380 / 400
第380話:王女の旅立ちと、二つの国の未来
しおりを挟む
収穫祭の熱狂も落ち着いたある日、賓客として聖域に滞在していたエルドリア国王クリストフがアキオとミランダ姫との正式な会談を申し入れてきた。収穫祭で見たゴーレムの技術、そしてアウロラの奇跡的な帰還。その二つが若い国王の心を強く動かしたのだ。
応接室にはアキオとクリストフ、そして少し緊張した面持ちのミランダ姫の三人がテーブルを囲んでいた。
「アキオ義兄上。先日の収穫祭、そしてアウロラ様の御帰還、誠におめでとうございます。あの鉄の巨人……ゴーレムの力、そしてこの聖域の活気と秩序、全てが驚異的でした」
クリストフはまず心からの賛辞を述べた。
「ありがとうございます、陛下。あれもドワーフや新しい仲間たちの力があってこそです」
「謙遜なさらないでください。あの力の根源が貴方様の哲学と、この聖域の在り方そのものにあることは、この数日で痛いほど理解いたしました。……その上で、改めてお願いがございます」
クリストフは姿勢を正し深く頭を下げた。
「我がエルドリアにも、貴殿が作ってくださった『小さな聖域』は確かに根付いております。ですが、その力を真に我が国の発展へと繋げるためには、聖域のより深い知識とそれを正しく導く指導者が不可欠なのです。どうか我らにお力添えを……」
その切実な願いをミランダは静かに聞いていた。そしてアキオが口を開くより先に、彼女は自らの意志でその役目を買って出た。
「国王陛下。……そしてアキオ様。もしお許しいただけるのでしたら、その大役、このわたくしにお任せいただけないでしょうか」
その場の空気がぴんと張り詰める。アキオもクリストフも驚いて彼女を見た。
「ミランダ姫……?」
「わたくしはこの聖域で多くのことを学ばせていただきました。土を耕す喜び、物を作る尊さ、そして何よりも、人々が互いを尊重し助け合うこの温かい空気こそが聖域の力の源泉であることも。この知識と経験をエルドリア王国のために役立てること。それがこの聖域と我がメイプルウッド王国、そしてエルドリア王国の三国にとって最善の道であるとわたくしは信じます」
その言葉はもはやただ留学に来ていた内気な王女のものではなかった。自らの国の未来と同盟国の未来をその両肩に背負う覚悟を決めた一人の王族としての力強い決意表明だった。
アキオはそのミランダの見事な成長に深く感銘を受けた。
「……ミランダ姫。君はいつのまにそんなに立派になったんだ。君がそこまで言うのなら、俺に否やはない。聖域の正式な『技術顧問』として君をエルドリア王国へ推薦しよう」
「アキオ様……! ありがとうございます!」
そのアキオの決断を受け、クリストフ国王は感極まった表情で立ち上がると、ミランダの前に進み出て跪いた。
「なっ……陛下!?」
「……ミランダ姫。貴女のその気高いお志、そして聖域の魂を宿したそのお心、確かに受け取りました。つきましては、これはエルドリア国王として、そして一人の男としての正式な申し出です」
クリストフはミランダの手をそっと取り、その瞳をまっすぐに見つめた。
「……どうか我が国へ、ただの技術顧問としてではなく、未来の王妃として来てはいただけないだろうか。貴女と共にエルドリアの新しい歴史を築きたい」
そのあまりにもまっすぐで熱烈なプロポーズ。ミランダは顔を真っ赤にしながらも、しかしその瞳には喜びの光を宿らせて、静かに、しかしはっきりと頷くのだった。
数日後、ミランダ姫がエルドリア王国へと旅立つ日が来た。彼女の旅立ちは聖域の力がその内側だけでなく、外の世界へも大きな影響を与え始めたその象徴的な出来事となった。そして遠いエルドリアの地で、彼女がどのように聖域の力を花開かせ、クリストフ国王との愛を育んでいくのか。
物語は新しい舞台へとその翼を広げていくのである。
応接室にはアキオとクリストフ、そして少し緊張した面持ちのミランダ姫の三人がテーブルを囲んでいた。
「アキオ義兄上。先日の収穫祭、そしてアウロラ様の御帰還、誠におめでとうございます。あの鉄の巨人……ゴーレムの力、そしてこの聖域の活気と秩序、全てが驚異的でした」
クリストフはまず心からの賛辞を述べた。
「ありがとうございます、陛下。あれもドワーフや新しい仲間たちの力があってこそです」
「謙遜なさらないでください。あの力の根源が貴方様の哲学と、この聖域の在り方そのものにあることは、この数日で痛いほど理解いたしました。……その上で、改めてお願いがございます」
クリストフは姿勢を正し深く頭を下げた。
「我がエルドリアにも、貴殿が作ってくださった『小さな聖域』は確かに根付いております。ですが、その力を真に我が国の発展へと繋げるためには、聖域のより深い知識とそれを正しく導く指導者が不可欠なのです。どうか我らにお力添えを……」
その切実な願いをミランダは静かに聞いていた。そしてアキオが口を開くより先に、彼女は自らの意志でその役目を買って出た。
「国王陛下。……そしてアキオ様。もしお許しいただけるのでしたら、その大役、このわたくしにお任せいただけないでしょうか」
その場の空気がぴんと張り詰める。アキオもクリストフも驚いて彼女を見た。
「ミランダ姫……?」
「わたくしはこの聖域で多くのことを学ばせていただきました。土を耕す喜び、物を作る尊さ、そして何よりも、人々が互いを尊重し助け合うこの温かい空気こそが聖域の力の源泉であることも。この知識と経験をエルドリア王国のために役立てること。それがこの聖域と我がメイプルウッド王国、そしてエルドリア王国の三国にとって最善の道であるとわたくしは信じます」
その言葉はもはやただ留学に来ていた内気な王女のものではなかった。自らの国の未来と同盟国の未来をその両肩に背負う覚悟を決めた一人の王族としての力強い決意表明だった。
アキオはそのミランダの見事な成長に深く感銘を受けた。
「……ミランダ姫。君はいつのまにそんなに立派になったんだ。君がそこまで言うのなら、俺に否やはない。聖域の正式な『技術顧問』として君をエルドリア王国へ推薦しよう」
「アキオ様……! ありがとうございます!」
そのアキオの決断を受け、クリストフ国王は感極まった表情で立ち上がると、ミランダの前に進み出て跪いた。
「なっ……陛下!?」
「……ミランダ姫。貴女のその気高いお志、そして聖域の魂を宿したそのお心、確かに受け取りました。つきましては、これはエルドリア国王として、そして一人の男としての正式な申し出です」
クリストフはミランダの手をそっと取り、その瞳をまっすぐに見つめた。
「……どうか我が国へ、ただの技術顧問としてではなく、未来の王妃として来てはいただけないだろうか。貴女と共にエルドリアの新しい歴史を築きたい」
そのあまりにもまっすぐで熱烈なプロポーズ。ミランダは顔を真っ赤にしながらも、しかしその瞳には喜びの光を宿らせて、静かに、しかしはっきりと頷くのだった。
数日後、ミランダ姫がエルドリア王国へと旅立つ日が来た。彼女の旅立ちは聖域の力がその内側だけでなく、外の世界へも大きな影響を与え始めたその象徴的な出来事となった。そして遠いエルドリアの地で、彼女がどのように聖域の力を花開かせ、クリストフ国王との愛を育んでいくのか。
物語は新しい舞台へとその翼を広げていくのである。
21
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
家ごと異世界ライフ
もちもちほっぺ
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる