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世界征服編
青春
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「い、伊崎くん?」
「店員さん、注文いいかな?」
思わず私の足は絶対動かないと確信する程の胸の高鳴りだ。
と、とにかく聞かないと。
「ご、ご注文をお伺いいたします!」
「店員さんのオススメは?」
ヤバイ。伊崎くんが。
「どうかしましたか?店員さん」
なんか⋯⋯めちゃくちゃイケメンに磨きが掛かってる!!
「き、今日のオススメは⋯⋯こ、こち」
「これ?」
なんか近いよ⋯⋯近いよぉぉ!!かっこいいー!
何!?何なの!?
あり得ないくらい色気がダダ漏れよ!!
「は、はいっ!」
「ではコレを」
「か、髪染めたの?」
襟足だけ真っ白になってるような。
雪みたい。
「ん?これ?色々あったんだ」
その色々ってやつが凄い気になるんですけど!?
どんな理由があったらそんな色になるの!?
「そ、そう」
なーんで塩対応なのよ!私は!
「ふぅ、白波も随分綺麗になったな」
肘をついてこちらを見上げてくる。
やめて、なんか艶やかという言葉が似合う男の子に。
「ど、どうしちゃったの」
「ん?気になる?」
気になるでしょうが。
勿論です。
「注文取らないと!」
「美味しい愛情のこもったコーヒーをお待ちしてまーす」
⋯⋯なんかキザなイケメンになってる!
あの伊崎くんが!!
*
「い、伊崎くん待った!?」
その後、私の反応を見たクラスメイトから嫉妬の嵐を貰った。
──伊崎くんって凄い有名になってたんだね。
確かにパパからある程度の話は聞いてたけど、色んな企業の会長さんや社長さん、中には議員の人まで会釈してたのはビックリした。
三年もあれば人は変わるなんて言われているけど、これはあんまりだ。
「屋上で待ってる」
彼が一緒に文化祭を回ろうと誘ってもらうと、聞いていたクラスメイトたちがハイハイと言って私と変わってくれた。
三年間真面目にやってきただろうか。
今、物凄く感謝している。
そして屋上。
チェーンで本来は行けないようになっているんだけど、何故か開いてる。
「髪乱れてないよね?」
慌てて手鏡で前髪、後ろ、睫毛がおかしくないか確認。
「服はいいか、よし!」
少しだけ不快な錆びた開く音。
扉を開けると。
「⋯⋯⋯⋯」
快晴の空に照らされたように、一人の絶世の美男子がロングコートを靡かせ、髪を靡かせ──こちらを振り向く。
耳にかける仕草が凄く似合ってて⋯⋯イイ。
「白波、ほれ」
宙を泳いで私の手に乗ったのは瓶のトマトジュース。
「知り合いに作ってもらった逸品だ。
美味いと思うぞ」
「私がトマトジュース好きなの覚えててくれたんだ」
そう言うと手摺りに背中を預け、伊崎くんは空を見上げながら呟く。
「一瞬も忘れた事はない」
10秒くらい時間が経ってから発した彼の言葉。
何故か、その言葉と見上げる彼の顔が、近いようで遠くて、届きそうで届かない。
雲に触れるような感覚がずっと私の心をざわつかせる。
「どうしたの?急に」
「言っただろ?
白波の重要なイベントには来るって」
「そんな事⋯⋯言ったかも」
「忘れられたのは俺の方だったみたいだな」
「ち、違うよ」
苦笑いを浮かべながら彼は秋風⋯⋯いや、もう冬の乾燥した風を浴びている。
「文化祭⋯⋯巡るか?」
「うん!」
三年間で異性と初めて文化祭を回る。
「白波、アレは?」
「あぁ演劇だね。
女子校だから男装した女だけど」
「見ていくか」
二人、鑑賞の椅子に座って演劇を眺める。
『おぉ、アリエッタ』
劇は淡々と進んでいく。
けど隣にいる伊崎くんが視界に入るとどうにも落ち着かない。
本当に三年前の人間と同じか怪しく思える。
正直整形したのかというほどだ。
あまりにも綺麗になってて、嫉妬してしまいそうになるくらい。
女の子よりも肌の手入れも行き届いているし、髪もツヤッツヤ。
私なんかよりも綺麗だ。
なんて、思っていると。
彼がこっちを少し横目で見ていた。
どうしよう。
不整脈。不整脈ってことにしよう!
「⋯⋯⋯⋯」
ドキドキする。
ぷるぷるな唇。
程よく湿った肌が私を狂わせる。
香水なのか何なのか、私の心臓の鼓動が早い。
少し彼は鼻で笑うと、静かに私の掌に指の感触。
「⋯⋯っ」
「⋯⋯⋯⋯」
集中できない。
駄目だ。このまま世界が止まって欲しい。
劇も終盤。
私の手は伊崎くんの分厚くてどこか何度も重ねたようにピッタリ手を繋いでいた。
「面白かったな、劇。
過去に戻ったアリエッタが報われたようで」
「う、うん!」
手を繋いだまま、少し肌寒い文化祭の屋台を歩く。
「s──白波、なに食べる?」
「焼きそばシェアしようよ!」
だめだ。
空気を壊せない。
この瞬間がずっと続けばいいなんて。
ちょっとでも気付かれたら、無意識に離されてしまうかもしれないから。
「これ一つ」
彼がそう言うと対応している店員が私をチラ見してニヤリと笑う。
や、やめてよ!!バレちゃう!
「女子校なのに焼きそばがあるなんて驚いた」
「最初は予定になかったんだけど、流石にお菓子や伝統芸能では面白くないんじゃないかって意見が出て」
人通りの激しいところから一本離れたところで、今は都合良くあると思える謎のベンチに座りながら通行人を見て他愛もない話。
「白波、書道のやつ見たぞ」
「本当?」
「あぁ、1位だったみたいだな」
「うん!頑張った!」
⋯⋯なんか繋がるような会話をしないかー!!
私め!
「確か奇跡って書いてたよな。
なんかあったのか?」
「あっ、私だけじゃなくて、人生ってもしかしたら誰かがくれた贈り物なんじゃないかって思って」
「⋯⋯なるほどな。
そういう見方もあるな」
「伊崎くんは人生ってどう考えてるの?」
「俺にとって?難しいな」
指で遊びながら、少し考えるように俯く伊崎くんは鼻で笑う。
「でも、経験させる為に俺達の人生ってのはあるんだと思う」
「経験?」
「あぁ。
例えば、金持ちの人生。
金持ちの人生は常に快楽があって、欲しいものがいつでも手に入って⋯⋯困らないだろう?
おそらくそういう人生を経験させたいんだろうなぁって考える。
逆に人殺しの人生もそういう理屈になる。
要は神になる為には全てを経験する必要があって、その過程なんだと思う。
俺達がこうやって賑やかなところで飯を食ってるのも、寒い風を頬に感じながら人通りを眺めるのも、全て必要な経験なんだろう」
思ったより真剣に返してくれる伊崎くんにちょっと驚く。
「じゃあ、伊崎くんの今回の人生は?」
そう訊ねると、少し戸惑ったようにはにかんで、下をチラッと見てから⋯⋯私の顔を見る。
「救えなかった子に幸せになってもらうために1000年くらい生きた奴が命を賭けにきた」
「店員さん、注文いいかな?」
思わず私の足は絶対動かないと確信する程の胸の高鳴りだ。
と、とにかく聞かないと。
「ご、ご注文をお伺いいたします!」
「店員さんのオススメは?」
ヤバイ。伊崎くんが。
「どうかしましたか?店員さん」
なんか⋯⋯めちゃくちゃイケメンに磨きが掛かってる!!
「き、今日のオススメは⋯⋯こ、こち」
「これ?」
なんか近いよ⋯⋯近いよぉぉ!!かっこいいー!
何!?何なの!?
あり得ないくらい色気がダダ漏れよ!!
「は、はいっ!」
「ではコレを」
「か、髪染めたの?」
襟足だけ真っ白になってるような。
雪みたい。
「ん?これ?色々あったんだ」
その色々ってやつが凄い気になるんですけど!?
どんな理由があったらそんな色になるの!?
「そ、そう」
なーんで塩対応なのよ!私は!
「ふぅ、白波も随分綺麗になったな」
肘をついてこちらを見上げてくる。
やめて、なんか艶やかという言葉が似合う男の子に。
「ど、どうしちゃったの」
「ん?気になる?」
気になるでしょうが。
勿論です。
「注文取らないと!」
「美味しい愛情のこもったコーヒーをお待ちしてまーす」
⋯⋯なんかキザなイケメンになってる!
あの伊崎くんが!!
*
「い、伊崎くん待った!?」
その後、私の反応を見たクラスメイトから嫉妬の嵐を貰った。
──伊崎くんって凄い有名になってたんだね。
確かにパパからある程度の話は聞いてたけど、色んな企業の会長さんや社長さん、中には議員の人まで会釈してたのはビックリした。
三年もあれば人は変わるなんて言われているけど、これはあんまりだ。
「屋上で待ってる」
彼が一緒に文化祭を回ろうと誘ってもらうと、聞いていたクラスメイトたちがハイハイと言って私と変わってくれた。
三年間真面目にやってきただろうか。
今、物凄く感謝している。
そして屋上。
チェーンで本来は行けないようになっているんだけど、何故か開いてる。
「髪乱れてないよね?」
慌てて手鏡で前髪、後ろ、睫毛がおかしくないか確認。
「服はいいか、よし!」
少しだけ不快な錆びた開く音。
扉を開けると。
「⋯⋯⋯⋯」
快晴の空に照らされたように、一人の絶世の美男子がロングコートを靡かせ、髪を靡かせ──こちらを振り向く。
耳にかける仕草が凄く似合ってて⋯⋯イイ。
「白波、ほれ」
宙を泳いで私の手に乗ったのは瓶のトマトジュース。
「知り合いに作ってもらった逸品だ。
美味いと思うぞ」
「私がトマトジュース好きなの覚えててくれたんだ」
そう言うと手摺りに背中を預け、伊崎くんは空を見上げながら呟く。
「一瞬も忘れた事はない」
10秒くらい時間が経ってから発した彼の言葉。
何故か、その言葉と見上げる彼の顔が、近いようで遠くて、届きそうで届かない。
雲に触れるような感覚がずっと私の心をざわつかせる。
「どうしたの?急に」
「言っただろ?
白波の重要なイベントには来るって」
「そんな事⋯⋯言ったかも」
「忘れられたのは俺の方だったみたいだな」
「ち、違うよ」
苦笑いを浮かべながら彼は秋風⋯⋯いや、もう冬の乾燥した風を浴びている。
「文化祭⋯⋯巡るか?」
「うん!」
三年間で異性と初めて文化祭を回る。
「白波、アレは?」
「あぁ演劇だね。
女子校だから男装した女だけど」
「見ていくか」
二人、鑑賞の椅子に座って演劇を眺める。
『おぉ、アリエッタ』
劇は淡々と進んでいく。
けど隣にいる伊崎くんが視界に入るとどうにも落ち着かない。
本当に三年前の人間と同じか怪しく思える。
正直整形したのかというほどだ。
あまりにも綺麗になってて、嫉妬してしまいそうになるくらい。
女の子よりも肌の手入れも行き届いているし、髪もツヤッツヤ。
私なんかよりも綺麗だ。
なんて、思っていると。
彼がこっちを少し横目で見ていた。
どうしよう。
不整脈。不整脈ってことにしよう!
「⋯⋯⋯⋯」
ドキドキする。
ぷるぷるな唇。
程よく湿った肌が私を狂わせる。
香水なのか何なのか、私の心臓の鼓動が早い。
少し彼は鼻で笑うと、静かに私の掌に指の感触。
「⋯⋯っ」
「⋯⋯⋯⋯」
集中できない。
駄目だ。このまま世界が止まって欲しい。
劇も終盤。
私の手は伊崎くんの分厚くてどこか何度も重ねたようにピッタリ手を繋いでいた。
「面白かったな、劇。
過去に戻ったアリエッタが報われたようで」
「う、うん!」
手を繋いだまま、少し肌寒い文化祭の屋台を歩く。
「s──白波、なに食べる?」
「焼きそばシェアしようよ!」
だめだ。
空気を壊せない。
この瞬間がずっと続けばいいなんて。
ちょっとでも気付かれたら、無意識に離されてしまうかもしれないから。
「これ一つ」
彼がそう言うと対応している店員が私をチラ見してニヤリと笑う。
や、やめてよ!!バレちゃう!
「女子校なのに焼きそばがあるなんて驚いた」
「最初は予定になかったんだけど、流石にお菓子や伝統芸能では面白くないんじゃないかって意見が出て」
人通りの激しいところから一本離れたところで、今は都合良くあると思える謎のベンチに座りながら通行人を見て他愛もない話。
「白波、書道のやつ見たぞ」
「本当?」
「あぁ、1位だったみたいだな」
「うん!頑張った!」
⋯⋯なんか繋がるような会話をしないかー!!
私め!
「確か奇跡って書いてたよな。
なんかあったのか?」
「あっ、私だけじゃなくて、人生ってもしかしたら誰かがくれた贈り物なんじゃないかって思って」
「⋯⋯なるほどな。
そういう見方もあるな」
「伊崎くんは人生ってどう考えてるの?」
「俺にとって?難しいな」
指で遊びながら、少し考えるように俯く伊崎くんは鼻で笑う。
「でも、経験させる為に俺達の人生ってのはあるんだと思う」
「経験?」
「あぁ。
例えば、金持ちの人生。
金持ちの人生は常に快楽があって、欲しいものがいつでも手に入って⋯⋯困らないだろう?
おそらくそういう人生を経験させたいんだろうなぁって考える。
逆に人殺しの人生もそういう理屈になる。
要は神になる為には全てを経験する必要があって、その過程なんだと思う。
俺達がこうやって賑やかなところで飯を食ってるのも、寒い風を頬に感じながら人通りを眺めるのも、全て必要な経験なんだろう」
思ったより真剣に返してくれる伊崎くんにちょっと驚く。
「じゃあ、伊崎くんの今回の人生は?」
そう訊ねると、少し戸惑ったようにはにかんで、下をチラッと見てから⋯⋯私の顔を見る。
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