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Ange l(天使)

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Angel 3


「二人ともお疲れ様でした」
 アリスが二人分の缶コーヒーを店の踊り場の自動販売機から買ってきた。モートはいらないと言ったが、最後には折れた。オーゼムの方は缶コーヒーをひどく珍しがっていた。

 赤ん坊はこの二階の上にある。三階の受付に連れて行った。直接、母親にはさすがに知らせられないとモートが強く言うので、受付の店内放送で呼ぶことにしたのだ。モートがとても良い青年なのはわかっていたが、こんなにも優れたやさしさを持っていたことにアリスは興味を持ち始めていた。

「本当にお見事ですね。賭けは私の勝ちです」

 オーゼムは右手に包まった銀貨を一枚高々と掲げた。

 アリスは何のことかわからなかったが、オーゼムが本当に天界から来た天使なのではと思えてならない。不思議なことだが、アリスはモートと同じく。この人も人間ではないと信じていた。

「いやはや、母と賭けをしていました。母はモート君が赤ん坊を助けると賭け。私は反対のモート君は赤ん坊を助けないか、あるいは助けられないに賭けました。ちょっと、ズルをしてしまいましたが。私は元々、赤い魂のことを知っていたのです。早くに助けるつもりでしたが……言っておきますが、命には別状はありませんよ。赤ん坊の真っ赤な顔は、ただの熱さによる怒りの表れです」

 オーゼムはそういうと、モートの顔を覗くように見つめた。
 モートはひどく驚いていたが。それより、赤い魂って一体何なのでしょう? 何が見えるのでしょう? 

 アリスはオーゼムとモートの間に、入れない空間のようなものがあることを知った。決して今の二人の間には入れないのだ。オーゼムはニッコリ笑い「ほう」と溜息を吐いた。

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