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世界征服編
開戦
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ーーーー
[6月18日18:42分、東京駅周辺某ビルの屋上]
「懐遠様、これでよろしいでしょうか?」
後ろで深くお辞儀する羽織を着た一人の男。
その更に後ろに並び、殺気立てて一糸乱れぬ数百人の列を成す異能者たち。
そう。
まさに今日、終末を迎えておかしくないのである。
「てめぇら、準備は出来てねぇなんて言わねぇよな?」
少し明るさの残る空。
その仄かな光が肩につくしっとりした髪を照らす。
振り向きざま暗闇の中から彼らを覗くのは獲物を捉えた猛獣の眼光。
「準備は出来ております」
「ならいいがよ」
懐遠は満月に輝く夜空を見上げる。
「っ?」
一度下を向いた時。
神村真彩の母親である真子。
彼女が透き通った威厳ある声が響き渡る。
「来ます」
たった一言。
しかしその場の空気は一瞬で血と殺戮の準備は出来たとばかりに張りつめる。
「道士連中!!!」
華国ではいわゆる魔力を身体に纏わせて戦う事が一般である。
その為遠距離で戦うものが居ない。
だが、ここでは道士に当たる人間たちが魔法使いのような役目を果たしているのだ。
⋯⋯一斉に彼らは唱える。
「──、───、──⋯⋯ハッ!!」
数百人が一斉に杖を突き出し、先端に小さい法陣が浮き出る。
100以上の道士の力が集まる協力技である。
小さい法陣はやがて一つの巨大な膜を上空に作り上げる。
「神村家、法陣は各所準備できているか!?」
「問題ありません」
霊視した真子の言葉に懐遠は今か今かと待ち構える。
「さて⋯⋯世界の終末」
かつてあの化物にも言われたな。
ーー何かあったらその時は、日本に協力してくれるか?
ーーなんだそれ?
ーーお前ら華国はアレイスターによって本来あった高貴な精神性を削がれた。
だから野蛮に見える。
しかし本来は別にどの国の人間も変わらん。
⋯⋯ただ、アレイスターが関与したかしてないか。
それだけだ。
""世界の終末は必ず起こる""
""そういう風に出来てる""
「⋯⋯⋯⋯」
化物ってのは、死んでも化物なんだな。
覇旬。
何から何まで全部持っていきやがってよ。
「っ?」
突如、暗い世界を煌々と輝かす光。
まるで、氷河の水。
一見すると普通の飲水で体に良さそうにすら見えるが、実は細菌とバクテリアまみれの毒物。
流星のような儚い光。
その一点の輝きから────僅か数秒。
「⋯⋯政府に言ったらしいな、倅くん」
夜空に輝く複数の光り物。
恐らくミサイルだろう。
しかしそんなものお構いなしと言わんばかりに着弾したミサイルを受けてもフルシカトを決め込み、翠色に輝く隕石はもう一点の光だったものから一転⋯⋯巨大な姿に変わって懐遠を見下ろしている。
「我が天命に偽りなし!!」
「全てを守護する古狼よ!!」
「我らに絶対なる壁よ」
「星の加護を受けし力──今解き放つ!!」
「「「「法陣──五法明神・赤壁」」」」
法陣を管理する四人が詠唱の後発動させる。
その直後。
隕石と法陣は衝突する。
「うっ、すげぇ音だな」
こりゃあ⋯⋯天命在我様々だなぁ。
知らなかったら、まさに今日。
"世界が終わっていた"
「つっても、あの中身がなんだか分からんし」
カーテンに重石がぶつかっているよう光景だ。
膜はその強さに耐え切れずどんどん埋もれていく。
「法陣!もっと出力を上げろ!!
このままでは貫通するぞ!!」
怒鳴りつけるが、四人は必死の形相で訊ねる。
「しかし懐遠様!
これが全力です」
思わず真顔で呆然とするしかない懐遠。
「チッ⋯⋯!」
真子の方を向いた懐遠は訊く。
「他の要所はどうなってる?」
「同じような状況です。
全員が同じような事を申しています」
「俺が直接行くのはなしか?」
「⋯⋯それは個人的な意見でしょうか?」
「あぁ」
「あなたは要所を守る要人です。
無闇に動いてはなりません」
ポリポリ頭を荒々しくかいた後、懐遠は頭を冷やしヒビが入る法陣を見上げる。
「クソが。
どんだけ強えってんだよ、世界の終末ってのはよ」
*
時は遡り。
「よし、急いで正解だった。
そうだろ?皆の者」
翠色のエネルギーがやがて、一人の人型を象る。
出てきたのは腕を組み、仁王立ちの中年男。
猛々しい黄金の炎は全身を、そして、瞳をも燃え上がらせている。
「あら?
私は反対しましたよね?ガイルキム隊長」
右隣に象られた艷かな声とそれに違わない絶世の美女。
桜と薔薇のような色を漂わせ、その長い髪と身体つきを強調させる隊服を見せつけては⋯⋯脚を少し交差させ髪をいじり、不満げな表情で現れる。
「メリダ隊長、今は任務中ですから」
軍人さながらの立ち方、そして腰で手を組んでいる状態で象られていくのは金髪青目の美男子。
後ろだけ長くてふわりとしたその髪を靡かせる。
「おいおいロイド、それは俺への当てつけか?」
最後に象られるは、腕をおろし、意外にも正した姿勢で象られるていく雪肌と肩につく銀髪。
「まさか。オーウェンス先輩」
横目でオーウェンを見つめ、なんの気もないと伝えるロイド。
「総員地球へと向かう準備できたな?」
「「「アレイン」」」
「信者の力でアメーロで象られてるのは本体と変わらん。
くれぐれもヘマはするなよ?」
「「「アレイン」」」
「さて、今日──」
ガイルキムの言葉に全員一人一人の口元が釣り上がっていく。
「審判の時だ。
教義に則り、日本の全ての生命を断つ許可を得ている。
故に抜剣許可。
律法、並びに獅子の鼓動を含む神義の使用を許可する」
「へっ、なら、その殺した魂⋯⋯貰っても?」
「⋯⋯好きにしろ。
しかし浄化した上で取り込めよ?」
「もちろんダゼ」
次の瞬間。
翠色のエネルギーは動き出す。
「「「⋯⋯⋯⋯」」」
「では──」
動き出すとすぐに地球上空。
僅か数秒で一気に飛来する。
ミサイルが飛んでこようと、迎撃用に何かしているのだろうが、このエネルギー体は傷一つつかない。
唯一数分生き残っているのは、見えるか見えないほどの薄い膜である。
だが、それも直にヒビが奔り、決壊する。
音を立て、東京中心に落ちる。
その衝撃波は一気に広がり、都市部をほぼ壊滅させた。
そのエネルギー体は徐々に粒子となって空へ消え、残ったのは人影。
「では──これより始める」
絶望の言葉は、ガイルキムの口火によって切って落とされた。
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