猫奴隷の日常

ハルカ

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レイ 4

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背中を蹴られて目が覚めた。
「うーん・・・ 何?」
寝ぼけて転がると、体が固い壁にぶつかった。


「なにやってんだあんた。そんなところで寝られちゃあ邪魔だよ」

瞼をこすりながら起き上がる。一瞬どこにいるのか分からなかった。
辺りをきょろきょろ見まわして、そうだ自分は奴隷として売られて新しい主人の元に来たんだった、と思い出した。


蹴られた背中をさすりながら立ち上がる。振り返ると、自分を蹴ったらしい狼の獣人がこちらを見下ろしていた。

「見ない顔だな、あんた」
「昨日からお世話になってます。奴隷のレイです」
「オレはカイだ。見ての通り厨房係。それにしても、奴隷ねぇ」

カイはじろじろとレイを見下ろしてきた。

「そんなに細くて何の役に立つんだ」
「性奴隷なので」
「性奴隷!?って、エイベル様の?」
「エイベル様?」
「しらねぇの?この屋敷の主様」

この屋敷の主様ということは、昨日のご主人様のことだろう。エイベルという名だったのか。
レイは納得して頷いた。

「はい。そのエイベル様の性奴隷です」
「へぇー」

カイは感心したようにレイを見、それから内緒話でもするように顔を近づけてきた。

「その様子じゃまだエイベル様には会ってないんだろ?覚悟しといたほうがいいぜ。エイベル様は悪魔の目を持ってるんだ」
「悪魔の目って、「カイ」」

あの赤い目のことかと聞こうとしたところを遮られた。

「げっ、セバス様」
「無駄口を叩いている暇があるんですか?」

壮年の男に言われ、カイは罰の悪そうな顔をして去っていった。
残されたレイは話しかけてきた人間の男を見、ああ、と思い出した。
昨日、ここにやってきたレイを迎え、エイベルの部屋に案内したのがこの男だった。
確か、執事をしているセバスと名乗ったはずだ。

「おはようございます、セバス様」

しっかり頭を下げて礼をしてから、厨房なんかで寝てしまってまずかったかな、と思った。外はさすがにちょっと嫌だったんだけれど。
しかし、頭を上げて見たセバスは笑顔だった。

「部屋に案内しますから、ついて来てください」
「あ、はい」

レイはほっとした。やはり奴隷部屋は用意されていたらしい。さすがに毎日廊下で寝るのはきつい。



セバスの後について廊下を歩く。昨日来た時も思ったが、あまり人気がない。
掃除も行き届いていないようで、埃が溜まっている場所もあった。

「あのー」
「何でしょうか?」
「僕は、普段は何をしていればいいんでしょうか?」

夜エイベルの相手をするのは分かる。ならば、性奴隷とは昼間は何をしているものなのだろう。

「昼間は好きにしていただいて結構ですよ。ただ、ここは使用人の数が少ないので自分のことは自分でしてくださいね」
「それはまあ、はい」

拍子抜けして、レイは頷いた。
もちろん、エイベルの相手というのが一番重要なレイの仕事な訳だが、それ以外は自由にしていいというなら楽なものだ。
元より奴隷な訳だし、誰かの世話になろうとは思ってもいない。

「部屋を確認したら、厨房に来てください。使用人は皆そこで食事をとることになっていますので」
「食事・・・」

セバスの言葉を聞いた途端に腹が鳴った。

「使用人が少ないって、何人くらいなんですか?」
「三人です。私と、厨房係のカイと、掃除洗濯をするメイドが一人です」
「三人・・・」

レイは廊下に飾られた絵画の額の上に積もった埃を見ながら、なるほどなと思った
大豪邸と言うほどではないがそれなりの広さがあるこの屋敷を、メイド一人で管理するのは大変に違いない。



「ここが君の部屋です」

暗い廊下を進み、セバスは一つの部屋の前で立ち止まった。

「ありがとうございます。セバス様」

頭を下げて礼を言う。
「では、また後で」と言って去っていくセバスの背中を見送ってから部屋に入り、レイは驚いた。

広めの間取りにしっかりした作りのベッド、品のいい鏡台に、奥にはクローゼットも見える。
とても奴隷に与えるような部屋には見えない。

部屋間違ってないですか?と聞こうかと廊下を覗くが、もうセバスの背中は見えなくなっていた。そういえば使用人が三人しかいないと言っていたし、部屋が余っているのかもしれない。ということは、やはりこの部屋はレイのもので間違いないのだ。

「わぁー」

思いっきりジャンプしてベッドに飛び込む。
スプリングが効いていて、体がはねた。

ご主人様は見目麗しく、三食昼寝付き。これが、ムルが言っていた最悪な奴隷の行き先なのか。だとしたら、他の人たちは一体どんな人に買われているのだろう?
不思議に思いつつも、レイはしばらくベッドの上でその感触を楽しんだ。
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