【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏

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世界征服編

産まれてから初めての本気

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 みんな、昨日寝てしまったんや。
 許してください⋯⋯!!

 なん、、、、。
ーーーー



 時は少し前。  
 
 「おらァあっちで魂回収してくるわ。 
 メリダは?どうする?」

 「私は術式を展開してたあの人間たちが気になるからアッチかしらね?」

 指を指す方向を見てオーウェンスは鼻で笑って返事を返す。

 「なら、決まりだな」

 短く返し、二人の騎士は黄金のオーラと共にこの場から離れていく。

 「ロイド・ウェルナンデス。
 どうする?」

 「自分も皆さんとは違う方向でやらさせていただきます」

 ガイルキムに対して一礼するロイド。

 「お前は少しオーウェンスを見習え。
 堅すぎる」

 「隊長に沿って行動していたのですが、いけなかったでしょうか?」

 少し顎を上げて考えるガイルキム。

 「いや、堅すぎても信者たちも人間だ。
 便宜を図ってやる事も大事だ」

 「そのお言葉、大事に仕舞わせていただきます」

 そう発言しロイドもこの場から離れていく。

 「んん⋯⋯駄目そうだな」

 肩をすくませガイルキムは苦笑いを浮かべるのだった。







 

 「到着しましたか」

 自分たちが落ちてきた事による被害で様々な死体が道に転がっているのを目にするロイド。

 「皆様の人生に、幸あらんことを」

 片膝をつき、ロイドは神聖力を使用して死体たちに祈る。

 「やはりこちらは既に難しそうですかね」

 爆心地の中心だ。
 既にほとんどの人間は死んでいる。

 道路の中心に立つロイドの視線は、業火に焼かれている死体と爆発し燃え上がる車。

 そして無造作に落ちてくる瓦礫の破片と標識だった。

 「あなた達が黒い髪を持っていなければ」
  
 そうボソッと小声で言い放ったつもりだった。

 「罪の意識はあるようだな」
 
 ピーンと弾くライターの音。
 続けてやってくるジュオッという小さい細火が煙草の先端に灯る。

 振り返らず、ロイドは腰で組んだまま告げる。

 「貴殿は私と敵対する人間ですか?」

 「⋯⋯皮肉か?
 もし敵対しないと言ったら?」

 そこには、オールバックの白髪をした⋯⋯神々しい大男。

 "草薙狂仁"──。

 白スーツを着こなし、煙草を吸う草薙。

 「貴方は外国の方ですか?
 私達の国に居ても遜色ないほど美しい外見をされておりますが」
 
 「⋯⋯男は趣味じゃねぇ」

 唇を尖らせ、嫌そうな顔でそっぽを向く草薙。

 「短絡的な思考ですね。
 あまり好ましくありませんが」

 「男は短絡なくれぇが丁度良いのさ」

 「そうでしょうか?
 理知的で長期的思考が出来る男性は素晴らしいと私は考えておりますが」

 「そうかぁ?
 俺は全く思わねぇ質だな。 

 ⋯⋯雄だしな」

 「貴方はオーウェンスという知り合いにそっくりですね」
 
 「誰だそりゃ?
 外人っぽいが」

 「その全て男だからという方便で⋯⋯なんて思考は捨ててしまっている所が」

 「──ぷっ!」
  
 ロイドの言葉に思わず噴き出す男。
 
 「何がおかしいんです?」

 首を傾げ訊ねると。

 「いいか?
 人間は昔から本能は何も変わってない。

 男と女。
 役割、どう生きていくかの生存方法。

 なにもな。
 現在存在する全てのルールは後付けに過ぎない」

 「⋯⋯なるほど?
 仰りたいことは理解出来ます」

 「俺達男は女を孕ませ、種族の繁栄の為に存在している。

 しかし男は元来、孕ませるのだけが目的ではない。

 女を守って最高の環境を作ってやることが役目。

 そしてその上で強くないといけない。

 だから男は強くないと駄目だ。
 軟弱な男はいずれボロを出す。

 短絡で結構だ。
 強い他に思考はいらない。
 最近の女は調子に乗ってるがな」

 「それでは進化は致しませんが?」

 「そもそも結婚だ〇〇だなんてたかがここ数百年の話だろう?

 昔の人類は生肉を食っていたらしいじゃないか。

 腸が長かったらしい。
 どれくらい掛かったんだっつー話だ。
 そんなに進化しねぇよ。
 人間の本能はな」

 「野蛮ですね」

 「女も大概だろ。
 というより、お前はどうせ彼女はいねぇだろ」

 「仰る通りです」

 「その調子じゃあ、てめぇは独身で終わりだ」

 「何を言いますか。
 私は昔モテていましたし、今は騎士という役職の下、職務を全うする必要がありますので⋯⋯」

 「あーあーー!!言い訳はいらねぇ。
 どうせてめぇは長続きしねぇよ」

 本当にオーウェンス先輩のようだ。

 話の腰を折る草薙に若干苛立ちを覚えるロイド。

 「それで?
 こうして私を引き留めることが目的ですか?」

 知っている。
 この人間はさっきから、時間掛けて留まらせようとしている。

 「んぁ?いや?」

 首を傾げながら煙草を吸いながら返ってくる返答にロイドはちんぷんかんぷんな表情を見せる。

 「え?」

 「とりあえず言えるのは、俺はまだ、俺を倒せる人間にあったことがない。

 ──あ、三人⋯⋯かな?」

 「三人もいらっしゃると?」

 「あぁ。しかしだ。

 その三人もまともに本気で殺りあってねぇからよ、初めてなんだ」

 ロイドは直感的に理解している。
 
 この人間は、オーウェンス先輩と同じタイプだ。

 しかも。
 神聖力がない状態で言えば⋯⋯こちらの方が当たり前のように上だ。

 もし、"こちらに居たら"。
 いや。
 
 自嘲気味に鼻で笑うロイド。

 「日本の治安は俺も守らないといけない立場だ。

 腐っても風間のおやっさんから金をしこたま貰ってるしな。

 それに、てめぇが来だしたってことは、塔の出現もそう遠くないか、もう見ている可能性が高い」

 「⋯⋯知っているのですか」

 「塔の事か?概要だけな?」

 心底驚いた様子のロイド。

 まさか閉鎖しているこの星の人間が塔を知っているなんて。

 「それで私を止めようと?」

 「まぁそんな感じだな」

 「一人では力不足だと思いますが」

 そう発した瞬間、草薙は掌で顔を覆ってゲラゲラ笑い出す。

 「ぇヤッハハハハハハ!!!!
 あ~⋯⋯おもれっ」

 「⋯⋯⋯⋯」

 「だから言ったろ?真面目君──。
 
 "本気、出した事ないんだって"」

 「私ならそれを引き出せると?」

 「⋯⋯そう信じてる」

 顎をゆらゆら突き出して煽ってくる。

 「私はよく頭が堅いと言われますので⋯⋯」

 その場から姿を消すロイド。
 数秒後、突然細い風が草薙の鼻を掠める。

 ──ドゥン!!
 腰辺りで手を組んだまま、片手を上げて草薙の背後に無駄のない立ち姿。

 高速でやってくる手刀での横一閃。

 「もしかしたらすぐに死んでしまうもしれません」
 
 無防備にロイドの手刀で腰辺りを斬られ、草薙はそのまま足を刈られて宙に浮く。

 「私は──あまり加減ができませんので」
 
 落ちてくる草薙の顔面。
 思い切り振り上げた脚で規則正しく、一切の無駄がない軌道で垂直に降ろす。

 「凄い音ですね」

 余波だけで10m規模の蜘蛛の巣状に広がるヒビと衝撃波。

 ロイドは見下ろす事なく足を規則正しく上げ、振り返らず空を仰ぐ。

 「やはりこの世界の人間は大したことないですね。

 全力⋯⋯」
 
 ロイドは草薙の言葉を頭の中で反芻し、天を仰ぐ。

 陛下。
 私も、もう全力を出す事などとうの昔に忘れてきました。

 どうかこの儀式が終わったら、どうか。
 
 

































 """ピーン"""
 
 その音で、ロイドの頬がピクッと動く。

 今の音は?
 さっき聞いたはずですが。

 見下ろすとそこには大の字で地面に埋まりながらも、この世で最も悪魔らしい歪んだ顔の草薙が狂気混じり嗤っていた。

 「オイ、お前の名前は」

 「⋯⋯⋯⋯ロイド・ウェルナンデスですが」

 「俺の名前は草薙狂仁って言うんだ」
 
 顔面に⋯⋯確かに一撃脚でめり込ませたハズですが?

 血が流れている程度で済んでいる?

 ──まさか異能者?

 ロイドの目に映るは⋯⋯狂ったように飢えた⋯⋯飢えた狂気。

 「ハァァ゛ァ゛⋯⋯俺がなんで日本の王と言われているか──知っているか?」
 
 切り傷から血が神々しい顔の至るところへと流れている中、草薙は変顔をしているのかという程嗤いながら新しい煙草をくわえ、火をつける。
 
 その時、突如草薙の携帯の着信音でEDMが流れる。

 嗤う。
 上機嫌の草薙に叩き込むような重低音のバスドラム。

 「教えてやる」

 三日月のように口元は吊り上がり、草薙は空を見ながら人差し指で煙草を真上に弾いた。

 「⋯⋯ッ!?」

 ヒュンと打ち上がる。
 それを瞬時に避けたロイドだが。

 瞬間──本能が勝る。

 ⋯⋯まずい!!

 宙を、火花が散らしている。
 空間が、どこもかしこも破れる。

 実際にそうではない。
 しかしロイドの目には映っている。

 至る所がこの例外の力によって⋯⋯雷そのものが散っている光景が。

 「まず──」

 大振りだ。
 手刀の形を作り上げ、振り上げているだけ。

 ──"修羅を得よ"。

 しかし違う。
 今まで平然としていたロイドの顔は酷く引き攣り、攻撃ではなく防御へと走る。

 "我が心なる剣は手刀である"

 「⋯⋯っ」

 "律法──ヘルムート"

 "死ぬ"。
 あれを貰ったら。

 常軌を逸した速度のせいで生まれる謎の泡が、大量に弾けながら降りてくる。
 
 ピキッ──ギャリィィィンッッ!!
 手刀はロイドの盾を容易に貫通し、そのまま地面にまで一直線。

 「俺はそもそも、お前より弱いとは言ってない」

 「ガハッ⋯⋯!!」

 何故だ?
 私の律法は──っ??

 そこで気付く。
 自分の体からドンドン神聖力が抜けていっていることに。

 見上げるロイド。
 
 燃えている?

 草薙の体内には、頭から足元に至るまで血液のように白い炎が心臓の代わりなような脈を打っていた。

 剣を。

 ロイドは自身のプライドである剣の柄に手を掛けていた。
 
 500年以上の研鑽を積んだアレイスターの剣術。

 ロイドは騎士の中で最も練度が高い。
 
 しかし脳裏に浮かぶ。
 ──"まずい"。

 目の前の白い鬼。
 これを倒す為には"抜く"しかない。

 「っ!?」

 しかしこの鬼は知っている。
 カキン、と。

 剣を抜かせない。
 柄を手で抑え。

 「⋯⋯ッ!!貴様!」

 「次──」

 柄を抑えた草薙はロイドの鼻先に片膝めり込めせ、その勢いで地面を踏み込む。

 その余波はロイドですら信じられないほど。

 沈み込む。
 それは一本の槍。
 後ろ足から突き出す右腕の全てに至る力の流れは一本の正確な直線。

 "神門流極真空手──王蹄おうてい"

 とてつもない奔流が収束し、瞬時に爆発する掌打。

 腹にめり込み、完全なる風穴が開く。

 自動で癒えるロイドの身体だが、完全に意識は強者へと移り変わっていく。

 この人間は必ず殺さなければならない。

 そこでロイドは神聖力で応戦しようとしたのだが。

 「⋯⋯っ?」

 瞬時に拳を見つめるロイド。
 
 有り余る神聖力。
 今まで底など見たことすらなかった上澄みの中の上澄み。

 地球の概念で言えば、トップオブトップのエリート。

 その彼は今、初めての弱体化を受けていることに気付いたのだ。

 強いが故に気付かない。
 自分が強いのが当たり前だから。

 そして、相手の分析をしなかった⋯⋯それが原因。

 「真面目な割には見る目が無いな」

 草薙お得意の極真空手。
 
 「オラぁ」

 「うぷッ⋯⋯」

 悶絶するロイド。
 ただのリバーブロー。
 
 しかし、相手が相手。

 「おら、次ィィィ!!!!」

 右、左。
 草薙の狂笑は止まらない。

 「最高だなァ?」

 何故か反応出来ないロイドの首に腕を引っ掛け、膝が入る。
 
 「ぐうっ!」

 「産まれて初めてだよ──






















 全開はァ!!」

 そのまま正拳突き。
 正真正銘──産まれてから初めての本気の突き。

 恐ろしいほど速く空を飛び、近くの壁に勢い良く埋まっていくロイド。

 「おー⋯⋯パラパラ言ってやがる」

 と、草薙は自分の拳を見つめる。

 やっぱりまだまだだな。
 あとどれくらいアイツが持つのか気になるな。

 「ぐっ⋯⋯ぅぅっ!」

 瓦礫から何とか這い出てくるロイド。
 
 な、なんだ?
 この男は──!!!

 魔力もない。
 神聖力もない。

 なのになんで⋯⋯私に攻撃が通るんだ!?

 「っ、ゴボッッ!」

 あの変な炎か?

 「おぉ、色男が台無しだぜ?」

 吐血混じり。
 見上げると、草薙の嗤う顔。

 「なんだなんだァ?色男。
 やっぱり男は強くないとな?

 しっかりこう、突きの練習しねぇと」

 ジャブを打つように連打を叩いてみせる。

 「ば、バカにして⋯⋯!」

 「所詮──借り物の力だろ」

 「⋯⋯っ!?」

 突然冷酷に見下ろす草薙。

 「神聖力」

 「な、なぜそれを」

 「知ってるからな。
 創一が言ってた」

 だ、誰だ?その男は?

 「まぁそんこたぁいいんだ?
 さて、騎士なんて言うからどんなもんかと思えば、俺に一方的に殴られて終わりか?」

 これなら真壁銀譲の方がまだ根性あるんだがなぁ?

 「殺せ⋯⋯」

 「あァ?」

 傾げながら理解できないと草薙は見下ろす。

 「殺せぇ!!!」

 「おーし了解だァァ!!!」

 歪んだ顔から放たれる本気の一撃。
 
 「ふぅ。
 久しぶりに本気を出した」

 煙草に火をつける草薙の真下には、クレーターが無事出来上がっており、そこにはローブだけが残っていた。

 「ふぅ⋯⋯ん?」

 
 【第十宇宙・第十惑星地球を認知】


 吸う草薙の手は止まる。

 「やはりそうか。
 これが塔ってやつか」

 確かゲームみたいに通貨で色々な事ができる全宇宙に集められた化物揃いの世界。

 要約すると創一がそう言ってたな。

 深く吸う草薙。

 「だとすると、俺達にもその通貨ってのが付与されるのか?

 いや、反応を見るに認知したという文言か」

 創一が別れ際言ってたな。

 "塔には勢力がある。
 余計な刺激はしない事だ⋯⋯ってな"

 「さて」

 地面に落ちたスーツの上着を拾い上げる。

 「あのガキには世話になったな」

 エリクサーを取り出す草薙は呟く。

 「まさか、日本がこうなっていくなんて⋯⋯俺としたらこれ以上ない娯楽だ」

 ──だが。

 草薙は少し寂しそうに笑う。
 空を仰ぎ、ロイドと同じように呟く。

 「強そうなアイツも、弱かった。
 もしアイツが完全な状態で来ていたなら、もっと楽しかったのかと思うと」

 上着を肩に引っ掛けた草薙はエリクサーを飲み干し、業火に包まれる東京のかの何処かへと溶け込み、消えて行った。



ーーーー
あとがき!

またしてもレビューしてくれた心優しい読者の方が!
読んだ時に職場の自販機に余所見してぶつけてしまった作者です。
 
いつもありがとうございます!
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感想 14

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