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同棲
22話
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「あはは……な! 大丈夫だろ!」
奈々川さんに涙と笑顔が浮かんだ。
「私。藤元さんが帰ってきたらお礼を言います」
奈々川さんが涙を拭いて明るく言った。
「ああ。でも……入団はしないでね」
「はい!」
…………
夕方になるとスケッシーが吠えた。散歩の時間だ。床から起き上がると、
「お早うございます。夜鶴さん。スケッシーの散歩をしましょう」
「ああ」
外へと首輪と手綱をつけたスケッシーを連れて奈々川さんと歩く。
「今日に藤元さんにお礼できますかね?」
奈々川さんが微笑んだ。
「ああ。多分くるんじゃないかな」
2回近所をぐるぐる、奈々川さんの家のところで待っていると、藤元が自転車で帰って来た。
「あ、藤元さん。ありがとうございました」
奈々川さんが、自転車を事務所兼マイホームに停めている藤元へと言った。
「へ……。僕、何かしたっけ?」
「B区の工場での殺人事件で人を生き返らしてくれたからさ。俺からもありがとう」
藤元は頭を掻いて、
「そんなに凄いことはしてないよ。ただ……今なら入団したら抽選で……」
「いや、入団はしたくはないんだ。今はね。ただお礼を言いたかっただけ」
「私もです」
藤元が泣いた。だが、こちらに向くと、
「名前なんて言うの? ていうか、何で工場の人たちを生き返らしたら僕にお礼をするんだ?」
涙を片手で拭いながら藤元が不思議がった。まだ、気が付いていないのだろう。犯人が私と島田なのを……。
「いや……いいことだなーって」
「ああ。僕はこの云話事町の治安の悪さを改めたいのさ。そういう宗教活動もしているんだよ。だって、銃を携帯していない人って、今の時代少ないでしょ?そんな世界だから、僕の力は必要だと思う。でも、僕の宗教に入ったらそれを強制するわけじゃない。あくまでも僕の個人的な宗教活動さ」
奈々川さんが感心して、
「私は奈々川 晴美です……。素晴らしいです。きっと、入団者はいっぱい集まるかと思います」
私も感心した。こいつはこいつで、この世の中を考えて自分の生き方を実行しているんだ。今の私は奈々川さんと二人で生き方を考えながら模索している。最初の段階だ。でも、生き方は見つかるのだろうか?
「俺は夜鶴 公。何でそんな凄い力があるんだ?」
藤元がいきなり背筋を伸ばし、
「生まれつきなんだ。小さい頃から馬鹿にされているけど……こんな僕でもきっと偉くなれると信じているんだ。君たちは……あれ?奈々川さん?」
私と奈々川さんが凍りついた。
「いや……よくある名前だろ?」
藤元が下を向いて、
「奈々川……奈々川 晴美……? 総理大臣の家出した娘って、どんな名だっけ? 聞いた時あったなー? 確か番組の放送の時に?」
「人違いですよ。藤元さん。それより今日の空は星空になりますか?」
奈々川さんがにっこりと話す。
「え……。ああ。多分ね。じゃ、おやすみ……」
私と奈々川さんがスケッシーの散歩を再開する。
しばらく、歩いて藤元の家から遠い場所へと着くと、
「ふー……。危なかったですね」
「ああ。冷や汗ものだね」
奈々川さんに涙と笑顔が浮かんだ。
「私。藤元さんが帰ってきたらお礼を言います」
奈々川さんが涙を拭いて明るく言った。
「ああ。でも……入団はしないでね」
「はい!」
…………
夕方になるとスケッシーが吠えた。散歩の時間だ。床から起き上がると、
「お早うございます。夜鶴さん。スケッシーの散歩をしましょう」
「ああ」
外へと首輪と手綱をつけたスケッシーを連れて奈々川さんと歩く。
「今日に藤元さんにお礼できますかね?」
奈々川さんが微笑んだ。
「ああ。多分くるんじゃないかな」
2回近所をぐるぐる、奈々川さんの家のところで待っていると、藤元が自転車で帰って来た。
「あ、藤元さん。ありがとうございました」
奈々川さんが、自転車を事務所兼マイホームに停めている藤元へと言った。
「へ……。僕、何かしたっけ?」
「B区の工場での殺人事件で人を生き返らしてくれたからさ。俺からもありがとう」
藤元は頭を掻いて、
「そんなに凄いことはしてないよ。ただ……今なら入団したら抽選で……」
「いや、入団はしたくはないんだ。今はね。ただお礼を言いたかっただけ」
「私もです」
藤元が泣いた。だが、こちらに向くと、
「名前なんて言うの? ていうか、何で工場の人たちを生き返らしたら僕にお礼をするんだ?」
涙を片手で拭いながら藤元が不思議がった。まだ、気が付いていないのだろう。犯人が私と島田なのを……。
「いや……いいことだなーって」
「ああ。僕はこの云話事町の治安の悪さを改めたいのさ。そういう宗教活動もしているんだよ。だって、銃を携帯していない人って、今の時代少ないでしょ?そんな世界だから、僕の力は必要だと思う。でも、僕の宗教に入ったらそれを強制するわけじゃない。あくまでも僕の個人的な宗教活動さ」
奈々川さんが感心して、
「私は奈々川 晴美です……。素晴らしいです。きっと、入団者はいっぱい集まるかと思います」
私も感心した。こいつはこいつで、この世の中を考えて自分の生き方を実行しているんだ。今の私は奈々川さんと二人で生き方を考えながら模索している。最初の段階だ。でも、生き方は見つかるのだろうか?
「俺は夜鶴 公。何でそんな凄い力があるんだ?」
藤元がいきなり背筋を伸ばし、
「生まれつきなんだ。小さい頃から馬鹿にされているけど……こんな僕でもきっと偉くなれると信じているんだ。君たちは……あれ?奈々川さん?」
私と奈々川さんが凍りついた。
「いや……よくある名前だろ?」
藤元が下を向いて、
「奈々川……奈々川 晴美……? 総理大臣の家出した娘って、どんな名だっけ? 聞いた時あったなー? 確か番組の放送の時に?」
「人違いですよ。藤元さん。それより今日の空は星空になりますか?」
奈々川さんがにっこりと話す。
「え……。ああ。多分ね。じゃ、おやすみ……」
私と奈々川さんがスケッシーの散歩を再開する。
しばらく、歩いて藤元の家から遠い場所へと着くと、
「ふー……。危なかったですね」
「ああ。冷や汗ものだね」
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