五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ

文字の大きさ
247 / 387

第247話:王女の夜、そして白百合の決意

しおりを挟む
 エルドリアの新しい王都は、アキオたちの来訪と、二人の王女の出産という吉報に、復興への新たな希望で満ち溢れていた。アキオ一行は、クリストフ王子の強い勧めで、数日間この地に滞在することになった。

 その夜、アキオはセレスティーナの私室へと招かれた。昼間、母親として子供たちに愛情を注ぐ彼女の姿も美しいが、今、ランプの灯りに照らし出されたその姿に、アキオは息をのんだ。
 彼女が身にまとっていたのは、エルドリア王家に伝わる、優雅で気品あふれる正装のドレスだった。煌びやかな絹の生地、胸元に輝く王家の紋章の刺繍。それは、彼女がただの母親ではなく、一つの国の未来を背負う、誇り高き王女であることを、改めてアキオに強く認識させた。
「アキオ様…今宵は、エルドリアの王女としてではなく、ただ一人の、貴方を愛する女として、お迎えいたします」
 その言葉とは裏腹に、彼女のその神々しいまでの姿は、アキオの心の奥底に眠っていた、ある種の征服欲と、そして高貴なものへの憧憬を激しく掻き立てた。
 その夜の二人の盛り上がりは、儀式的で、そしてどこまでも官能的だった。アキオは、一国の王女をその腕に抱いているという背徳的なまでの喜びに打ち震え、セレスティーナもまた、愛する男に全てを支配される悦びに、その身を委ねた。

 しかし、情熱の頂点を迎えた後、セレスティーナは、アキオの瞳の奥に、まだ満たされぬ炎が揺らめいているのを見逃さなかった。彼女は、聖母のような笑みを浮かべると、そっとアキオの耳元で囁いた。
「アキオ様…このドレスでは、少し窮屈ですわね」
 彼女は立ち上がると、隣の部屋から、もう一着のドレスを持ってきた。それは、かつては美しかったであろうが、戦火の中で所々が焼け焦げ、裾がほつれた、捨てる直前のドレスだった。
「これならば、アキオ様が、そしてわたくしが、どれほど乱暴に愛し合っても、もう誰も悲しむことはありませんわ」
 その言葉は、アキオの最後の理性を吹き飛ばした。
 彼女がそのドレスに着替えた瞬間、二人の営みは、野生の獣のような、全てを解き放った激しいものへと変貌した。ドレスが破れる音、熱い吐息、そして互いの名を呼び合う声だけが、部屋に響き渡る。それは、国の再興という重責を忘れた、ただの男と女の、純粋な欲望の爆発だった。

 その頃、王宮の別の客間では、レオノーラ、凛、そしてクラウディアが、静かにお茶を飲んでいた。
「セレスティーナ様も、アキオ殿の腕の中で、ようやく心からの安らぎを得られたことでしょう」
 レオノーラが、主君を想い、安堵のため息をつく。
「ええ。アキオ様は、本当に不思議な方。あの方の隣にいると、凍てついた心さえも、解かされていくようですわ」
 凛は、自らの経験を重ねるように、遠い目をして呟いた。
 クラウディアは、そんな二人の様子を、興味深そうに見つめていた。
「お二人とも、すっかり村長様に夢中ですのね。まあ、わたくしも、あの方の知性と器の大きさには、日々驚かされてばかりですけれど」
 三人の才媛は、それぞれの立場から、アキオという一人の男について語り合う。その会話は、彼女たちの間に、種族や身分を超えた、一人の女性としての、そしてアキオを支える仲間としての、新しい親交を生み出していた。

 翌朝、アキオの腕の中で目覚めたセレスティーナの表情は、これまでにないほど晴れやかで、そして満ち足りたものだった。
 そして、その次の夜は、レオノーラとアキオの夜となることを、皆が、そして何よりもレオノーラ自身が、静かな期待と共に予感していた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。 「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流
ファンタジー
勇者パーティを追放されたおっさん冒険者ガリウス・ノーザン37歳。 しかし彼を追放した筈のメンバーは実はヤバいほど彼を慕っていて…… テンプレ的な展開を逆手に取ったコメディーファンタジーの連載版です。

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

処理中です...