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第357話:愛し子たちのための揺りかご、そして魔導乳母車の発明
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凛が無事に長男・智明(ともあき)を出産し、聖域は祝福のムードと、赤子たちの泣き声で、ますます賑やかになっていた。しかし、その平和な日常の中で、アキオは、夫として、そして、多くの子供たちの父親として、一つの「課題」に気づいていた。
その日の午後、アキオは、産後の肥立ちも良い凛が、智明を抱いて、中央館の庭を散歩しているのを見かけた。その光景は、微笑ましいものではあったが、アキオは思う。凛は、赤子をその腕に抱きしめているため、両手がふさがり、自由に動くことができない。少し長い時間歩けば、その腕も疲れてしまうだろう、と。
目を転じれば、キナが一番下の大地(だいち)を背負いながら、その一つ上のルナの手を引いている。アヤネもまた、複数の幼子を同時には外へ連れ出すことができず、苦心している様子だった。
(…これでは、せっかくの聖域の美しい陽の光や、清浄な空気を、赤子たちに存分に味あわせてやることができん。母親たちの、負担も大きい)
その、父親としての切実な想いが、アキオの中で、一つのアイデアへと結実した。
アキオは、自らの工房へと駆け込んだ。そして、記憶の奥底にあった故郷の風景――赤子を乗せて、母親が軽やかに散歩する、「乳母車」の姿を、羊皮紙の上に描き出す。
しかし、彼が描くのは、ただの乳母車ではなかった。
魔導車のサスペンション技術を応用した、衝撃吸収機構。
アキオ鋼を使った、軽量で、強靭なフレーム。
そして、赤子を守るための、ある「特別な仕組み」…。
アキオの頭脳と職人魂が融合し、新しい発明品の設計図が、瞬く間に完成した。
アキオは、早速、この聖域が誇る最高の職人たちを集めた。
ドワーフのドルガン親方には、フレームとサスペンション機構の製作を。
棟梁の弟子であるカイとアルトには、木製の美しい車体部分の製作を。
そして、織物工房のサラには、赤子を優しく包む内装と、日除けの幌の製作を依頼した。
それぞれの専門家たちは、アキオのその愛情に満ちた素晴らしい設計図に感嘆し、自らの持てる最高の技術でそれに応えようと腕をぶした。
数日後。職人たちの手によって、世界で最も美しく、そして高性能な乳母車の車体が完成した。
アキオは、その完成品をアウロラの元へと運ぶ。そして、彼が考えていた「特別な仕組み」を、彼女に打ち明けた。
「アウロラ。この乳母車に、君の力を少しだけ貸してくれないか。この中にいる赤子を、常に快適な温度に保ち、そして、悪い虫や塵から守るための、小さな小さな結界を張ってほしいんだ」
その、どこまでも子供たちを想う夫の愛情に、アウロラは聖母の微笑みを浮かべる。「うむ。任せるのじゃ、アキオ。わらわの愛し子たちのための、揺りかごじゃからのう」
アウロラが乳母車にそっと手を触れると、彼女の聖なる力が込められた小さな「聖石」が、車体の一部に埋め込まれ、淡い守護の光を放ち始めた。
聖域の叡智と愛情の結晶、『魔導乳母車』の誕生である。
アキオは、その完成したばかりの魔導乳母車を、凛と智明の元へと届けた。
「これは…!」
凛は、そのあまりにも素晴らしい贈り物に言葉を失い、涙を浮かべる。
智明をそっと中へ寝かせると、それまで少しぐずっていた赤子が、途端に心地よさそうな表情になり、すやすやと安らかな寝息を立て始めた。
「まあ、なんて快適そうですこと…! これなら、わたくし一人でも、この子を連れて、どこへでもお散歩に行けますわ」
その光景を見ていたクラウディアや、アヤネ、キナたち、母親でもある妻たちは歓声を上げ、「自分たちも欲しい!」とアキオに殺到する。
アキオは笑いながら、もちろん、町の全ての赤子のためにこれを量産することを約束するのだった。
それは聖域の新しい日常の風景がまた一つ生まれた、温かい午後の出来事だった。
その日の午後、アキオは、産後の肥立ちも良い凛が、智明を抱いて、中央館の庭を散歩しているのを見かけた。その光景は、微笑ましいものではあったが、アキオは思う。凛は、赤子をその腕に抱きしめているため、両手がふさがり、自由に動くことができない。少し長い時間歩けば、その腕も疲れてしまうだろう、と。
目を転じれば、キナが一番下の大地(だいち)を背負いながら、その一つ上のルナの手を引いている。アヤネもまた、複数の幼子を同時には外へ連れ出すことができず、苦心している様子だった。
(…これでは、せっかくの聖域の美しい陽の光や、清浄な空気を、赤子たちに存分に味あわせてやることができん。母親たちの、負担も大きい)
その、父親としての切実な想いが、アキオの中で、一つのアイデアへと結実した。
アキオは、自らの工房へと駆け込んだ。そして、記憶の奥底にあった故郷の風景――赤子を乗せて、母親が軽やかに散歩する、「乳母車」の姿を、羊皮紙の上に描き出す。
しかし、彼が描くのは、ただの乳母車ではなかった。
魔導車のサスペンション技術を応用した、衝撃吸収機構。
アキオ鋼を使った、軽量で、強靭なフレーム。
そして、赤子を守るための、ある「特別な仕組み」…。
アキオの頭脳と職人魂が融合し、新しい発明品の設計図が、瞬く間に完成した。
アキオは、早速、この聖域が誇る最高の職人たちを集めた。
ドワーフのドルガン親方には、フレームとサスペンション機構の製作を。
棟梁の弟子であるカイとアルトには、木製の美しい車体部分の製作を。
そして、織物工房のサラには、赤子を優しく包む内装と、日除けの幌の製作を依頼した。
それぞれの専門家たちは、アキオのその愛情に満ちた素晴らしい設計図に感嘆し、自らの持てる最高の技術でそれに応えようと腕をぶした。
数日後。職人たちの手によって、世界で最も美しく、そして高性能な乳母車の車体が完成した。
アキオは、その完成品をアウロラの元へと運ぶ。そして、彼が考えていた「特別な仕組み」を、彼女に打ち明けた。
「アウロラ。この乳母車に、君の力を少しだけ貸してくれないか。この中にいる赤子を、常に快適な温度に保ち、そして、悪い虫や塵から守るための、小さな小さな結界を張ってほしいんだ」
その、どこまでも子供たちを想う夫の愛情に、アウロラは聖母の微笑みを浮かべる。「うむ。任せるのじゃ、アキオ。わらわの愛し子たちのための、揺りかごじゃからのう」
アウロラが乳母車にそっと手を触れると、彼女の聖なる力が込められた小さな「聖石」が、車体の一部に埋め込まれ、淡い守護の光を放ち始めた。
聖域の叡智と愛情の結晶、『魔導乳母車』の誕生である。
アキオは、その完成したばかりの魔導乳母車を、凛と智明の元へと届けた。
「これは…!」
凛は、そのあまりにも素晴らしい贈り物に言葉を失い、涙を浮かべる。
智明をそっと中へ寝かせると、それまで少しぐずっていた赤子が、途端に心地よさそうな表情になり、すやすやと安らかな寝息を立て始めた。
「まあ、なんて快適そうですこと…! これなら、わたくし一人でも、この子を連れて、どこへでもお散歩に行けますわ」
その光景を見ていたクラウディアや、アヤネ、キナたち、母親でもある妻たちは歓声を上げ、「自分たちも欲しい!」とアキオに殺到する。
アキオは笑いながら、もちろん、町の全ての赤子のためにこれを量産することを約束するのだった。
それは聖域の新しい日常の風景がまた一つ生まれた、温かい午後の出来事だった。
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