ご近所STORY ハイブラウシティ【改訂版】

主道 学

文字の大きさ
24 / 54
危険な恋

23話

しおりを挟む
 私は尻尾を振っているスケッシーを見つめながら考えた。私も奈々川さんもこのままじゃいけない……何とかしないと……。私はそう思った。
「奈々川さん……。俺と結婚してくれないか?」


 その日、奈々川さんが少し塞ぎ込んでしまった。
「あ、こういう状況だから……勇気がいるのは……違うかな?俺のことが、好きだといいけど…………今でも……取り合いずは前進してみるのは?どうかな?」
 私はこれ以上ないほど、考えを入れた言葉を発した。
「私は夜鶴さんのこと…………好きです。……けど…………」
 奈々川さんは下を俯いて最後の言葉は尻つぼみになる。しかし、それでも何よりの答えだった。

「こんな世界だし?やっぱり勇気がいるのは解るけど・・・進まないといけないこともある。このままでも、危険なのだし、それならば取り合えず進んでみたい」
 奈々川さんが急にパッと顔を上げ、
「今日もラーメンを食べましょ!栄養を取らないと」
「……ああ」
 私たちは通勤時間ギリギリまで、ラーメンショップでラーメンを食べることにした。私はこの行動に意味があるのか、それとも意味のないことなのかと考える……。

 奈々川さんがラーメンショップで、黙々とチャーシューメンを食べると、私たちは外へと出た。
 奈々川さんが顔を上げ、
「残念です。百杯目のラーメンじゃなかった……」
 奈々川さんが涙を少し見せる顔を向け、
「今日もお仕事頑張ってください」
「ああ……」


「ひゅー! ひゅー! プロポーズをしたってー!」
 島田が珍しい牛肉を、素早く可愛らしいポーズでシューターへと入れて叫んだ。
「ああ。でも、まだ奈々川さんの返事を聞いていない……」
「いや、凄いぞ!」
 田場さんだ。
 B区の奴らがざわめく。

 私たちは仕事中でも弾丸をめい一杯詰め込んだ銃を所持していた。
「いよいよだな。俺は戦うぜ」
 島田が私のためにガッツポーズをしている間に、珍しい豚肉はベルトコンベアーの彼方に行った。
「ああ。俺も戦う。B区の奴らには邪魔させん」
 田場さんも赤いモヒカンをいきり立たせ、ガッツポーズをした。
 私にはこんなにも心強い味方がいた。
 津田沼も遥か遠くでガッツポーズをしていた。

「夜っちゃん。俺も戦うよ」
 津田沼が日の丸弁当片手に隣の席に着く。
「ああ。でも、奈々川さんの気持ちをしっかりと聞いてからだ」
「何とかなるって。絶対。奈々川さんもOKしてくれるって」
 島田が立ち上がり、
「オラー! B区の奴らー! 俺が全員ぶっ殺してやる」
 私は島田の肩にそっと手を置いた。

「島田。きっと、戦争になる。俺が死んだら奈々川さんをよろしく頼む……」
「あ、でも藤元が生き返らせてくれるんじゃないか?」
 津田沼が島田に「どうどう」と言いながら気休めを言った。
「ああ。そうだな……」
 でも、私が死んでも生き返っても……それは解決じゃない。本当の解決とは一体……?どんなことを言うのだろう?

 人は大昔から、命を掛けてことを行ったけれど、それでも解決しなかったことはいっぱいある。本当の解決とはもっと困難で、人の命はその前ではとても小さいものなのだろうか?

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

最後の女

蒲公英
恋愛
若すぎる妻を娶ったおっさんと、おっさんに嫁いだ若すぎる妻。夫婦らしくなるまでを、あれこれと。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

処理中です...