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人間としての未来へ
未来へ 4
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「藤元!! 現奈々川首相のところへ行け!! 番組は私に任せろ!! 絶対いいところだけを中継してやる!!」
美人のアナウンサーは護衛に藤元を向かわせる。
「ハイっす!! 頑張ってね!!」
藤元は空を飛んで、晴美さんがいる応援席の一角に向かった。
3週目。
原田と淀川と山下と津田沼はまだ、2週目だ。
コントロールラインまで、相手のノウハウの妨害に四苦八苦していた。
全長12メートルのトレーラーは、かなり改造されていて、時速300キロはでる。10tトラックもそう。原田はあくせくしていた。
死ぬ思いで体当たりをするか、死ぬ思いで間を走り抜けるか。スリーワイドの挟まれた状態で考えた。
「藤元さん。すまん。また御厄介になります!!」
原田はアクセルを踏み切った。
時速320キロで象の間を走り抜ける。
相手は象だ。
こちら側に近寄ってきた。
原田は目を瞑ったが、いきなり落雷が落ちた。
落雷は両脇の全長12メートルのトレーラー二台と10tトラックに直撃し、燃え上がると横転していった。
空には藤元が手を振っていた。
淀川と山下もアクセルを踏み切ってストレートを走り出した。
広瀬と流谷と遠山は3週目だ。
フェラーリ F12ベルリネッタとリーボックスカイラインのノウハウたちと戦っていた。コーナーの手前、遠山は上級ドリフトをし、流谷と広瀬は素早くカーブをしインした。
ストレートで三人はアクセルを踏み切った。
だが、フェラーリ F12ベルリネッタはその速さで遠山たちを追い抜いてしまった。
「あ!! 凄いスピードですね!! ノウハウの乗ったフェラーリ F12ベルリネッタ!」
竹友は愕然とした。
「ええ。……時速380キロですから……」
斉藤が真っ青になった。
「時速380キロですか!?」
竹友も青い顔をする。
「C区の改造技術とノウハウのプログラムは侮れませんね」
斉藤の目線はフェラーリ F12ベルリネッタに釘づけになった。
僕は風だけを感じているだけではなかった。
多くのプレッシャーも感じていた。
先頭を走るにはそのようなものも背負わなければならない。
後続のノウハウの乗ったスカイラインが二台。
このままの調子で、走り抜けられるだろうか?
「おーっと、雷蔵選手の後からフェラーリF12ベルリネッタとトミカスカイラインターボが迫ってきましたね」
竹友が驚く。
「ええ、時速390キロですね」
斉藤はそう言うと、ストップウオッチを見た。速さ・時間・距離を頭で計算した。
「もうそろそろです……」
斉藤は呟いた。
僕の前を二台が追い抜いた。
フェラーリ F12ベルリネッタとトミカスカイラインターボだ。ランボルギーニ・エストーケの性能を一時上回ったのだ。
今はストレートで時速380キロを振り絞っているのだが……。
僕はアクセルを踏みきり、テール・トゥ・ノーズを仕掛ける。前方の二番目のトミカスカイラインターボの後ろにピッタリとくっつくことだ。フェラーリ F12ベルリネッタは一番前を走っている。
テール・トゥ・ノーズでは相手にプレッシャーを与えて、ミスを誘発する方法だ。インに車を(フェイントだが)振る仕草をし、相手がブロックラインをとった後アウトをそのまま走る。
ノウハウがブロックラインをとった。フェイントが効いた。
僕は時速390キロでアウトを走った。
「雷蔵さん……。頑張ってください」
晴美さんは、先が見えない悪戦苦闘の最中、不安な心を落ち着かせた。
このレースは3年前の野球よりも難しい。
何故なら、相手は自動車に乗ったノウハウだからだ。
自動車の性能とノウハウの性能と戦わなければならない。
「晴美様~~。大丈夫ですから~~」
ヨハは晴美さんに向かってにっこり微笑んだ。
応援席では人々はこのレースに誰もが熱狂しているが、日本の将来のことを考えている人は少なかった。
藤元が空からやってきた。
「晴美さん。やってきましたよ」
藤元は神社なんかでお祓いに使う棒を振り、おまじないをした。
「身辺警護は、これで大丈夫。でも、僕もここにいるね」
藤元はそう言うと、応援席からかなり離れた場所にいる美人のアナウンサーに手を振った。
「藤元がオッケーです!! 何のことか解らない人ごめんなさい……」
美人のアナウンサーはピンクのマイク片手に頭を下げる。
「さあ、後3周でこの勝負が決まりますね……」
美人のアナウンサーも緊張してきたようだ。
「うーん。日本の将来がかかっているんだけど、それでも負けるよりは勝ちたい!! そんな気持ちですね。 今までの走りっぷりからみんなの苦労が水の泡なんて考えたくないじゃいですか……。でも、みんなは日本の将来のために走っているんですよね。以上、私だけの感想でした」
4周目。
僕の前には未だフェラーリ F12ベルリネッタがいた。
なんとか追い越さなければならない。冷静さを削るほどのプレッシャーを感じたとき、河守が僕の中で笑った。
心地よい笑いで、僕の口にも自然と笑みが感染した。
僕はコーナーが迫って来たが、微笑んでいた。
アクセルをハーフアクセルにした。文字通りアクセルを半分だけ踏むことだ。減速をして、コーナーでインした。
相手のフェラーリ F12ベルリネッタも僅かに減速した。
だが、ブレーキング速度がほんの僅か遅らせていた。タイム短縮の手段だが、僕はカーブのところで速度を振り絞った。
フェラーリ F12ベルリネッタはアウト側だが、イン側の僕と並んだ。
フェラーリ F12ベルリネッタがアンダーステアを起こした。アンダーステアとは、車がハンドルを切っても思うより曲がらないことだ。
スローイン・ファストアウト。
コーナーの出口は当然、ストレートだ。
だから、初速をいかに上げるかが勝負だ。
僕はコーナーから出ると、初速を上げた。
美人のアナウンサーは護衛に藤元を向かわせる。
「ハイっす!! 頑張ってね!!」
藤元は空を飛んで、晴美さんがいる応援席の一角に向かった。
3週目。
原田と淀川と山下と津田沼はまだ、2週目だ。
コントロールラインまで、相手のノウハウの妨害に四苦八苦していた。
全長12メートルのトレーラーは、かなり改造されていて、時速300キロはでる。10tトラックもそう。原田はあくせくしていた。
死ぬ思いで体当たりをするか、死ぬ思いで間を走り抜けるか。スリーワイドの挟まれた状態で考えた。
「藤元さん。すまん。また御厄介になります!!」
原田はアクセルを踏み切った。
時速320キロで象の間を走り抜ける。
相手は象だ。
こちら側に近寄ってきた。
原田は目を瞑ったが、いきなり落雷が落ちた。
落雷は両脇の全長12メートルのトレーラー二台と10tトラックに直撃し、燃え上がると横転していった。
空には藤元が手を振っていた。
淀川と山下もアクセルを踏み切ってストレートを走り出した。
広瀬と流谷と遠山は3週目だ。
フェラーリ F12ベルリネッタとリーボックスカイラインのノウハウたちと戦っていた。コーナーの手前、遠山は上級ドリフトをし、流谷と広瀬は素早くカーブをしインした。
ストレートで三人はアクセルを踏み切った。
だが、フェラーリ F12ベルリネッタはその速さで遠山たちを追い抜いてしまった。
「あ!! 凄いスピードですね!! ノウハウの乗ったフェラーリ F12ベルリネッタ!」
竹友は愕然とした。
「ええ。……時速380キロですから……」
斉藤が真っ青になった。
「時速380キロですか!?」
竹友も青い顔をする。
「C区の改造技術とノウハウのプログラムは侮れませんね」
斉藤の目線はフェラーリ F12ベルリネッタに釘づけになった。
僕は風だけを感じているだけではなかった。
多くのプレッシャーも感じていた。
先頭を走るにはそのようなものも背負わなければならない。
後続のノウハウの乗ったスカイラインが二台。
このままの調子で、走り抜けられるだろうか?
「おーっと、雷蔵選手の後からフェラーリF12ベルリネッタとトミカスカイラインターボが迫ってきましたね」
竹友が驚く。
「ええ、時速390キロですね」
斉藤はそう言うと、ストップウオッチを見た。速さ・時間・距離を頭で計算した。
「もうそろそろです……」
斉藤は呟いた。
僕の前を二台が追い抜いた。
フェラーリ F12ベルリネッタとトミカスカイラインターボだ。ランボルギーニ・エストーケの性能を一時上回ったのだ。
今はストレートで時速380キロを振り絞っているのだが……。
僕はアクセルを踏みきり、テール・トゥ・ノーズを仕掛ける。前方の二番目のトミカスカイラインターボの後ろにピッタリとくっつくことだ。フェラーリ F12ベルリネッタは一番前を走っている。
テール・トゥ・ノーズでは相手にプレッシャーを与えて、ミスを誘発する方法だ。インに車を(フェイントだが)振る仕草をし、相手がブロックラインをとった後アウトをそのまま走る。
ノウハウがブロックラインをとった。フェイントが効いた。
僕は時速390キロでアウトを走った。
「雷蔵さん……。頑張ってください」
晴美さんは、先が見えない悪戦苦闘の最中、不安な心を落ち着かせた。
このレースは3年前の野球よりも難しい。
何故なら、相手は自動車に乗ったノウハウだからだ。
自動車の性能とノウハウの性能と戦わなければならない。
「晴美様~~。大丈夫ですから~~」
ヨハは晴美さんに向かってにっこり微笑んだ。
応援席では人々はこのレースに誰もが熱狂しているが、日本の将来のことを考えている人は少なかった。
藤元が空からやってきた。
「晴美さん。やってきましたよ」
藤元は神社なんかでお祓いに使う棒を振り、おまじないをした。
「身辺警護は、これで大丈夫。でも、僕もここにいるね」
藤元はそう言うと、応援席からかなり離れた場所にいる美人のアナウンサーに手を振った。
「藤元がオッケーです!! 何のことか解らない人ごめんなさい……」
美人のアナウンサーはピンクのマイク片手に頭を下げる。
「さあ、後3周でこの勝負が決まりますね……」
美人のアナウンサーも緊張してきたようだ。
「うーん。日本の将来がかかっているんだけど、それでも負けるよりは勝ちたい!! そんな気持ちですね。 今までの走りっぷりからみんなの苦労が水の泡なんて考えたくないじゃいですか……。でも、みんなは日本の将来のために走っているんですよね。以上、私だけの感想でした」
4周目。
僕の前には未だフェラーリ F12ベルリネッタがいた。
なんとか追い越さなければならない。冷静さを削るほどのプレッシャーを感じたとき、河守が僕の中で笑った。
心地よい笑いで、僕の口にも自然と笑みが感染した。
僕はコーナーが迫って来たが、微笑んでいた。
アクセルをハーフアクセルにした。文字通りアクセルを半分だけ踏むことだ。減速をして、コーナーでインした。
相手のフェラーリ F12ベルリネッタも僅かに減速した。
だが、ブレーキング速度がほんの僅か遅らせていた。タイム短縮の手段だが、僕はカーブのところで速度を振り絞った。
フェラーリ F12ベルリネッタはアウト側だが、イン側の僕と並んだ。
フェラーリ F12ベルリネッタがアンダーステアを起こした。アンダーステアとは、車がハンドルを切っても思うより曲がらないことだ。
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コーナーの出口は当然、ストレートだ。
だから、初速をいかに上げるかが勝負だ。
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