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不死の儀
38話
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幾つものあばら家にガソリンを撒いた。
ガソリンの揮発性で鼻が曲がるほどだった。もう、暑い昼が過ぎ。夕暮れの時間になっていた。大原先生は血の涙を流しながらライターを取り出していた。
村田先生が急に散弾銃を撃ちながら叫んだ。
「早く! 村の人たちが起きてしまった! 農耕車から子供たちを助けたい!」
「待って! 大原先生。どんなに悲しくても……命は粗末にしたらいけないって、おじいちゃんが言っていたんだ!」
しばらく、大原先生はぼくの言葉が耳に入っていないかのように、あばら家付近の藁に火を点けていた。
火炎が村を襲う。
地獄の業火のような火炎だった。
一本の何かがぼくへ向かって、飛んできた。
ぼくのお腹に突き刺さると、あばら家の奥や農耕車から、異変を察知して起き出した村の人たちが、手に手に農具を取り走ってきた。それと、農耕車の座席にあった子供たちの腕や顔が動き出し、地面に落ちて来た。
「歩君! 大丈夫!」
大原先生の声を聞いたようだけど、ぼくの意識はどんどんと遠のいていった。
気が付くと、ぼくの体は走っている大原先生に抱えられ、雑木林を物凄いスピードで逃げ回っていた。
「ほれほれ。ほれほれ」
「ほれほれ。ほれほれ。ほれほれ」
「ほれほれ」
お腹から血が大量に出ている。
後ろに首をやっとのことで向けると、村の人たちが大勢追ってきていた。
それでも、大原先生は息を切らして、ぼくを抱えながら全速力で走る。
「ぐっ」
大原先生のくぐもった声が時折聞こえる。
見ると、大原先生の背中には幾つもの折れた錐が突き刺さっていた。
村田先生も酷いけがで、それでも、後方へと逃げながら散弾銃を幾度も撃っていた。
再び、目を開けると、ぼくの目の前には大原先生が倒れていた。
背中から大量の血を流し、死んでいるかのようだった。
もう動けないんだろう。
ぼくは今度は口で悲しい歌を歌った。
大原先生の破損している背中からは、心臓などの内臓が見え。もう、生命らしきものが宿っていない。
「残念ながら……。歩君。大原先生はもう動くことができなくなってしまった。でも、悲しむことはないんだよ……。もともと死んでいたんだよ。200年前からね。私もだが……いや、この街全部だな……」
村田先生の悲しく鳴るテープレコーダーの声に、ぼくは悲しい歌を口ずさんで、その場を後にした。
真夏がこの世とも思えないような忌まわしい事件とともに過ぎ去ろうとしていた。
ぼくの心の中で口すさんだ悲しい歌も、もう歌うことは無いんだ。父さんと母さんはいなかったのだろう。
では、どこへ?
杉林の獣道を歩いて、村田先生が吐血しながら話していた。
「この街から出なければね。そう、遠くへと……」
「村田先生はどうやって、あの村へ来たの?」
「車だよ。君のお父さんとお母さんを乗せて、一足先に看護婦長が帰って行った」
「え!?」
ぼくは驚いて、後ろへ転倒しそうになった。
空腹感も消えたこの体には、生命という名のエネルギーが弱まって、後ろへ倒れるとそのまま死んでしまいそうだった。
「言うのが遅かったかね。でも、仕方ない。さて、この道を真っ直ぐ降りていけばいい」
そういうと、村田先生は散弾銃の弾込めをしながら、咳き込んだ。
テープレコーダーのような声の村田先生は、どこか遠い目をしていた。
「君の心の旅ももう終わった。後は警察や大人に任せなさい」
「え? 真相? まだあるんだ」
枝葉が靴の隙間に入っていたけど、ぼくは歩を進める。
汗が時折、耳に入った。
じんわりとした夏の生暖かい風は、ぼくのお腹の出血を撫で、不快な感情を醸し出していた。
「そう。まだ、終わっていないんだ。残念だけどね」
風が弱いながらも、汗の覆う顔を撫でた。
そういえば、三部木さんたちがいたんだ。
村の人たちは、帰る場所を失い。もう不死の儀を使うことはないはず。いくら不死な彼らでも消滅してしまうんだ。
ぼくが、村田先生に顔を向けると、村田先生は大きく頷いて咳き込み。血が少量地面に落ちた。
「そう。真相はこの街にあるんだ。今も生きているんだね。真相自体がね」
やっとのことで、悪夢と一緒に杉林を抜けた。
目の前の道路には、道路標識以外は、電柱と看護婦長が乗った黄色い普通自動車だった。ぼくは、すぐさま看護婦長に父さんと母さんのことを聞いていた。
自然な反応? 多分そうだ。
「安心して、何もなかったのよ」
看護婦長はケラケラと笑った。
「…………よかった……」
「さあ、出発しよう。今度はこの街からも逃げ出さなければね」
村田先生のテープレコーダーの声が辺りに響いた。
車は住宅街の入り組んだ細道を軽快に走行していた。
血生臭いぼくたちを乗せて。
車窓からは、日の光を浴びる黒い街が佇んでいる。街の住人がいつの間にか生活の音を立てて、それぞれの出方で、それぞれの場所へと向かいだした。
ここには生活があるんだ。
黒く。残酷だけれども。いつもの生活があるんだ。
「君をおうちへ帰さないといけないな」
「もう。村田先生はー。当たり前でしょ」
運転している看護婦長と助手席に座った村田先生は、世間話のように話していた。村田先生も不死なんだ。時折、血を少量吐いては咳き込んでいた。
ぼくは、そんな二人のことを気にせずに、この事件の真相のことを考えていた。
だって、三部木さんたちが気になるんだ。
死んでいる人たちが、動きだすと、とても恐ろしい。
なんでって、何をするかわからないんだ。
広い道路へとでた。
通行人がボロボロになったぼくたちを、車窓から珍しそうにのぞき込んでいるような錯覚を感じた。
黒い人たち。
きっと、不死な人もいるはず。
ガソリンの揮発性で鼻が曲がるほどだった。もう、暑い昼が過ぎ。夕暮れの時間になっていた。大原先生は血の涙を流しながらライターを取り出していた。
村田先生が急に散弾銃を撃ちながら叫んだ。
「早く! 村の人たちが起きてしまった! 農耕車から子供たちを助けたい!」
「待って! 大原先生。どんなに悲しくても……命は粗末にしたらいけないって、おじいちゃんが言っていたんだ!」
しばらく、大原先生はぼくの言葉が耳に入っていないかのように、あばら家付近の藁に火を点けていた。
火炎が村を襲う。
地獄の業火のような火炎だった。
一本の何かがぼくへ向かって、飛んできた。
ぼくのお腹に突き刺さると、あばら家の奥や農耕車から、異変を察知して起き出した村の人たちが、手に手に農具を取り走ってきた。それと、農耕車の座席にあった子供たちの腕や顔が動き出し、地面に落ちて来た。
「歩君! 大丈夫!」
大原先生の声を聞いたようだけど、ぼくの意識はどんどんと遠のいていった。
気が付くと、ぼくの体は走っている大原先生に抱えられ、雑木林を物凄いスピードで逃げ回っていた。
「ほれほれ。ほれほれ」
「ほれほれ。ほれほれ。ほれほれ」
「ほれほれ」
お腹から血が大量に出ている。
後ろに首をやっとのことで向けると、村の人たちが大勢追ってきていた。
それでも、大原先生は息を切らして、ぼくを抱えながら全速力で走る。
「ぐっ」
大原先生のくぐもった声が時折聞こえる。
見ると、大原先生の背中には幾つもの折れた錐が突き刺さっていた。
村田先生も酷いけがで、それでも、後方へと逃げながら散弾銃を幾度も撃っていた。
再び、目を開けると、ぼくの目の前には大原先生が倒れていた。
背中から大量の血を流し、死んでいるかのようだった。
もう動けないんだろう。
ぼくは今度は口で悲しい歌を歌った。
大原先生の破損している背中からは、心臓などの内臓が見え。もう、生命らしきものが宿っていない。
「残念ながら……。歩君。大原先生はもう動くことができなくなってしまった。でも、悲しむことはないんだよ……。もともと死んでいたんだよ。200年前からね。私もだが……いや、この街全部だな……」
村田先生の悲しく鳴るテープレコーダーの声に、ぼくは悲しい歌を口ずさんで、その場を後にした。
真夏がこの世とも思えないような忌まわしい事件とともに過ぎ去ろうとしていた。
ぼくの心の中で口すさんだ悲しい歌も、もう歌うことは無いんだ。父さんと母さんはいなかったのだろう。
では、どこへ?
杉林の獣道を歩いて、村田先生が吐血しながら話していた。
「この街から出なければね。そう、遠くへと……」
「村田先生はどうやって、あの村へ来たの?」
「車だよ。君のお父さんとお母さんを乗せて、一足先に看護婦長が帰って行った」
「え!?」
ぼくは驚いて、後ろへ転倒しそうになった。
空腹感も消えたこの体には、生命という名のエネルギーが弱まって、後ろへ倒れるとそのまま死んでしまいそうだった。
「言うのが遅かったかね。でも、仕方ない。さて、この道を真っ直ぐ降りていけばいい」
そういうと、村田先生は散弾銃の弾込めをしながら、咳き込んだ。
テープレコーダーのような声の村田先生は、どこか遠い目をしていた。
「君の心の旅ももう終わった。後は警察や大人に任せなさい」
「え? 真相? まだあるんだ」
枝葉が靴の隙間に入っていたけど、ぼくは歩を進める。
汗が時折、耳に入った。
じんわりとした夏の生暖かい風は、ぼくのお腹の出血を撫で、不快な感情を醸し出していた。
「そう。まだ、終わっていないんだ。残念だけどね」
風が弱いながらも、汗の覆う顔を撫でた。
そういえば、三部木さんたちがいたんだ。
村の人たちは、帰る場所を失い。もう不死の儀を使うことはないはず。いくら不死な彼らでも消滅してしまうんだ。
ぼくが、村田先生に顔を向けると、村田先生は大きく頷いて咳き込み。血が少量地面に落ちた。
「そう。真相はこの街にあるんだ。今も生きているんだね。真相自体がね」
やっとのことで、悪夢と一緒に杉林を抜けた。
目の前の道路には、道路標識以外は、電柱と看護婦長が乗った黄色い普通自動車だった。ぼくは、すぐさま看護婦長に父さんと母さんのことを聞いていた。
自然な反応? 多分そうだ。
「安心して、何もなかったのよ」
看護婦長はケラケラと笑った。
「…………よかった……」
「さあ、出発しよう。今度はこの街からも逃げ出さなければね」
村田先生のテープレコーダーの声が辺りに響いた。
車は住宅街の入り組んだ細道を軽快に走行していた。
血生臭いぼくたちを乗せて。
車窓からは、日の光を浴びる黒い街が佇んでいる。街の住人がいつの間にか生活の音を立てて、それぞれの出方で、それぞれの場所へと向かいだした。
ここには生活があるんだ。
黒く。残酷だけれども。いつもの生活があるんだ。
「君をおうちへ帰さないといけないな」
「もう。村田先生はー。当たり前でしょ」
運転している看護婦長と助手席に座った村田先生は、世間話のように話していた。村田先生も不死なんだ。時折、血を少量吐いては咳き込んでいた。
ぼくは、そんな二人のことを気にせずに、この事件の真相のことを考えていた。
だって、三部木さんたちが気になるんだ。
死んでいる人たちが、動きだすと、とても恐ろしい。
なんでって、何をするかわからないんだ。
広い道路へとでた。
通行人がボロボロになったぼくたちを、車窓から珍しそうにのぞき込んでいるような錯覚を感じた。
黒い人たち。
きっと、不死な人もいるはず。
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