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エレクトリックダンス
エレクトリックダンス 5
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「お! 起きた!! 起きた!!」
原田の声だ。
「雷蔵さーん。朝ですよー」
原田は陽気な声を発している。
どうやら、僕は一命を取り留めたのだろう。
ゆっくりと目を開けると、そこには原田と九尾の狐。そして、生き返っている河守がいた。白い病室の中だった。
「ハッピバースデー・トゥユー。ハッピバースデー・トゥユー」
九尾の狐が歌っている。
「ハッピバースデー・トゥユー。ハッピバースデー・トゥユー」
河守が歌っている。
「ハッピバースデー。雷蔵さん」
原田が手に持っていた赤いロウソクがたったケーキを差し出した。
「…………」
僕の体は少しも動かなかった。
誕生日なんて、誰にも祝ってもらった時がない。それに、確か僕の誕生日は2月のはずだった。
あれ?
「そうか……これは……夢か……」
「雷蔵様~~。大丈夫ですか~~」
ヨハの声が聞こえる。
僕は夢から覚めた。
辺りを見回すと、ヨハ以外に誰もいない真っ白な病室だった。外は豪雨と強風が激しく窓を叩いていた。
「酷かったんですよ~~。4日間もお眠りしていて~~左足と左腕と右足~~。そして~、お腹に計6発も撃たれてあったので~~すよ」
「僕は今、起きているのかな?」
僕はまだ夢を見ているのだろうか?
ヨハに確認すると、ヨハは首を傾げて、
「はい、雷蔵様は起きていますよ~~」
「みんなは?」
すると、ヨハの可愛らしい顔が曇った。
「酷かったです~。みんな死んでしまいました~。ノウハウは~全てアンジェとマルカが破壊しましたが~~、被害が大きかったので~……」
「え?……藤元は?」
ヨハが俯いた。
「藤元様は今現在~行方不明です~~……」
僕の頭が再び激怒の炎によって、燃え盛る。
「ヨハ! アンジェとマルカを呼んでくれ!! C区と戦争だーーー!!」
僕はなりふり構わずに叫んでしまっていた。
この感情は一体何なのか、と……僕は考えることもしなかった。
「了解で~~す!!」
白の壁にあるテレビでは云話事町TVがやっていた。
「おはようです!! 云・話・事・町TVです!!」
美人のアナウンサーの背景にはボロボロになったA区の青緑荘と周辺が見える。所々煙が立ち上り、ブルーシートが至る所に被さっている。
周囲の人たちは誰もいなかった。
「見てください!! この惨状!! 悲惨さ!! A区の左辺部青緑荘が壊滅状態です!! 死者80名です!!」
美人のアナウンサーはピンクのマイクを力強く握る。
「警察の調べで解ったことは、全部のノウハウの頭のプロフィールデータが壊れていることだけです!! 製造元も解らなくて証拠も無いようです!! まるで35年前の戦争のようですね!!」
美人のアナウンサーが、何者かに町をめちゃくちゃにされて、さすがに怒っていた。
更に吠えている。
「それに、藤元が何故か行方不明です!! 藤元!! さっさと帰って来い!! みんなを生き返らせろ! この鼻毛ーーー!!」
美人のアナウンサーは、少し気を落ち着かせると、
「そういえば、生放送でしたね………よい子の皆さんは聞かなかったことにしてください……」
美人のアナウンサーが落ち着いて話し出した。
「やったのは、C区のはずです。うちの藤元がいなくなる直前にボヤいていたので……」
美人のアナウンサーはピンクのマイクを握ると、一つ咳払いをした。
「……コホン。それと、これもいなくなる直前の藤元が言ってたんですが……。というかゲロさせたんですが……。あの日本屈指の大金持ちの矢多辺 雷蔵さんが日本初の軍事用アンドロイド三体とC区と交戦中だったようです。私は憤ります……重大なことを今まで話してくれなかった藤元にマイクを、ブッ刺したいです……」
藤元がいないので、美人のアナウンサーは一人でマイクを持っている。背景には無残になった青緑荘が写っていた。
「矢多辺 雷蔵氏は昔はハイブラウシティ・Bで、日本を窮地に陥れようとした人物ですが、今となっては日本の救世主になるかも知れません。そう藤元が言っていました。何が起きているのかはさっぱり解りませんが。番組はその雷蔵様を(私だけ)応援しているッス!」
美人のアナウンサーはマイク片手にウインクをすると、
「きっと、今度の雷蔵様は日本のために戦ってくれるはずです……」
番組はそこで終わった……。
アンジェとマルカが云話事・仁田・クリニックに着いた。
僕は大量の痛み止めと止血剤を買って、そうそうに病院を後にした。時折、塞がっているはずの傷が痛くてふらつくが、頭に突き刺さるかのようなその熱は、僕に冷静さや理性を一切与えなかった。
豪雨と強風の中。
ヨハが心配してついてきた。
病院の駐車場で、後ろからびしょびしょの僕を抱きしめた。
「雷蔵様~~。命を無駄にしてはいけませ~~ん」
「平気だ」
「雷蔵様はお休みしていてください。C区は私たちだけで壊滅してみせます」
アンジェ。
「雷蔵様は治療を受けながら、私たちを見送ってください」
マルカ。
「いや……いいんだ」
僕はどうしても重要なことは、自分が立ち会わなければならない性格とは別に、何かが、激しすぎるものが勝手に僕を突き動かしていた。
拳銃のマカロフにアサルトライフル。グレネードが数個。アンジェたちはロケットランチャーにアサルトライフルを携え、弾丸や弾薬の多さは、この町一つを楽に潰せるほどだった。
警察では強力なアンドロイドが不正や危険なことを行っても、製造元が解らない場合。プログラムを書き換えたりするだけで、どうしようもないのが今の時代だ。アンドロイドと協力するにはやっぱりそれなりのリスクがあるのだろう。
僕はアンジェが乗ってきた修理された黄色のランボルギーニに乗った。ヨハが助手席に俯きがちにドアを開けて座った。アンジェとマルカは4座席のランボルギーニ・ポルトフィーノに乗り込む。アンジェたちも心配していたが、潔く車に乗り込んだようだ。
4座席のポルトフィーノと黄色のランボルギーニのエストーケの後部座席には、超重量の弾薬や弾丸が置かれていた。
「雷蔵様~~」
「さあ、行こう」
僕はヨハの頭を撫でてC区へと向かった。
原田の声だ。
「雷蔵さーん。朝ですよー」
原田は陽気な声を発している。
どうやら、僕は一命を取り留めたのだろう。
ゆっくりと目を開けると、そこには原田と九尾の狐。そして、生き返っている河守がいた。白い病室の中だった。
「ハッピバースデー・トゥユー。ハッピバースデー・トゥユー」
九尾の狐が歌っている。
「ハッピバースデー・トゥユー。ハッピバースデー・トゥユー」
河守が歌っている。
「ハッピバースデー。雷蔵さん」
原田が手に持っていた赤いロウソクがたったケーキを差し出した。
「…………」
僕の体は少しも動かなかった。
誕生日なんて、誰にも祝ってもらった時がない。それに、確か僕の誕生日は2月のはずだった。
あれ?
「そうか……これは……夢か……」
「雷蔵様~~。大丈夫ですか~~」
ヨハの声が聞こえる。
僕は夢から覚めた。
辺りを見回すと、ヨハ以外に誰もいない真っ白な病室だった。外は豪雨と強風が激しく窓を叩いていた。
「酷かったんですよ~~。4日間もお眠りしていて~~左足と左腕と右足~~。そして~、お腹に計6発も撃たれてあったので~~すよ」
「僕は今、起きているのかな?」
僕はまだ夢を見ているのだろうか?
ヨハに確認すると、ヨハは首を傾げて、
「はい、雷蔵様は起きていますよ~~」
「みんなは?」
すると、ヨハの可愛らしい顔が曇った。
「酷かったです~。みんな死んでしまいました~。ノウハウは~全てアンジェとマルカが破壊しましたが~~、被害が大きかったので~……」
「え?……藤元は?」
ヨハが俯いた。
「藤元様は今現在~行方不明です~~……」
僕の頭が再び激怒の炎によって、燃え盛る。
「ヨハ! アンジェとマルカを呼んでくれ!! C区と戦争だーーー!!」
僕はなりふり構わずに叫んでしまっていた。
この感情は一体何なのか、と……僕は考えることもしなかった。
「了解で~~す!!」
白の壁にあるテレビでは云話事町TVがやっていた。
「おはようです!! 云・話・事・町TVです!!」
美人のアナウンサーの背景にはボロボロになったA区の青緑荘と周辺が見える。所々煙が立ち上り、ブルーシートが至る所に被さっている。
周囲の人たちは誰もいなかった。
「見てください!! この惨状!! 悲惨さ!! A区の左辺部青緑荘が壊滅状態です!! 死者80名です!!」
美人のアナウンサーはピンクのマイクを力強く握る。
「警察の調べで解ったことは、全部のノウハウの頭のプロフィールデータが壊れていることだけです!! 製造元も解らなくて証拠も無いようです!! まるで35年前の戦争のようですね!!」
美人のアナウンサーが、何者かに町をめちゃくちゃにされて、さすがに怒っていた。
更に吠えている。
「それに、藤元が何故か行方不明です!! 藤元!! さっさと帰って来い!! みんなを生き返らせろ! この鼻毛ーーー!!」
美人のアナウンサーは、少し気を落ち着かせると、
「そういえば、生放送でしたね………よい子の皆さんは聞かなかったことにしてください……」
美人のアナウンサーが落ち着いて話し出した。
「やったのは、C区のはずです。うちの藤元がいなくなる直前にボヤいていたので……」
美人のアナウンサーはピンクのマイクを握ると、一つ咳払いをした。
「……コホン。それと、これもいなくなる直前の藤元が言ってたんですが……。というかゲロさせたんですが……。あの日本屈指の大金持ちの矢多辺 雷蔵さんが日本初の軍事用アンドロイド三体とC区と交戦中だったようです。私は憤ります……重大なことを今まで話してくれなかった藤元にマイクを、ブッ刺したいです……」
藤元がいないので、美人のアナウンサーは一人でマイクを持っている。背景には無残になった青緑荘が写っていた。
「矢多辺 雷蔵氏は昔はハイブラウシティ・Bで、日本を窮地に陥れようとした人物ですが、今となっては日本の救世主になるかも知れません。そう藤元が言っていました。何が起きているのかはさっぱり解りませんが。番組はその雷蔵様を(私だけ)応援しているッス!」
美人のアナウンサーはマイク片手にウインクをすると、
「きっと、今度の雷蔵様は日本のために戦ってくれるはずです……」
番組はそこで終わった……。
アンジェとマルカが云話事・仁田・クリニックに着いた。
僕は大量の痛み止めと止血剤を買って、そうそうに病院を後にした。時折、塞がっているはずの傷が痛くてふらつくが、頭に突き刺さるかのようなその熱は、僕に冷静さや理性を一切与えなかった。
豪雨と強風の中。
ヨハが心配してついてきた。
病院の駐車場で、後ろからびしょびしょの僕を抱きしめた。
「雷蔵様~~。命を無駄にしてはいけませ~~ん」
「平気だ」
「雷蔵様はお休みしていてください。C区は私たちだけで壊滅してみせます」
アンジェ。
「雷蔵様は治療を受けながら、私たちを見送ってください」
マルカ。
「いや……いいんだ」
僕はどうしても重要なことは、自分が立ち会わなければならない性格とは別に、何かが、激しすぎるものが勝手に僕を突き動かしていた。
拳銃のマカロフにアサルトライフル。グレネードが数個。アンジェたちはロケットランチャーにアサルトライフルを携え、弾丸や弾薬の多さは、この町一つを楽に潰せるほどだった。
警察では強力なアンドロイドが不正や危険なことを行っても、製造元が解らない場合。プログラムを書き換えたりするだけで、どうしようもないのが今の時代だ。アンドロイドと協力するにはやっぱりそれなりのリスクがあるのだろう。
僕はアンジェが乗ってきた修理された黄色のランボルギーニに乗った。ヨハが助手席に俯きがちにドアを開けて座った。アンジェとマルカは4座席のランボルギーニ・ポルトフィーノに乗り込む。アンジェたちも心配していたが、潔く車に乗り込んだようだ。
4座席のポルトフィーノと黄色のランボルギーニのエストーケの後部座席には、超重量の弾薬や弾丸が置かれていた。
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「さあ、行こう」
僕はヨハの頭を撫でてC区へと向かった。
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