16 / 54
同棲
15話
しおりを挟む
その次の日。
銃を見て恍惚になる男は、ガンショップにはいなかった。私の車のドアにあるスヌーピーの絵には、結構目立つ傷が付いていた。
「夜鶴さん。テレビ点けてください」
黒のテーブルで奈々川さんが言った。
私は頭の中では車の修理代で一杯だったが、テレビのリモコンを持った。
「おはようございまーす! 云話事町TVでーす!」
美人のアナウンサーがいつもの住宅街を背にマイクを一度、隣の藤元に向ける。
藤元はなにやら念仏を唱えていた。
「昨日の朝にA区で殺人事件がありました。お悔やみ申し上げます。死亡した……」
テレビに男の顔写真が出た。
「奈賀 比企下さん32歳。A区のゴミ捨て場から遺体で発見されています。昨日の警察の調べによりますと、その死体にはハローポイントという銃弾が発見され、犯人は今だ生活中。残念です」
美人のアナウンサーが頭を垂れた。
藤元は念仏を唱えるのを止め。
「これでよし。もし、生き返ったら私の事務所へと連絡してください。お願いします」
美人のアナウンサーが本気でマイクで藤元のおでこを叩いた。
「放送した意味ないでしょ!」
「生き返ってくれればいいのに……」
黒のテーブルで奈々川さんが俯いてか細く言った。
それだと……まずい……。
私は藤元の祈り?が効かなければと願った。
「今日も仕事なのですか?頑張りますね……。仕事が好きなんですね?」
「ああ。って、あれ?」
「どうしたの?」
奈々川さんがチャーミングなホクロのついた顔を向ける。
「俺って……金のため以外に仕事した時って、あったっけ?」
「わんわ、わん」
スケッシーは大喜びだ。
「よお。あの男は一体何だったのかな?」
島田である。
銃を見て恍惚な顔をする男のことだ。
私は牛肉をシューターへと入れながら、少し考えた。
「さあ……? 多分、ただの嫌がらせだったのかも知れない。そういう奴って、結構いるだろ」
「それなら、次は銃を抜こうぜ。……どっちでもいいか。会えば銃で撃てばいいし」
「ああ」
私は今の生活が気にいっていた。とても幸せだ。けれど、結婚なんてできるのだろうか?
「あ、奈々川さんはどうした?」
島田の興味を持った声に応えようとしたら、
「そうだぞ。奈々川さんはどうした?」
田場さんが後ろにいた。
「実は訳があって、今一緒に生活しているんだ」
「マジ!」
島田がひっくり返るように、牛肉を遥か彼方へとポイっと投げた。
「そうか。そうなのか」
田場さんが納得顔で頷いた。
津田沼が遠い場所から耳に力を入れていた。
「おめでとう。夜っちゃん」
津田沼がいつもの日の丸弁当を抱えて、隣の席へと着く。
「あの夜鶴が女と同棲するとはなぁ。大切にしろよ」
島田は感慨深く言う。
「あ、でも、式は何時なのか決まったのか?」
島田が小声で真面目な話題に切り替えた。
「そうだ。B区のお嬢様なんだよな」
津田沼が小声で言う。
「ああ。でも、結婚できるか解らない」
「そんなことねえって、俺が何とかしてやるよ!」
島田が興奮して弁当片手に立ち上がった。
「おらー! B区の奴らー! 全部まとめて俺が相手だー! やってやるぜー!!」
B区の奴らが一斉に立ち上がる。私は真っ青になって、島田の暴走を止めるために立ち上がった。
「島田!……あ、何でもない! B区とは揉め事を起こしたくないんだ!」
少し離れたところにいるB区の男たちに頭を下げた。
「島ちゃん。どうどうだよ」
津田沼が島田を宥めると、私に向かって小声になる。
「奈々川さんと夜っちゃんが同棲していることが、職場のB区の奴らにバレると血を見るのは必死だから、これから気を付けようよ」
「ああ。……島田はどうするか?」
「あのままじゃ……どうしよう?」
…………
銃を見て恍惚になる男は、ガンショップにはいなかった。私の車のドアにあるスヌーピーの絵には、結構目立つ傷が付いていた。
「夜鶴さん。テレビ点けてください」
黒のテーブルで奈々川さんが言った。
私は頭の中では車の修理代で一杯だったが、テレビのリモコンを持った。
「おはようございまーす! 云話事町TVでーす!」
美人のアナウンサーがいつもの住宅街を背にマイクを一度、隣の藤元に向ける。
藤元はなにやら念仏を唱えていた。
「昨日の朝にA区で殺人事件がありました。お悔やみ申し上げます。死亡した……」
テレビに男の顔写真が出た。
「奈賀 比企下さん32歳。A区のゴミ捨て場から遺体で発見されています。昨日の警察の調べによりますと、その死体にはハローポイントという銃弾が発見され、犯人は今だ生活中。残念です」
美人のアナウンサーが頭を垂れた。
藤元は念仏を唱えるのを止め。
「これでよし。もし、生き返ったら私の事務所へと連絡してください。お願いします」
美人のアナウンサーが本気でマイクで藤元のおでこを叩いた。
「放送した意味ないでしょ!」
「生き返ってくれればいいのに……」
黒のテーブルで奈々川さんが俯いてか細く言った。
それだと……まずい……。
私は藤元の祈り?が効かなければと願った。
「今日も仕事なのですか?頑張りますね……。仕事が好きなんですね?」
「ああ。って、あれ?」
「どうしたの?」
奈々川さんがチャーミングなホクロのついた顔を向ける。
「俺って……金のため以外に仕事した時って、あったっけ?」
「わんわ、わん」
スケッシーは大喜びだ。
「よお。あの男は一体何だったのかな?」
島田である。
銃を見て恍惚な顔をする男のことだ。
私は牛肉をシューターへと入れながら、少し考えた。
「さあ……? 多分、ただの嫌がらせだったのかも知れない。そういう奴って、結構いるだろ」
「それなら、次は銃を抜こうぜ。……どっちでもいいか。会えば銃で撃てばいいし」
「ああ」
私は今の生活が気にいっていた。とても幸せだ。けれど、結婚なんてできるのだろうか?
「あ、奈々川さんはどうした?」
島田の興味を持った声に応えようとしたら、
「そうだぞ。奈々川さんはどうした?」
田場さんが後ろにいた。
「実は訳があって、今一緒に生活しているんだ」
「マジ!」
島田がひっくり返るように、牛肉を遥か彼方へとポイっと投げた。
「そうか。そうなのか」
田場さんが納得顔で頷いた。
津田沼が遠い場所から耳に力を入れていた。
「おめでとう。夜っちゃん」
津田沼がいつもの日の丸弁当を抱えて、隣の席へと着く。
「あの夜鶴が女と同棲するとはなぁ。大切にしろよ」
島田は感慨深く言う。
「あ、でも、式は何時なのか決まったのか?」
島田が小声で真面目な話題に切り替えた。
「そうだ。B区のお嬢様なんだよな」
津田沼が小声で言う。
「ああ。でも、結婚できるか解らない」
「そんなことねえって、俺が何とかしてやるよ!」
島田が興奮して弁当片手に立ち上がった。
「おらー! B区の奴らー! 全部まとめて俺が相手だー! やってやるぜー!!」
B区の奴らが一斉に立ち上がる。私は真っ青になって、島田の暴走を止めるために立ち上がった。
「島田!……あ、何でもない! B区とは揉め事を起こしたくないんだ!」
少し離れたところにいるB区の男たちに頭を下げた。
「島ちゃん。どうどうだよ」
津田沼が島田を宥めると、私に向かって小声になる。
「奈々川さんと夜っちゃんが同棲していることが、職場のB区の奴らにバレると血を見るのは必死だから、これから気を付けようよ」
「ああ。……島田はどうするか?」
「あのままじゃ……どうしよう?」
…………
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる