい。
 ゆらゆらと肩を動かして、少女を取り囲んでいた。 

 モートは焦ってその少女のところへ飛び込んだ。
 
 ザンッ!

 黒い魂だったので、モートはゾンビとかした男たちの首を瞬間的に狩った。
 
「あ、あなたは……? 怖い人ね……」
「……大丈夫かい……」
「ええ、助けてくれてありがとう。でも、まだあそこのゴミ箱の中にいるわ。さっき這い出てきたから」
「ああ……君はどこか建造物の中にいてくれ……」
「了解」

 モートはゴミ箱を銀の大鎌で破壊すると、中にマンホールが見えた。そして、マンホールの下へと通じる梯子が見える。ざあざあと降る血の雨が、マンホールの中へと消えていく。モートが梯子を降りようとすると、「きゃっ!」とさっきの少女から悲鳴が上がった。
 後ろを振り向くと、少女の足元に這いつくばる女のゾンビがいた。
 モートはヘレンとの約束があるので、女子供は狩れなかった。

 そのままモートは後方へと反転すると、女のゾンビを両足で踏んづけた。
 女のゾンビはそのまま動かなくなった。
 
「さあ! 今のうちにあの建物へ……! 急ぐんだ!」
「了解! 私の名前はペルガモよ! 変わった名前でしょ! 誰だか知らないけど、後お願いね!」
「ああ……」

 モートはマンホールの中へと梯子を降りた。

 どうやら、血の雨にあたると、人はゾンビになるのだろうとモートは梯子を降りながら考えていた。血の雨が降らなくなると、ゾンビはでてこなくなる。つまり、逆なのだ。ゾンビがでると血の雨が降るのではなく。血の雨がゾンビを増やすのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...