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白いスープ
34話
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「歩君。まずは、あの看護婦さんをどこか安全な場所で休ませてやって。辛いでしょうけど、今は優先は優先です」
大原先生は背筋をピンと伸ばした。
学校の時の優しい先生が戻って来た。
ぼくは地団駄を数分すると、頬を両手で何度も叩いて気合いを入れた。
エレベーターまで大原先生と戻ると、外は大雨が降りだしていた。
暴風と稲光の後、物凄い雷が近くに落ち。どこかの山の木々に直撃したようだ。ぼくらを包んだ厚い空気がより一層。厚くねっとりとしてきた。
稲光に照らされながら、ぼくは大雨の中を病院から大急ぎで駐車場を大原先生と走り抜ける。まるで、これから何が起きても後悔はしないんだというぼくの気持ちを雷が激しく揺さぶっているみたいだ。負けないぞと大声を心の中で張り上げ続け。白線内の少し斜めに止めてある軽自動車に向かった。
これから不死の儀をつかう村へ行くと決めたんだ。
そう、ぼくの父さんと母さんのために。
看護婦さんは診療室の一室で休ませたからきっと大丈夫だろう。
ぼくの体は、あの白いスープのお蔭でだいぶ楽になっているから、看護婦さんも明日には目を覚ますはずだ。
土と草の匂いが充満した車の中では、ぼくはワイパーというのが右へ左へと忙しなく動いているのを見つめていると。前方を見つめる。大原先生の顔は、いつの間にか人間の顔に戻っていた。
辺りを包み込む暗黒は、この町全体を今にも押し潰そうとしているかのようだった。車のライトで照らされる周囲の森林からは、枝葉の陰が雷が落ちる大音響とともに悲鳴を上げ暴風で皆踊っていた。
ぼくは色々と考えるのをやめて、一番大事なところだけを大原先生に聞いてみることにした。
「大原先生。子供たちはどうして死んでしまうの?」
ぼくは、それが一番気がかりだった。でも、父さんと母さんとはやっぱり比べられないんだ。
「歩君は、人は何故。ものを食べるか知ってる?」
ぼくは考えた。
「お腹が空き過ぎると大変だから。……生きるためかな?」
「そう。死を免れるために。そして、生きるためにね。彼らも同じです。形は違えど彼らは人間なのです」
「え? 大原先生。あの村の人達は一体だれなの?」
ぼくは少し身構えていた。
空腹でお腹がギュウギュウ鳴っていて力が出ないけど。必死に堪える。
青い顔をしているのかも知れないけれど。でも、やっぱり気になっていた。
「村の人たちは……。昔の人たち……。今まで生きていた。昔の人たち。そう、何百年と今まで生きているの」
ぼくは思い出して、目を閉じて。悲しい歌を口ずさむように心を落ち着かせた。子供たちを食べる儀式。不死の儀。そんな大人たちは許せない。
きっと、これは子供たちの仇を取ることになる旅になる。
「でも、歩君。悲しいことだけど。特別なことじゃないわ。大昔から人が人を食べることはあるの。それは歴史の授業では誰も言わないけど。本当のことよ。人間の裏側の黒い歴史と呼べるの」
大原先生は前を向いているはずなのに、ぼくに優しく微笑んだかのようだった。
十字路が見え。黒い街並みが見えて来た。
静かすぎる街並みをぼくは見つめていた。
月も隠れていて、誰も明かりを照らさない街。稲光しかこの街を照らさない。雨でぬれていて、湿っていて今にも街全体が泣き出しそうだった。
この街の人たちの中にも犠牲者がいるんだね。悲しいこと。辛いこと。いっぱいあるけれど、でも、やっぱり生きていくしかないんじゃないのかな?
「大原先生。今までどこにいたの?」
大原先生は苦悶の表情をして、俯いた。
でも、少し顔だけを上げ。
「不死の儀の村にいたの。そこでは今後の不死の儀の相談を村の人たちとしていたわ。もう止めましょうよと、少しづつ話していたけれど、村の人たちは生きるためだといって……。頑なに聞かなかったわ。だから、しょうがなかった。逃げるだけでいっぱいだった」
ぼくの頭に突然、空想が充満してきた。
まるで、恐怖心を隠そうとしているのかのようだ。
「御三増セントラル病院で何が起きたの?」
「村の人たちと、少しだけ争ってしまったわ……大丈夫。村の人たちは無事よ。まだまだ不死の儀の村は遠いから。歩君。今からいうことをしっかり聞いて……」
大原先生は、また少し俯き加減で苦悶の声を振り絞った。
「大丈夫?」
「ええ。大丈夫……。私と一緒に不死の儀の村を燃やすの。何もかもね」
黒い街を通り過ぎると、山の中腹へ向かうと聞いた。
大原先生は、時々苦悶の顔や声などを表面に出していた。
ぼくはその都度。大原先生を気遣っていたけど、何か大きなことが大原先生の心の中で、衝突をしているんだと思えるようになっていた。
枝葉の影がおいでおいでしている。
ぼくは怖くはない。
死んでいるのかわからない体では、きっと戻ってこれないだろう。ぼくはこの暗い山で明日になったら死体で見つかるんだ。でも、もういいんだ。もうこの黒い街を終わりにすることにした。
大原先生は背筋をピンと伸ばした。
学校の時の優しい先生が戻って来た。
ぼくは地団駄を数分すると、頬を両手で何度も叩いて気合いを入れた。
エレベーターまで大原先生と戻ると、外は大雨が降りだしていた。
暴風と稲光の後、物凄い雷が近くに落ち。どこかの山の木々に直撃したようだ。ぼくらを包んだ厚い空気がより一層。厚くねっとりとしてきた。
稲光に照らされながら、ぼくは大雨の中を病院から大急ぎで駐車場を大原先生と走り抜ける。まるで、これから何が起きても後悔はしないんだというぼくの気持ちを雷が激しく揺さぶっているみたいだ。負けないぞと大声を心の中で張り上げ続け。白線内の少し斜めに止めてある軽自動車に向かった。
これから不死の儀をつかう村へ行くと決めたんだ。
そう、ぼくの父さんと母さんのために。
看護婦さんは診療室の一室で休ませたからきっと大丈夫だろう。
ぼくの体は、あの白いスープのお蔭でだいぶ楽になっているから、看護婦さんも明日には目を覚ますはずだ。
土と草の匂いが充満した車の中では、ぼくはワイパーというのが右へ左へと忙しなく動いているのを見つめていると。前方を見つめる。大原先生の顔は、いつの間にか人間の顔に戻っていた。
辺りを包み込む暗黒は、この町全体を今にも押し潰そうとしているかのようだった。車のライトで照らされる周囲の森林からは、枝葉の陰が雷が落ちる大音響とともに悲鳴を上げ暴風で皆踊っていた。
ぼくは色々と考えるのをやめて、一番大事なところだけを大原先生に聞いてみることにした。
「大原先生。子供たちはどうして死んでしまうの?」
ぼくは、それが一番気がかりだった。でも、父さんと母さんとはやっぱり比べられないんだ。
「歩君は、人は何故。ものを食べるか知ってる?」
ぼくは考えた。
「お腹が空き過ぎると大変だから。……生きるためかな?」
「そう。死を免れるために。そして、生きるためにね。彼らも同じです。形は違えど彼らは人間なのです」
「え? 大原先生。あの村の人達は一体だれなの?」
ぼくは少し身構えていた。
空腹でお腹がギュウギュウ鳴っていて力が出ないけど。必死に堪える。
青い顔をしているのかも知れないけれど。でも、やっぱり気になっていた。
「村の人たちは……。昔の人たち……。今まで生きていた。昔の人たち。そう、何百年と今まで生きているの」
ぼくは思い出して、目を閉じて。悲しい歌を口ずさむように心を落ち着かせた。子供たちを食べる儀式。不死の儀。そんな大人たちは許せない。
きっと、これは子供たちの仇を取ることになる旅になる。
「でも、歩君。悲しいことだけど。特別なことじゃないわ。大昔から人が人を食べることはあるの。それは歴史の授業では誰も言わないけど。本当のことよ。人間の裏側の黒い歴史と呼べるの」
大原先生は前を向いているはずなのに、ぼくに優しく微笑んだかのようだった。
十字路が見え。黒い街並みが見えて来た。
静かすぎる街並みをぼくは見つめていた。
月も隠れていて、誰も明かりを照らさない街。稲光しかこの街を照らさない。雨でぬれていて、湿っていて今にも街全体が泣き出しそうだった。
この街の人たちの中にも犠牲者がいるんだね。悲しいこと。辛いこと。いっぱいあるけれど、でも、やっぱり生きていくしかないんじゃないのかな?
「大原先生。今までどこにいたの?」
大原先生は苦悶の表情をして、俯いた。
でも、少し顔だけを上げ。
「不死の儀の村にいたの。そこでは今後の不死の儀の相談を村の人たちとしていたわ。もう止めましょうよと、少しづつ話していたけれど、村の人たちは生きるためだといって……。頑なに聞かなかったわ。だから、しょうがなかった。逃げるだけでいっぱいだった」
ぼくの頭に突然、空想が充満してきた。
まるで、恐怖心を隠そうとしているのかのようだ。
「御三増セントラル病院で何が起きたの?」
「村の人たちと、少しだけ争ってしまったわ……大丈夫。村の人たちは無事よ。まだまだ不死の儀の村は遠いから。歩君。今からいうことをしっかり聞いて……」
大原先生は、また少し俯き加減で苦悶の声を振り絞った。
「大丈夫?」
「ええ。大丈夫……。私と一緒に不死の儀の村を燃やすの。何もかもね」
黒い街を通り過ぎると、山の中腹へ向かうと聞いた。
大原先生は、時々苦悶の顔や声などを表面に出していた。
ぼくはその都度。大原先生を気遣っていたけど、何か大きなことが大原先生の心の中で、衝突をしているんだと思えるようになっていた。
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