ご近所STORYⅡ エレクトリックダンス【改訂版】

主道 学

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老人福祉の将来性

未来へ 3

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「おーっと、スリーワイド!!」
 竹友はマイクを握り、
「これは難易度が高い!!」
「ええ、これは難しいですね。私なら、様子を見るか。どちらかが先頭を走ればその車に優先権がありますが、相手はノウハウのBチームですからね」

 そうこうしているうちに、後ろを走っている流谷がコースアウトした。
 Cチームの10tトラックがぶつけてきたからだ。
 流谷は止む無く車から降りて、スカイラインGTRを押してコーナーに入ろうとする。
 その時、後方からもう一台の10tトラックが迫って来た。

「あ!! 轢かれました!!」
 竹友が悲壮感漂う言葉を残して、立ち上がった。
「死者がでてしまいましたね……この勝負。駄目でしょう……」
 斉藤は空を飛ぶ人物を目撃した。
 その人物は流谷の袂に降りると、神社なんかでお祓いに使う棒を振り回した。倒れていた流谷が何事もなく起き上がった。
「え!!」
 竹友はさっきより真っ青になって、マイクを握りしめた。
「信じられません!! 流谷選手が生き返りました!!」
 斉藤もぶるぶると震えて、
「何が起きているのでしょう……」
 
 流谷は再びスカイラインGTRを藤元と押して、なんとかレコードラインに入った。
「頑張ってね!!」
 藤元は神社なんかでお祓いに使う棒を振り、応援した。
「はい!! 妻の梨々花のために頑張ります!!」
 流谷はすぐ目の前のコーナーを猛スピードで走り出した。

 僕は未だスリーワイドから抜け出せずにいた。じりじりしそうだが、昔の僕の冷静さを保持し、相手の動きを観察した。
 コーナーが迫って来た。
 僕は横一台の車に体当たりをして、派手なドリフトをした。

「あっーと!! 雷蔵選手、体当たりとドリフトでスリーワイドを抜け!! 先頭のカナソニックスカイライも抜いた!!」
 竹友が信じられないといった顔で、斉藤と目を合わす。
「ええ……。信じられません……。人間には無理な冷静さですね」
「おや? 田場選手と島田選手は猛スピードでストレートを未だ走り続けていますね」
 竹友は首を傾げた。
「あ、そうか?! 相手の車を寄せ付けないのではなくて、体当たりで追い払っているのでしょう」
 斉藤は愕然として言葉を放った。

 2週目。
 広いレーシング場を走るのは後、後4週までになった。
 僕は河守のために走っていた。
 そう。A区のためにだ。
 昔の僕が陥れようとした場所を、今度は全力で守ろうとしている。運命とは皮肉といえるのが普通なのだろうか。
 晴美さんが好きだった。
 昔からだ。
 だけど、僕はいつの間にか河守が好きになっていた。
 何故だろうか?
 車が出せる最大限の猛スピードを、ストレートで振り絞る。僕の前方には誰もいない。その瞬間、僕だけが走るレースのショーをしている感じが、錯覚だけれど、していたんだ。
 風の音も歓声の音もエンジンの音も、僕だけのものだ。

「興田君。例のものを……」
 角竹のしわがれ声は震えていた。
 この大歓声の中で、現奈々首相を暗殺してしまえば、いくら茶番で勝っても意味がないのだ。
「ええ……。解りました」
 興田の声はしっかりとしている。息子のためにとこれまで、努力を惜しまなかった父としての最後の花向けなのだろう。
「父さん。俺にやらせてくれ」
 道助は応援席にいるアンドロイドのノウハウ数体に合図を送った。

「晴美様!! 何か来ます!!」
 アンジェが晴美の体を守るために、押し倒した。
 その瞬間に、派手な音の後に今まで晴美さんがいた床に大きな穴が開いた。
「アンジェ!! まだよ!!」
 マルカがマシンピストルを応援席にいるノウハウの一体に向かって撃とうとしたら、
「待って!!」
 九尾の狐が小型の端末を目にも止まらない速度で、打った。
 遥か遠くの応援席のノウハウ数体が、武器を投げ合いお辞儀をしたり、故障したかのようなダンスを踊り出した。
 真っ青になっていた観客はこれもショーの一部と勘違いして、大歓声を送った。
「妨害用プログラムをノウハウたちにインストールしたわ。世界最強の妨害プログラム。キマイラの首輪よ」
 九尾の狐はにこやかにほほ笑んだ。

「……」
 興田は唖然とした。
 ダンスを踊っているノウハウには、高度の暗殺プログラムがインストールされていて、絶対にハッキングが出来ないはずなのだ。
「父さん……。仕方ないから、レースで勝つしかないかも知れないぜ」
 道助も唖然として、無表情の顔からそんな言葉が力なく口から漏れ出した。
 角竹は皮肉を言いたい気持ちを極力抑えた。
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