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第297話:聖樹の恵み、そして北への隊列
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アキオの町を出発した二台の魔導車——虹色の輝きを放つ最新型の『流星』と、屈強な『力王』——は、聖域街道の未舗装区間を、土埃を上げながら、力強く北へと進んでいた。王家との会談という、聖域の未来を左右する大きな目的を前に、車内には、程よい緊張感と、そして、家族と共にあるという、温かな空気が満ちていた。
一行は、まず、かつて「生命力の暴走」が起きていた、森の主の跡地へと立ち寄った。
魔導車を降りた瞬間、妻たちから、感嘆のため息が漏れた。そこは、もはや、ただの森ではない。神聖樹『アルクス・ヴィリディス』を中心に、清浄で、そして穏やかな、圧倒的な生命のオーラに満ちた、本物の「聖域」へと変貌していたのだ。
「まあ…素晴らしいですわ、アキオ。貴方の力が、そして、わたくしたちの想いが、このような奇跡を生んだのですね」
シルヴィアが、うっとりと、その神聖な空気に身を浸す。
アキオが、アルクス・ヴィリディスの麓へと、静かに歩み寄った、その時だった。神聖樹の枝が、まるでアキオを歓迎するかのように、そっと揺らめいた。そして、その根元から、光る苔に包まれた、数本の新しい苗木と、輝く種子が入った革袋を、アキオの前に、そっと差し出すのであった。
「これは…!」
アキオが、その苗木を手に取ると、シルヴィアが、その力を鑑定した。
「アキオ…これは、あの日貴方が授かった『神聖なる実』程の力はありませんが、それでも、このアルクス・ヴィリディスの、強大な生命力を受け継いだ、特別な苗木ですわ。これを植えれば、その土地は、時間をかけて、豊かな聖域へと変わっていくでしょう」
アキオは、その苗木と種子を、丁重に受け取った。
(…子爵、侯爵…そして、侯爵領の先には、王都か。この種は、そのために、アルクス・ヴィリディスが、俺に託してくれたのかもしれんな…)
アキオは、いずれ、王都にも、この聖域の恵みを届けねばならない日が来ることを、静かに、しかし、はっきりと予感するのだった。
一行は、再び魔導車に乗り込み、ヴァルト(新)侯爵の領地へと向かった。
都に到着すると、アレクサンダー侯爵は、一行を、英雄として、領民を挙げて、熱狂的に出迎えた。
「アキオ殿! よくぞ、お越しくださった! 旅の疲れを、まずは癒やしてほしい」
その夜、一行は、城で一泊し、つかの間の休息を取った。
翌日、子爵は、一行を、自領の「小さな聖域」へと案内した。そこでは、生命樹の若木が、アルクス・ヴィリディスほどではないにせよ、力強く根を張り、周囲を清浄な気で満たしていた。
そして、その若木の麓で、一頭の、角が生えたばかりの、子鹿のような、新しい聖獣が、無邪気に戯れている。
アウロラは、その光景に、聖母のように微笑んだ。
「聖獣は、その土地の生命樹の『子』であり、その土地の『願い』を映す鏡。この子が、これほど穏やかであるということは、ヴァルト様の統治が、民に安らぎを与えている、何よりの証ですわ」
一方、キナは、その聖獣に、ためらうことなく近づくと、その匂いを嗅ぎ、そして、力強く、しかし優しく、その首筋を撫でてやった。
「へっ、こいつは、うちの奴らとは、少し性質が違うみてえだな。ここの土地の気を受けて、おっとりした性格に育ってる。だが、いざという時の力は、本物だぜ。良い守り手になるだろうよ」
二人の妻の、それぞれの視点からの言葉は、ヴァルト侯爵に、聖域との絆の深さを、改めて感じさせた。
そして、旅立ちの朝。
城門の前には、アキオたちの二台の魔導車と、そして、ヴァルト侯爵が自ら乗り込む、真新しい『天馬』の姿があった。
「アキオ殿。ここから先のスタンフィールド公爵領は、私の領地とはまた違う、独自の慣習と、複雑な力関係がある。この旅、案内役として、私と、この『天馬』も同行させてはくれまいか」
アキオは、その心強い申し出を、喜んで快諾した。
こうして、アキオの『流星』と『力王』、そしてヴァルト侯爵の『天馬』。三台の魔導車が、威風堂々とした隊列を組み、最終目的地である、スタンフィールド公爵領を目指し、北へと出発した。
その旅路は、特に大きなトラブルもなく、驚くほど、穏やかなものだった。それは、二台の魔導車の圧倒的な存在感と、そして、アルクス・ヴィリディスの誕生によって、この地域の森や魔物たちの力関係が、既に、聖域に有利な形へと、静かに、しかし確実に、塗り替えられ始めていたからかもしれない。
聖域の一行は、今、歴史の表舞台へと、その歩みを、確かに進めていた。
一行は、まず、かつて「生命力の暴走」が起きていた、森の主の跡地へと立ち寄った。
魔導車を降りた瞬間、妻たちから、感嘆のため息が漏れた。そこは、もはや、ただの森ではない。神聖樹『アルクス・ヴィリディス』を中心に、清浄で、そして穏やかな、圧倒的な生命のオーラに満ちた、本物の「聖域」へと変貌していたのだ。
「まあ…素晴らしいですわ、アキオ。貴方の力が、そして、わたくしたちの想いが、このような奇跡を生んだのですね」
シルヴィアが、うっとりと、その神聖な空気に身を浸す。
アキオが、アルクス・ヴィリディスの麓へと、静かに歩み寄った、その時だった。神聖樹の枝が、まるでアキオを歓迎するかのように、そっと揺らめいた。そして、その根元から、光る苔に包まれた、数本の新しい苗木と、輝く種子が入った革袋を、アキオの前に、そっと差し出すのであった。
「これは…!」
アキオが、その苗木を手に取ると、シルヴィアが、その力を鑑定した。
「アキオ…これは、あの日貴方が授かった『神聖なる実』程の力はありませんが、それでも、このアルクス・ヴィリディスの、強大な生命力を受け継いだ、特別な苗木ですわ。これを植えれば、その土地は、時間をかけて、豊かな聖域へと変わっていくでしょう」
アキオは、その苗木と種子を、丁重に受け取った。
(…子爵、侯爵…そして、侯爵領の先には、王都か。この種は、そのために、アルクス・ヴィリディスが、俺に託してくれたのかもしれんな…)
アキオは、いずれ、王都にも、この聖域の恵みを届けねばならない日が来ることを、静かに、しかし、はっきりと予感するのだった。
一行は、再び魔導車に乗り込み、ヴァルト(新)侯爵の領地へと向かった。
都に到着すると、アレクサンダー侯爵は、一行を、英雄として、領民を挙げて、熱狂的に出迎えた。
「アキオ殿! よくぞ、お越しくださった! 旅の疲れを、まずは癒やしてほしい」
その夜、一行は、城で一泊し、つかの間の休息を取った。
翌日、子爵は、一行を、自領の「小さな聖域」へと案内した。そこでは、生命樹の若木が、アルクス・ヴィリディスほどではないにせよ、力強く根を張り、周囲を清浄な気で満たしていた。
そして、その若木の麓で、一頭の、角が生えたばかりの、子鹿のような、新しい聖獣が、無邪気に戯れている。
アウロラは、その光景に、聖母のように微笑んだ。
「聖獣は、その土地の生命樹の『子』であり、その土地の『願い』を映す鏡。この子が、これほど穏やかであるということは、ヴァルト様の統治が、民に安らぎを与えている、何よりの証ですわ」
一方、キナは、その聖獣に、ためらうことなく近づくと、その匂いを嗅ぎ、そして、力強く、しかし優しく、その首筋を撫でてやった。
「へっ、こいつは、うちの奴らとは、少し性質が違うみてえだな。ここの土地の気を受けて、おっとりした性格に育ってる。だが、いざという時の力は、本物だぜ。良い守り手になるだろうよ」
二人の妻の、それぞれの視点からの言葉は、ヴァルト侯爵に、聖域との絆の深さを、改めて感じさせた。
そして、旅立ちの朝。
城門の前には、アキオたちの二台の魔導車と、そして、ヴァルト侯爵が自ら乗り込む、真新しい『天馬』の姿があった。
「アキオ殿。ここから先のスタンフィールド公爵領は、私の領地とはまた違う、独自の慣習と、複雑な力関係がある。この旅、案内役として、私と、この『天馬』も同行させてはくれまいか」
アキオは、その心強い申し出を、喜んで快諾した。
こうして、アキオの『流星』と『力王』、そしてヴァルト侯爵の『天馬』。三台の魔導車が、威風堂々とした隊列を組み、最終目的地である、スタンフィールド公爵領を目指し、北へと出発した。
その旅路は、特に大きなトラブルもなく、驚くほど、穏やかなものだった。それは、二台の魔導車の圧倒的な存在感と、そして、アルクス・ヴィリディスの誕生によって、この地域の森や魔物たちの力関係が、既に、聖域に有利な形へと、静かに、しかし確実に、塗り替えられ始めていたからかもしれない。
聖域の一行は、今、歴史の表舞台へと、その歩みを、確かに進めていた。
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