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第334話:聖域を創る場所
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国王による静かなる「粛清」が行われた翌日。
王城内の空気は昨日までの華やかさとは打って変わって、張り詰めた静寂に包まれていた。だがそれは決して悪い意味ではない。不要な雑音が消え去り、残った者たちの間には新しい時代への、そしてアキオという規格外の盟主に対する真の敬意と緊張感が生まれていた。
アキオはシルヴィアとアウロラの二人だけを伴い、再び国王の私室へと招かれた。
そこにはもう政治的な駆け引きの雰囲気はない。ただ未来を共に創造する盟友としての信頼と期待が満ちていた。
「アキオ殿。昨日は見苦しいものをお見せした。だがこれで心置きなく我らの未来の話をすることができる」
国王はそう切り出すと、大きな王都の羊皮紙製の詳細な地図をテーブルの上に広げた。
「さて本題に入ろう。約束のもう一つ……この王都に聖なる恵みをもたらすという『聖域の創造』。その場所についてだが、いくつか候補を考えてみた」
国王が指し示したのは三つの場所だった。
一つは王宮の南に広がる広大な庭園の一角。歴代の王妃たちが愛した美しい薔薇園だ。
「ここは王家の平穏の象徴。ここに聖域ができれば、その権威はさらに増すだろう」
二つ目は王家が所有する城壁のすぐ外にある美しい丘。
「この丘は古来より王都を見晴らす戦略上の要地。ここに聖域の力が加われば、王都の守りは盤石となる」
そして最後の一つは、王都の北西に位置する打ち捨てられた広大な土地だった。
「……そしてここだ。この最後の場所は、昔からどういうわけか作物は育たず、人々も寄り付かぬ『忌み地』として知られておる。一説には建国の遥か昔、邪龍がその地で息絶え、その怨念が土地を腐らせているなどという迷信まである始末。だが広さだけは十分にある。さて、聖域を創造するに最もふさわしいのはどこかな?」
国王は試すような目でアキオたちを見た。
アキオが答える前にシルヴィアが一歩前に進み出た。彼女こそが聖域の場所を選定する専門家なのだ。
彼女は地図の上にそっとその白い指を置いた。目を閉じ、ハイエルフとしての能力を解放する。彼女の意識は王都の大地を駆け巡り、その下に流れる巨大なエネルギーの流れ……地脈を感じ取っていた。
「……陛下。王宮の庭園と丘は確かに安定した良い土地ですわ。ですが力の流れが穏やかすぎて、力が小さくまとまり過ぎています。例えるなら清らかな『小川』。ここに聖域を作っても、その恵みはごく一部にしか届きますまい」
シルヴィアはそこで一度言葉を切り、そして三つ目の土地を指差した。
「……ですがこの『忌み地』。ここは面白いですわね。ええ、非常に」
「ほう、面白いとは?」
「この土地は王都の全ての地脈が流れ着き、そして複雑に絡み合って巨大な渦を巻いている場所。エネルギーが淀み、腐っている。だからこそ生命が育たないのです。ですがもし、その絡まった地脈の流れを正しく解きほぐし、生命樹という新しい心臓を与えることができたなら……」
シルヴィアの翠の瞳がきらりと輝いた。
「その恵みは王都の隅々にまで行き渡り、この都そのものを生まれ変わらせるほどの莫大な力となるでしょう。……もっとも、それは神の御業にも等しい至難の技ですが」
ハイリスク、ハイリターン。
その言葉にアキオの職人としての魂がうずいた。詰まった配管を直し、淀んだ水を流す。壊れたものを直し、新しい価値を与える。それこそが彼の本質だった。
彼はにやりと笑うと即座に決断した。
「陛下。俺はその『忌み地』が気に入りました」
「なんと。アキオ殿、本気か? 失敗すればただの骨折り損になるやもしれんのだぞ?」
「ええ。ですが誰も見向きもしなかった土地が楽園に変わる。それこそが俺たちのやり方ですから。それにご心配なく。俺の妻たちは神の御業を平然とやってのける最高の女神たちですので」
アキオはそう言ってシルヴィアとアウロラを誇らしげに見た。
その絶対的な自信と妻への信頼。
国王はその器の大きさに改めて感嘆し、そしてまるで面白い賭け事を見つけたかのように腹を抱えて笑った。
「はっはっは! 実に面白い! 気に入ったぞ、アキオ殿! よかろう、その賭け、乗った! その土地の全ての権利を貴殿に与えよう。必要な資材、人員、何なりと申しつけよ。この国全体で貴殿の奇跡を支援することを約束する!」
こうして王都の未来を懸けた壮大なプロジェクトが動き出した。
その日の午後、アキオと旅に同行した六人の妻たちは、打ち捨てられたその荒れ地に立っていた。
乾いた風が吹き抜ける不毛の大地。生命の気配が全くしないその場所で、彼らはこれから始まる奇跡への期待に胸を高鳴らせていた。
王都の歴史が塗り替わるその奇跡の始まりまで、あと僅かだった。
王城内の空気は昨日までの華やかさとは打って変わって、張り詰めた静寂に包まれていた。だがそれは決して悪い意味ではない。不要な雑音が消え去り、残った者たちの間には新しい時代への、そしてアキオという規格外の盟主に対する真の敬意と緊張感が生まれていた。
アキオはシルヴィアとアウロラの二人だけを伴い、再び国王の私室へと招かれた。
そこにはもう政治的な駆け引きの雰囲気はない。ただ未来を共に創造する盟友としての信頼と期待が満ちていた。
「アキオ殿。昨日は見苦しいものをお見せした。だがこれで心置きなく我らの未来の話をすることができる」
国王はそう切り出すと、大きな王都の羊皮紙製の詳細な地図をテーブルの上に広げた。
「さて本題に入ろう。約束のもう一つ……この王都に聖なる恵みをもたらすという『聖域の創造』。その場所についてだが、いくつか候補を考えてみた」
国王が指し示したのは三つの場所だった。
一つは王宮の南に広がる広大な庭園の一角。歴代の王妃たちが愛した美しい薔薇園だ。
「ここは王家の平穏の象徴。ここに聖域ができれば、その権威はさらに増すだろう」
二つ目は王家が所有する城壁のすぐ外にある美しい丘。
「この丘は古来より王都を見晴らす戦略上の要地。ここに聖域の力が加われば、王都の守りは盤石となる」
そして最後の一つは、王都の北西に位置する打ち捨てられた広大な土地だった。
「……そしてここだ。この最後の場所は、昔からどういうわけか作物は育たず、人々も寄り付かぬ『忌み地』として知られておる。一説には建国の遥か昔、邪龍がその地で息絶え、その怨念が土地を腐らせているなどという迷信まである始末。だが広さだけは十分にある。さて、聖域を創造するに最もふさわしいのはどこかな?」
国王は試すような目でアキオたちを見た。
アキオが答える前にシルヴィアが一歩前に進み出た。彼女こそが聖域の場所を選定する専門家なのだ。
彼女は地図の上にそっとその白い指を置いた。目を閉じ、ハイエルフとしての能力を解放する。彼女の意識は王都の大地を駆け巡り、その下に流れる巨大なエネルギーの流れ……地脈を感じ取っていた。
「……陛下。王宮の庭園と丘は確かに安定した良い土地ですわ。ですが力の流れが穏やかすぎて、力が小さくまとまり過ぎています。例えるなら清らかな『小川』。ここに聖域を作っても、その恵みはごく一部にしか届きますまい」
シルヴィアはそこで一度言葉を切り、そして三つ目の土地を指差した。
「……ですがこの『忌み地』。ここは面白いですわね。ええ、非常に」
「ほう、面白いとは?」
「この土地は王都の全ての地脈が流れ着き、そして複雑に絡み合って巨大な渦を巻いている場所。エネルギーが淀み、腐っている。だからこそ生命が育たないのです。ですがもし、その絡まった地脈の流れを正しく解きほぐし、生命樹という新しい心臓を与えることができたなら……」
シルヴィアの翠の瞳がきらりと輝いた。
「その恵みは王都の隅々にまで行き渡り、この都そのものを生まれ変わらせるほどの莫大な力となるでしょう。……もっとも、それは神の御業にも等しい至難の技ですが」
ハイリスク、ハイリターン。
その言葉にアキオの職人としての魂がうずいた。詰まった配管を直し、淀んだ水を流す。壊れたものを直し、新しい価値を与える。それこそが彼の本質だった。
彼はにやりと笑うと即座に決断した。
「陛下。俺はその『忌み地』が気に入りました」
「なんと。アキオ殿、本気か? 失敗すればただの骨折り損になるやもしれんのだぞ?」
「ええ。ですが誰も見向きもしなかった土地が楽園に変わる。それこそが俺たちのやり方ですから。それにご心配なく。俺の妻たちは神の御業を平然とやってのける最高の女神たちですので」
アキオはそう言ってシルヴィアとアウロラを誇らしげに見た。
その絶対的な自信と妻への信頼。
国王はその器の大きさに改めて感嘆し、そしてまるで面白い賭け事を見つけたかのように腹を抱えて笑った。
「はっはっは! 実に面白い! 気に入ったぞ、アキオ殿! よかろう、その賭け、乗った! その土地の全ての権利を貴殿に与えよう。必要な資材、人員、何なりと申しつけよ。この国全体で貴殿の奇跡を支援することを約束する!」
こうして王都の未来を懸けた壮大なプロジェクトが動き出した。
その日の午後、アキオと旅に同行した六人の妻たちは、打ち捨てられたその荒れ地に立っていた。
乾いた風が吹き抜ける不毛の大地。生命の気配が全くしないその場所で、彼らはこれから始まる奇跡への期待に胸を高鳴らせていた。
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