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白波ホールディングス編
てか俺忘れてた
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「伊崎くんの家は⋯⋯そ、その」
「オブラートに包む必要はないさ。俺の家は貧乏だ」
今朝両親と話しながら、少しずつ思い出してきた。
今は中学最後の夏休みの時期だ。
過去の俺は、こっから勉強して近くの公立校に進学する予定だった。
⋯⋯生憎と色々あって進路は変わったが。
「そうなんだね」
「そっちはエラい高級そうな服を着てるじゃないか」
ヘルメスだかどっかのやつだったか?
無地ながら質感が違う。
「い、いる?」
「いらん」
返事を返したらオドオドしたままそう返してきやがったので、即答で拒否る。
「でも、伊崎くんのお母さん達を何回か見たことがあってさ」
「えぇ。そうなのか」
「その時、みんな仲良さそうで──羨ましかったんだよね」
「そっちのご両親はお金があるだろう」
「まぁ⋯⋯その辺りはなんとなく分かってるけど、僕としては、ウチよりも伊崎くんの家が羨ましい⋯⋯って、言うのは烏滸がましいかな。あはは」
「まぁ価値観なんてのは人それぞれだから、それも間違いではないし、烏滸がましいなんてもんはない。ただ、隣は青く見えるってやつだろう」
「そうかも」
ニコッと笑って、コイツはビニール袋にある棒状の野菜が入った物を食べだした。
「いらんぞ」
「まだ何も言ってないのに」
ふふと上品に笑う。
コイツ、目があった瞬間に俺が食べたそうだろうなみたいな顔したからな。拒否だ、拒否。
「お風呂も入れてないの?」
「ん?まぁな」
「んー⋯⋯」
「どうした?」
「もし良かったらだけど、ウチに来る? あくまで応急処置程度にしかならないし、その場しのぎって感じだけど」
「こんな浮浪者以下みたいなやつがそっちの家なんていってみろ。多分、ご近所さんから総ツッコミだろうさ」
「で、でも⋯⋯」
「というか、どうしてここまで気にしてくれるんだ? 俺そっちになんかした事あったっけ?」
親切すぎて逆に怖いくらいだ。
それに、なんでこんなに見覚えがあるんだろう?
「む、昔に⋯⋯」
「昔? 俺がなんかやったのか」
言いたくなさ気だが、何処か恥ずかしそうにゆっくりと頷いた。
「そっか。なら、お言葉に甘えようかなぁ」
「ほ、ほんと!?」
「こんな汚いやつが家に行くだけでなんでそんな嬉しそうなんだよ」
ガタッと勢い良く立ち上がるほど嬉しいらしい。
んー⋯⋯ていうか、何処だったかな⋯⋯。
*
「え! お父さん!?」
「おー"紗季"。ん?」
「⋯⋯どうも」
おい。アイツ、家に今居なかったんじゃないのかよ。
めっちゃ気まずいんだけど。
「君は⋯⋯んー⋯⋯彼氏⋯⋯ではなさそうだな」
うん。上から下まで品定めしてからそう言われるとさすがの俺もムカつくところだが、まぁ仕方ない。
これが今の俺の評価だ。
こっちに来る前なら、まぁ⋯⋯何処かの令嬢だの、高級娼館の一番手の女が俺の相手をしてくれていたもんだが。
「伊崎くんに失礼でしょ!パパ!」
「いや、そんなつもりは──」
「すみません。自分でも立場は分かっているつもりなので。⋯⋯ではこれで。パン、ありがとな」
親父さんの方に軽く頭をさげ、くるっと背を向けて玄関の方へと向かおうとすると、凄い力で掴まれた。力強っ。
「パパ!!謝って!! 伊崎くんは悪くないの!」
「おい、そんな擁護する必要はないって。お前のお父さんは正しい判断をしているだろう」
と俺がそう言ったところで、コイツのお父さんが先程とは違って結構な威圧感高めでじっと真っ直ぐ視線が向かっていることに気付く。
「どうか⋯⋯しましたか?」
「いや。おーい久美子ー」
片手を上げて誰かの名前を呼ぶと、すぐに「はーい」とお淑やかそうな女性がやってくる。
「メイドでも呼んで、彼を綺麗にしてやってほしいんだ。それと、今日は夕食が一つ増えるとも付け加えといてくれ」
「あら⋯⋯そう言っとくわね」
チラッと俺の方にウインクして去っていく。
俺も空かさず会釈を返した。
「紗季ちゃん? ちょっと向こうで待っててくれないか?パパはね?」
「嫌だ! 伊崎くんに何言うかわからないもん!」
「いや、言うとおりにした方が良さそうだ」
「え、」
いやそんな悲しい顔すんなよ。
子犬か。ちょっと心臓が動きかけたわ。
「紗季ちゃんにはー⋯⋯パパと旅行行こう!!」
「えー、ママは?」
「パパじゃ嫌なのか!?そうなのか!?これじゃ親離れが──」
「わ、わかった!!あっち行って来ればいいんでしょ!!」
俺の前で恥ずかしそうなのか、慌ててこの場から二階の階段へと走り去っていった。
と、居なくなった途端。アイツの視線が更に集中している。
ハァ。
こりゃ面倒事が一つ増えそうだな。
誰も居なくなったこの場は、突然凍ったように冷え込み、重く沈む。
「名前は?」
机の上で両肘を付き、俺に言ってくる。
「伊崎湊翔」
「伊崎くん。君はウチの娘にどう接触しているんだね?さっきは流したが」
「ただ、道端で死んでいたら娘さんが手を差し伸べてくれただけです。 あっ、一応身の潔白の為に申し上げますが、狙ってやった訳ではありませんし、娘さんとどうこうする訳でもない事は伝えておきます」
「当たり前だ。ウチの娘はそう簡単にやらん」
だろうな。その馬鹿冷たい顔でも見てりゃ嫌でもわかるっつーの。
「俺、帰った方がいいのでは? こっちとしても、こんな豪華な知り合いの家では窮屈ですが」
「娘がそうではないからな」
「そうですか」
返事を返すと、更に警戒度が上がったように思える。
ガン飛ばしがガチ過ぎる。一体俺が何をしたっていうんだよ。
「あのー、俺一応中学生なんで、そんな強い視線は困るんですけど」
「伊崎くん、本当に中学生かな?」
「⋯⋯どういう意味ですか?」
「逆に気になってきたんだよ。今の反応、ウチが何なのか本当に知らないみたいだし、かと言って娘とどうこうなろうとしていないのは言動、いや顔を見ればすぐに分かる。その反応、思春期特有の逆張りをしたがる子供でもなさそうだ⋯⋯まぁね、落ち着きようが中学生のソレではないって事だ」
まぁ、豪華なんて言ったが、こんな場所死ぬほど見てきたしなぁ。メイドも居たし。
──まぁホムンクルスだけど。
「お世話になっといてなんですが」
「ん? 出来る限りは聞いてあげるよ。お金かい?」
「いいえ? そんなわけないじゃないですか」
「おっと。検討違いだったようだ」
「苗字を教えてもらえませんか?」
「⋯⋯うちかい?」
アイツ、どっかで見た事あんだよなー。
何処でだ? 紗季って名前も変だ。
アイツどう考えても見た目男じゃねぇか。
「ええ」
「──白波だ」
「ありがとうございます」
小刻みに頷き、頭を下げる。
「手遅れだがまぁなんだ、あくまで今はお客さんだ。うちのもてなしを受けていってくれ。紗季が騒ぐからな」
「はい、ありがとうございます」
*
そうして。
すぐにメイドさん(糞どタイプ)に案内された。
こっちの見た目を見て呆れと同情が含まれた感じで案内された俺は、この人と今後関われないと悲しげにシャワーを浴びていた。
ーーシャアアアア
「──なっさけね」
バカみたいに汚い全身が、水で流れていく。
俺は最強の存在だったのにな。
今じゃあんなドタイプの女一人も引っ掛けられないなんてな。
「⋯⋯?」
キュッと。水を止めた俺は、ハッとする。
いや。俺は何やってるんだ?
雫が排水口に流れていくのを眺める俺は、"気付く"。
「いや、馬鹿か俺は」
錬金術師だぞ?
そう、大陸全土が求め、畏怖し、敬愛された存在。
そんな俺がなんで普通の生活をしようとしているんだ?
そう。過去に戻った。そこまではいい。
ただ違うのは、俺は錬金術師だって事だ。
「─────あるな」
ゆっくりと両目を閉じ、そして開く。
あの頃にはなかったーー魔力が内観しハッキリとあることが分かる。
「ん? そうだ」
ーー『戻った時に使えるように亜空間にでもしまっとくか』
「あぁ⋯⋯あったな」
俺の魔力に呼応し、いつでも取り出せる亜空間。
「ん? ⋯⋯あ、あれ?」
いくら頑張っても全く亜空間は開かない。
「んん? 何故だ?」
ガサゴソ何もないところをイジイジする俺。
数分の末、亜空間は開かず。
「ふざけんな!!!!」
「ど、どうかされましたでしょうか?」
壁をぶっ叩くと、外にいたであろうメイドが深刻そうな声で聞いてくる。
「あ、あっ、すいません⋯⋯あはは⋯⋯」
ハッとした俺は一生懸命下手に謝る。
くそっ──あん?
ーー『ケルビン様?亜空間の技術を天秤に乗せてはいただけませんか?』
ーー『ハッ! この国の令嬢全部と天秤に合うのか?無理に決まってるだろ』
ーー『いやはや。ケルビン様の境地ほどではなく、小さな物でも──』
ーー『まぁ⋯⋯保険はあるしな。俺の亜空間で、ちっぽけな魔力量で開くわけねぇ──』
脳によぎる。
最悪で傲慢な記憶。
今の俺にはそう感じてしまう。
「てーめぇ⋯⋯⋯⋯!!」
おい数十年前の俺よ。
なんて恥ずかしい。
自分の魔力量が足らんから開かないなんて。
糞すぎるにも程があるだろ!!
「あ、いや待てよ?」
今の俺の全魔力は正味全盛期を10としたら、0.000001とかそんなものだ。
少なく聞こえるだろう?
だが、全盛期の俺が異常なだけだ。
盗られない為にそんだけ膨大な量を必要としただけだ。
「確か──」
するとガコン、と眼前に現れる見覚えのある空間。
「アタリだな」
数百年前、初めて出来たエリクサーを数本とっといたミニ空間があったはず。
「ふっふふふふ⋯⋯」
良し、なんとかなったぞ。
これで──ん?
「こんなところで飲んだらまずいな」
あくまで全魔力を預けないと開かないミニ亜空間ってだけだ。
すぐにしまってさっさと体を洗って風呂から出た。
ちなみに──5回は洗わないと汚れの下にある皮膚すら見えんかったのはココだけの話だ。
「オブラートに包む必要はないさ。俺の家は貧乏だ」
今朝両親と話しながら、少しずつ思い出してきた。
今は中学最後の夏休みの時期だ。
過去の俺は、こっから勉強して近くの公立校に進学する予定だった。
⋯⋯生憎と色々あって進路は変わったが。
「そうなんだね」
「そっちはエラい高級そうな服を着てるじゃないか」
ヘルメスだかどっかのやつだったか?
無地ながら質感が違う。
「い、いる?」
「いらん」
返事を返したらオドオドしたままそう返してきやがったので、即答で拒否る。
「でも、伊崎くんのお母さん達を何回か見たことがあってさ」
「えぇ。そうなのか」
「その時、みんな仲良さそうで──羨ましかったんだよね」
「そっちのご両親はお金があるだろう」
「まぁ⋯⋯その辺りはなんとなく分かってるけど、僕としては、ウチよりも伊崎くんの家が羨ましい⋯⋯って、言うのは烏滸がましいかな。あはは」
「まぁ価値観なんてのは人それぞれだから、それも間違いではないし、烏滸がましいなんてもんはない。ただ、隣は青く見えるってやつだろう」
「そうかも」
ニコッと笑って、コイツはビニール袋にある棒状の野菜が入った物を食べだした。
「いらんぞ」
「まだ何も言ってないのに」
ふふと上品に笑う。
コイツ、目があった瞬間に俺が食べたそうだろうなみたいな顔したからな。拒否だ、拒否。
「お風呂も入れてないの?」
「ん?まぁな」
「んー⋯⋯」
「どうした?」
「もし良かったらだけど、ウチに来る? あくまで応急処置程度にしかならないし、その場しのぎって感じだけど」
「こんな浮浪者以下みたいなやつがそっちの家なんていってみろ。多分、ご近所さんから総ツッコミだろうさ」
「で、でも⋯⋯」
「というか、どうしてここまで気にしてくれるんだ? 俺そっちになんかした事あったっけ?」
親切すぎて逆に怖いくらいだ。
それに、なんでこんなに見覚えがあるんだろう?
「む、昔に⋯⋯」
「昔? 俺がなんかやったのか」
言いたくなさ気だが、何処か恥ずかしそうにゆっくりと頷いた。
「そっか。なら、お言葉に甘えようかなぁ」
「ほ、ほんと!?」
「こんな汚いやつが家に行くだけでなんでそんな嬉しそうなんだよ」
ガタッと勢い良く立ち上がるほど嬉しいらしい。
んー⋯⋯ていうか、何処だったかな⋯⋯。
*
「え! お父さん!?」
「おー"紗季"。ん?」
「⋯⋯どうも」
おい。アイツ、家に今居なかったんじゃないのかよ。
めっちゃ気まずいんだけど。
「君は⋯⋯んー⋯⋯彼氏⋯⋯ではなさそうだな」
うん。上から下まで品定めしてからそう言われるとさすがの俺もムカつくところだが、まぁ仕方ない。
これが今の俺の評価だ。
こっちに来る前なら、まぁ⋯⋯何処かの令嬢だの、高級娼館の一番手の女が俺の相手をしてくれていたもんだが。
「伊崎くんに失礼でしょ!パパ!」
「いや、そんなつもりは──」
「すみません。自分でも立場は分かっているつもりなので。⋯⋯ではこれで。パン、ありがとな」
親父さんの方に軽く頭をさげ、くるっと背を向けて玄関の方へと向かおうとすると、凄い力で掴まれた。力強っ。
「パパ!!謝って!! 伊崎くんは悪くないの!」
「おい、そんな擁護する必要はないって。お前のお父さんは正しい判断をしているだろう」
と俺がそう言ったところで、コイツのお父さんが先程とは違って結構な威圧感高めでじっと真っ直ぐ視線が向かっていることに気付く。
「どうか⋯⋯しましたか?」
「いや。おーい久美子ー」
片手を上げて誰かの名前を呼ぶと、すぐに「はーい」とお淑やかそうな女性がやってくる。
「メイドでも呼んで、彼を綺麗にしてやってほしいんだ。それと、今日は夕食が一つ増えるとも付け加えといてくれ」
「あら⋯⋯そう言っとくわね」
チラッと俺の方にウインクして去っていく。
俺も空かさず会釈を返した。
「紗季ちゃん? ちょっと向こうで待っててくれないか?パパはね?」
「嫌だ! 伊崎くんに何言うかわからないもん!」
「いや、言うとおりにした方が良さそうだ」
「え、」
いやそんな悲しい顔すんなよ。
子犬か。ちょっと心臓が動きかけたわ。
「紗季ちゃんにはー⋯⋯パパと旅行行こう!!」
「えー、ママは?」
「パパじゃ嫌なのか!?そうなのか!?これじゃ親離れが──」
「わ、わかった!!あっち行って来ればいいんでしょ!!」
俺の前で恥ずかしそうなのか、慌ててこの場から二階の階段へと走り去っていった。
と、居なくなった途端。アイツの視線が更に集中している。
ハァ。
こりゃ面倒事が一つ増えそうだな。
誰も居なくなったこの場は、突然凍ったように冷え込み、重く沈む。
「名前は?」
机の上で両肘を付き、俺に言ってくる。
「伊崎湊翔」
「伊崎くん。君はウチの娘にどう接触しているんだね?さっきは流したが」
「ただ、道端で死んでいたら娘さんが手を差し伸べてくれただけです。 あっ、一応身の潔白の為に申し上げますが、狙ってやった訳ではありませんし、娘さんとどうこうする訳でもない事は伝えておきます」
「当たり前だ。ウチの娘はそう簡単にやらん」
だろうな。その馬鹿冷たい顔でも見てりゃ嫌でもわかるっつーの。
「俺、帰った方がいいのでは? こっちとしても、こんな豪華な知り合いの家では窮屈ですが」
「娘がそうではないからな」
「そうですか」
返事を返すと、更に警戒度が上がったように思える。
ガン飛ばしがガチ過ぎる。一体俺が何をしたっていうんだよ。
「あのー、俺一応中学生なんで、そんな強い視線は困るんですけど」
「伊崎くん、本当に中学生かな?」
「⋯⋯どういう意味ですか?」
「逆に気になってきたんだよ。今の反応、ウチが何なのか本当に知らないみたいだし、かと言って娘とどうこうなろうとしていないのは言動、いや顔を見ればすぐに分かる。その反応、思春期特有の逆張りをしたがる子供でもなさそうだ⋯⋯まぁね、落ち着きようが中学生のソレではないって事だ」
まぁ、豪華なんて言ったが、こんな場所死ぬほど見てきたしなぁ。メイドも居たし。
──まぁホムンクルスだけど。
「お世話になっといてなんですが」
「ん? 出来る限りは聞いてあげるよ。お金かい?」
「いいえ? そんなわけないじゃないですか」
「おっと。検討違いだったようだ」
「苗字を教えてもらえませんか?」
「⋯⋯うちかい?」
アイツ、どっかで見た事あんだよなー。
何処でだ? 紗季って名前も変だ。
アイツどう考えても見た目男じゃねぇか。
「ええ」
「──白波だ」
「ありがとうございます」
小刻みに頷き、頭を下げる。
「手遅れだがまぁなんだ、あくまで今はお客さんだ。うちのもてなしを受けていってくれ。紗季が騒ぐからな」
「はい、ありがとうございます」
*
そうして。
すぐにメイドさん(糞どタイプ)に案内された。
こっちの見た目を見て呆れと同情が含まれた感じで案内された俺は、この人と今後関われないと悲しげにシャワーを浴びていた。
ーーシャアアアア
「──なっさけね」
バカみたいに汚い全身が、水で流れていく。
俺は最強の存在だったのにな。
今じゃあんなドタイプの女一人も引っ掛けられないなんてな。
「⋯⋯?」
キュッと。水を止めた俺は、ハッとする。
いや。俺は何やってるんだ?
雫が排水口に流れていくのを眺める俺は、"気付く"。
「いや、馬鹿か俺は」
錬金術師だぞ?
そう、大陸全土が求め、畏怖し、敬愛された存在。
そんな俺がなんで普通の生活をしようとしているんだ?
そう。過去に戻った。そこまではいい。
ただ違うのは、俺は錬金術師だって事だ。
「─────あるな」
ゆっくりと両目を閉じ、そして開く。
あの頃にはなかったーー魔力が内観しハッキリとあることが分かる。
「ん? そうだ」
ーー『戻った時に使えるように亜空間にでもしまっとくか』
「あぁ⋯⋯あったな」
俺の魔力に呼応し、いつでも取り出せる亜空間。
「ん? ⋯⋯あ、あれ?」
いくら頑張っても全く亜空間は開かない。
「んん? 何故だ?」
ガサゴソ何もないところをイジイジする俺。
数分の末、亜空間は開かず。
「ふざけんな!!!!」
「ど、どうかされましたでしょうか?」
壁をぶっ叩くと、外にいたであろうメイドが深刻そうな声で聞いてくる。
「あ、あっ、すいません⋯⋯あはは⋯⋯」
ハッとした俺は一生懸命下手に謝る。
くそっ──あん?
ーー『ケルビン様?亜空間の技術を天秤に乗せてはいただけませんか?』
ーー『ハッ! この国の令嬢全部と天秤に合うのか?無理に決まってるだろ』
ーー『いやはや。ケルビン様の境地ほどではなく、小さな物でも──』
ーー『まぁ⋯⋯保険はあるしな。俺の亜空間で、ちっぽけな魔力量で開くわけねぇ──』
脳によぎる。
最悪で傲慢な記憶。
今の俺にはそう感じてしまう。
「てーめぇ⋯⋯⋯⋯!!」
おい数十年前の俺よ。
なんて恥ずかしい。
自分の魔力量が足らんから開かないなんて。
糞すぎるにも程があるだろ!!
「あ、いや待てよ?」
今の俺の全魔力は正味全盛期を10としたら、0.000001とかそんなものだ。
少なく聞こえるだろう?
だが、全盛期の俺が異常なだけだ。
盗られない為にそんだけ膨大な量を必要としただけだ。
「確か──」
するとガコン、と眼前に現れる見覚えのある空間。
「アタリだな」
数百年前、初めて出来たエリクサーを数本とっといたミニ空間があったはず。
「ふっふふふふ⋯⋯」
良し、なんとかなったぞ。
これで──ん?
「こんなところで飲んだらまずいな」
あくまで全魔力を預けないと開かないミニ亜空間ってだけだ。
すぐにしまってさっさと体を洗って風呂から出た。
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