白いスープと死者の街

主道 学

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異様

22話

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 二階から母さんが降りてくる音を聞いた僕は、素早くヤカンを取出しお湯を沸かすことにした。
「あら、今日も早いわね。関心関心。でも、学校には行っちゃ駄目よ」
 丸っこい母さんはすぐに、朝食の準備に取り掛かる。
 今日は丁度、日曜日だ。

 これからは、自分の身を守るために調査をしていかないといけない。
 まずは、隣町で起きた幼稚園バスの事件を調べよう。
「母さん。裏の畑でも遊べないから、ちょっと熊笹商店街に篠原君と藤堂君と行ってくるよ。いくらかお小遣いがほしいんだ。あそこなら人が多いし大丈夫だよね」
「……解ったわ。あそこなら人が多いし、大丈夫でしょう……ね。でも、母さん心配だわ。気を付けてね」
 母さんはサバを焼きながら、ぼくに真面目な顔を向ける。
 いつも母さんは料理の時は一生懸命だ。

 でも、その時の顔とは全然違う顔をしている。
 ぼくは涼しい顔で頷くと、隣町まで行ける往復分の電車賃を貰った。
 

 ぼくは水筒が入ったリュックを持って御三増駅へと歩く。
 日差しが今日は幾ばくか柔らかい。
 生暖かい風もあまり吹いていなかった

 水筒の中には麦茶が入ってある。後、昼食の大きなビスケットが三枚とおにぎりが一個。
 こじんまりとした家屋を見ながら、歩いているとどうしても自分が裏の畑の子供たちを助けるためには凄い勇気があることをしているんだなと思える。
 でも、ぼくは半分くらいは空想と恐怖と胸騒ぎから動いているのかも知れない。
 それは、決して褒められた行為じゃないのかも知れないけれど、誰も信じてくれないし、自分の身を守るためなんだとしたら、誰もぼくを責められないはず。

 御三増駅は無人だった。
 誰もいない窓口で切符を貰って、お金を置いた。電車を待つためにホームにある一つしかないベンチに座った。
 ホームは所々、雑草が生えてある。
 電車の時刻表は頭の中にある。1時間あまりも待たなくて済む。
 切符をポケットの中へと入れると、水筒から少し濃い目の麦茶を飲む。心が落ち着いた。
 今の時間は太陽は柔らかな日差しで町を包み込むように照っていた。

 生暖かい風はセミの鳴き声を乗せては僕の耳に届けた。
 短い電車がホームにやってきた。
 ぼくは立ち上がり、水筒をリュックへ入れると、電車に乗った。
 電車の中はやはり、無人だった。

 隣町まで20分。
 居眠りしたら大変だ。
 僕は座席には座らず、ガランとした車内の手摺を掴んで車窓から外を眺めていた。
 緑の多いこの町から離れるのは、ぼくの心にある何かしっかりしている重いものが少しづつ無くなっていく感じがした。

 寂しいと思うことを極力我慢した。
 電車は快適に走ると、次の駅で停まる。
 利六町。そういえば、幸助おじさんが住んでいるところだ。
 電車から降りると、一人の男性だけが電車に乗り出した。ぼくは切符を一人の駅員に渡し、雨の降りそうな町を彷徨うことにした。

 小さなロータリーを足早に進んで、駅から近くの陸橋を登った。まずは幼稚園を探そう。件の幼稚園。通行人にさりげなく聞くことが出来た。ことり幼稚園というのだそうだ。
 簡素な家屋を歩き回り横断歩道を渡って、幸助おじさんに見つかったらどうしようと内心びくびくしながら、歩いていた。大粒の雨が少しだけ降りかかった。

 駅からそう遠くないところに、そのことり幼稚園はあった。通行人に弟がいると嘘を言って知ったことは。今は幼稚園も休園しているみたいだ。
 ぼくは仕方なく。

 幼稚園バスの道のりを追跡することにした。
 確か商店街辺りで児童たちがいなくなったんだっけ。
 ぼくは通行人に聞いて商店街を目指した。
 八文字商店街。入り口には錆だらけのアーチが佇んでいた。
 熊笹商店街とはうって変わって、人の少ないところだった。散々歩き通してもう昼だ。八文字商店街の寂れた店などから、お客が出入りしている。丁度いいところに木製の古いベンチがあった。僕は出入りしているお客の顔を見ながら、昼食にすることにした。

 天蓋の日陰でおにぎりを麦茶で胃に押し流し、大き目のビスケットを頬張る。大人たちもきっと、今の時間は昼食の時間で、ぼくと同じく食べ物を頬張っているんだ。
 大人も子供もほとんど同じだ。
 ただ、態度や背丈や仕事があるだけ。
 この事件は大人が介入していても、きっと同じなのだ。

 犯人は誰か解らない。
 それどころか、世間体が邪魔して何もできないのではないだろうか。だって、裏の畑で人形の手足がでてきた。子供たちはバラバラにされても生きている。大原先生は恐ろしい怪物だった。ことり幼稚園の児童がバスの中から保母さんや運転手ごといなくなった。こんな事件は誰も。いや、ぼくがやらなければならないのでは?
 信じてくれる人もいない。
 解決は出来るか解らないけど、一人で何とかするしかないんだ。
 ぼくは関わってしまった。
 こんな事件に。

 でも、あまり気にしないんだ。
 ぼくは空想の延長がたまたま現実になったとだけ思っているんだ。
 それは恐ろしい現実だ。
 でも、時々すごく怖いけど本当はあまり気にしていない。
「さて……。問題のバスの場所へ行こうか」
 ぼくはリュックにまだ半分ある水筒を入れると、八文字商店街を突っ切って、人気のない道路へと出た。
 周りに点々とした畑と雑木林があるだけで、何もない静かな道路だ。

 所々、アスファルトにヒビが入っているだけで、近くには電信柱が並んでいる。
 畑の一つに、そこは大根が植えてある場所に、大家族の方の田中さんの3番目の息子さんがいた。他の畑にはここの地の人たちが仕事をしていた。

 3番目の息子さんの三部木さんが、こちらに手を振った。
 大家族の田中さんは息子さんが6人いる。
 全員農業を元気にしていた。
 三部木さんが畑から大根を一本抜いてぼくに渡した。
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