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第360話:聖域の父と、二人の軍師
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聖域に穏やかな初夏の光が降り注ぐ。新・中央館は多くの家族の笑い声と、新しい一日が始まる活気に満ちていた。だが、その喧騒の中心である共同託児所「生命樹の若葉園」は、今や嬉しい悲鳴に包まれていた。
「うぎゃあああ!」「ふえぇぇぇん!」
聖域のベビーラッシュによって、数十人もの赤子たちがその小さな肺を精一杯震わせている。アヤネを筆頭に町の母親たちが総出で世話にあたっているが、一人をあやせばまた一人が泣き出すという、終わりのない戦いが繰り広げられていた。
その光景を視察に訪れたアキオは、夫として、そしてこの町の多くの子供たちの父親として、その眉をひそめていた。
(…これではいかんな。母親たちの負担が大きすぎる。子供たちにとっても、常に誰かが泣いている環境は決して良くはないはずだ)
その父親としての切実な想いが、アキオの中で一つの新しい「ものづくり」への情熱へと火をつけた。
その日の午後、アキオは町の頭脳である二人の才媛を、設計司令室へと招集した。第五夫人・凛と、第六夫人・クラウディアである。
「二人とも、力を貸してほしい。俺は、この聖域の子育て環境に、革命を起こしたいと思っている」
アキオは、自らの故郷の記憶を元に、いくつかの画期的な育児用品のアイデアを熱っぽく語り始めた。
「まず、一度に複数の赤子をあやすことができる『自動揺りかご』だ。水力か、あるいは小さな魔石を動力にして、常に穏やかな揺れを与え続ける」
「次に、『聖石式・哺乳瓶ウォーマー』。夜中でも母親が火を使わず、安全に、そして常に最適な温度のミルクを与えられるようにする」
「そして、究極的には、おむつの自動洗浄と乾燥までを行う『聖域式・全自動洗濯機』の開発だ!」
その、あまりにも未来的で、そして愛情に満ちた夫の構想に、凛とクラウディアは目を輝かせた。
「素晴らしいお考えですわ、アキオ様!」クラウディアが興奮した声を上げる。「そのアイデア、わたくしたちの知識で、必ずや形にしてみせますわ!」
「ええ」凛もまた、そのいつもは冷静な瞳に、知的な探求心の炎を宿らせていた。「ですが、アキオ様。そのためには、まず現状の問題点を正確に分析する必要があります。わたくしの方で、託児所の全時間帯における労働負荷と、問題発生の因果関係を数値化し、最適な改善案を立案いたします」
その日から、三人の異才による、聖域史上最も優しい「革命」への挑戦が始まった。
アキオがその職人としての神業で試作品の骨格を組み上げ、凛がその頭脳で最も効率的なエネルギー循環の設計図を描き、クラウディアがその応用力で最も安全で美しいデザインを提案する。
三つの才能が共鳴し合い、工房では夜遅くまで、未来を創造する槌音と議論の声が響き渡っていた。
s-s-s-s-s-s
そして、数週間後。
「生命樹の若葉園」に、その奇跡の発明品たちが導入された。
水力でゆっくりと優しく揺れる十数台の連結式ゆりかご。その中で、赤子たちはすやすやと天使のような寝顔を見せている。聖石の穏やかな熱で常に人肌に保たれた哺乳瓶。母親たちは、もう夜中に厨房で火をおこす必要はない。
その画期的な光景に、アヤネや町の母親たちは涙を流して喜んだ。
「アキオ様…凛様、クラウディア様…! これで、わたくしたち救われます…!」
その日の夜、全ての仕事を終え、達成感に満ちた三人は、設計司令室でささやかな祝杯をあげていた。
「凛、クラウディア。本当にありがとう。君たち二人がいなければ、この発明は生まれなかった」
アキオのその心からの感謝の言葉に、二人の才媛は顔を見合わせ、そして幸せそうに微笑んだ。
「いいえ、アキオ様。わたくしたちこそ、貴方様のその素晴らしい夢の一部になれたこと、心から光栄に思っております」とクラウディアが言う。
「はい。この共同作業は、わたくしにとって何物にも代えがたい喜びでしたわ」と凛も続けた。
部屋の空気が、自然と甘く、そして熱を帯びていく。
アキオは立ち上がると、二人の才能あふれる、そして何よりも愛しい妻たちの手を、そっと取った。
「…今夜は、祝杯の続きを、俺の部屋でしないか。君たち二人への、最高の『ご褒美』を用意してある」
その誘いの意味を理解し、二人は顔を真っ赤にしながらも、しかし深く頷いた。
その夜、アキオの寝台は、聖域の二人の軍師を、同時にその腕に抱いていた。
凛の、理知的で、しかしその奥に秘められた情熱的な愛。
クラウディアの、快活で、そして全てを肯定してくれる太陽のような愛。
その、二つの全く質の違う、しかしどちらも抗いがたい魅力に、アキオは翻弄され、そしてこれ以上ないほどの幸福感に包まれていた。
三つの知性と魂が完全に一つに溶け合ったその夜。
聖域の父は、その二つの最高の頭脳を手に入れたことを、そして、その頭脳が自分を心から愛してくれているという事実を改めて実感し、深い深い満足感と共に眠りへと落ちていくのだった。
「うぎゃあああ!」「ふえぇぇぇん!」
聖域のベビーラッシュによって、数十人もの赤子たちがその小さな肺を精一杯震わせている。アヤネを筆頭に町の母親たちが総出で世話にあたっているが、一人をあやせばまた一人が泣き出すという、終わりのない戦いが繰り広げられていた。
その光景を視察に訪れたアキオは、夫として、そしてこの町の多くの子供たちの父親として、その眉をひそめていた。
(…これではいかんな。母親たちの負担が大きすぎる。子供たちにとっても、常に誰かが泣いている環境は決して良くはないはずだ)
その父親としての切実な想いが、アキオの中で一つの新しい「ものづくり」への情熱へと火をつけた。
その日の午後、アキオは町の頭脳である二人の才媛を、設計司令室へと招集した。第五夫人・凛と、第六夫人・クラウディアである。
「二人とも、力を貸してほしい。俺は、この聖域の子育て環境に、革命を起こしたいと思っている」
アキオは、自らの故郷の記憶を元に、いくつかの画期的な育児用品のアイデアを熱っぽく語り始めた。
「まず、一度に複数の赤子をあやすことができる『自動揺りかご』だ。水力か、あるいは小さな魔石を動力にして、常に穏やかな揺れを与え続ける」
「次に、『聖石式・哺乳瓶ウォーマー』。夜中でも母親が火を使わず、安全に、そして常に最適な温度のミルクを与えられるようにする」
「そして、究極的には、おむつの自動洗浄と乾燥までを行う『聖域式・全自動洗濯機』の開発だ!」
その、あまりにも未来的で、そして愛情に満ちた夫の構想に、凛とクラウディアは目を輝かせた。
「素晴らしいお考えですわ、アキオ様!」クラウディアが興奮した声を上げる。「そのアイデア、わたくしたちの知識で、必ずや形にしてみせますわ!」
「ええ」凛もまた、そのいつもは冷静な瞳に、知的な探求心の炎を宿らせていた。「ですが、アキオ様。そのためには、まず現状の問題点を正確に分析する必要があります。わたくしの方で、託児所の全時間帯における労働負荷と、問題発生の因果関係を数値化し、最適な改善案を立案いたします」
その日から、三人の異才による、聖域史上最も優しい「革命」への挑戦が始まった。
アキオがその職人としての神業で試作品の骨格を組み上げ、凛がその頭脳で最も効率的なエネルギー循環の設計図を描き、クラウディアがその応用力で最も安全で美しいデザインを提案する。
三つの才能が共鳴し合い、工房では夜遅くまで、未来を創造する槌音と議論の声が響き渡っていた。
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そして、数週間後。
「生命樹の若葉園」に、その奇跡の発明品たちが導入された。
水力でゆっくりと優しく揺れる十数台の連結式ゆりかご。その中で、赤子たちはすやすやと天使のような寝顔を見せている。聖石の穏やかな熱で常に人肌に保たれた哺乳瓶。母親たちは、もう夜中に厨房で火をおこす必要はない。
その画期的な光景に、アヤネや町の母親たちは涙を流して喜んだ。
「アキオ様…凛様、クラウディア様…! これで、わたくしたち救われます…!」
その日の夜、全ての仕事を終え、達成感に満ちた三人は、設計司令室でささやかな祝杯をあげていた。
「凛、クラウディア。本当にありがとう。君たち二人がいなければ、この発明は生まれなかった」
アキオのその心からの感謝の言葉に、二人の才媛は顔を見合わせ、そして幸せそうに微笑んだ。
「いいえ、アキオ様。わたくしたちこそ、貴方様のその素晴らしい夢の一部になれたこと、心から光栄に思っております」とクラウディアが言う。
「はい。この共同作業は、わたくしにとって何物にも代えがたい喜びでしたわ」と凛も続けた。
部屋の空気が、自然と甘く、そして熱を帯びていく。
アキオは立ち上がると、二人の才能あふれる、そして何よりも愛しい妻たちの手を、そっと取った。
「…今夜は、祝杯の続きを、俺の部屋でしないか。君たち二人への、最高の『ご褒美』を用意してある」
その誘いの意味を理解し、二人は顔を真っ赤にしながらも、しかし深く頷いた。
その夜、アキオの寝台は、聖域の二人の軍師を、同時にその腕に抱いていた。
凛の、理知的で、しかしその奥に秘められた情熱的な愛。
クラウディアの、快活で、そして全てを肯定してくれる太陽のような愛。
その、二つの全く質の違う、しかしどちらも抗いがたい魅力に、アキオは翻弄され、そしてこれ以上ないほどの幸福感に包まれていた。
三つの知性と魂が完全に一つに溶け合ったその夜。
聖域の父は、その二つの最高の頭脳を手に入れたことを、そして、その頭脳が自分を心から愛してくれているという事実を改めて実感し、深い深い満足感と共に眠りへと落ちていくのだった。
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