【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏

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白波ホールディングス編

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 「ねぇ、気持ちいい?」

 「っ⋯⋯!」

 まるで一生時が止まっているみたいだ。

 いつも理性的な筈なのに。
 大人であろうといたのに。
 自分には無理だと分かっていてもこうして──。

 「また大きくなってる」

 目の前に、誘うように舌を覗かせる憧れの女性が胸の中にいる。

 彼女の瞳は蕩けそうな程潤んでいた。
 妖艶な鎧を纏っていた彼女。
 でも、そう言った後、首に手を回していた彼女は少し動いたのち──身じろぐ。

 声も出ていなかったが、空気が少し揺らいだ。

 重なっている肌と肌が熱くなってる。
 砂糖なんかよりも遥かに甘く滲む匂いが、狭い部屋に充満していく。

 昔の人が花とか蜜だとか女をそう表現していた意味がわかる気がする。

 汗、体温。目の前の彼女から漏れでる途切れ途切れの吐息の全てがこっちのカラダを無意識に暴力的なまでに昂ぶらせてくる。

 「っ。髪、伸びたね」

 「貴方の為に伸ばしたの」

 ちょっと前まで身じろいでいたのにも関わらず、彼女は小馬鹿にしたようにまたもやこちらを昂ぶらせようと揶揄ってくる。

 「昔、助けてくれたよね。お風呂⋯⋯入れてくれたし」
 
 「うんうん。あれはね──お礼、なの」

 「嬉しかった」

 「ふふ。ねぇ?」

 彼女はそう言って自らのカラダを見ろと自身の鎖骨から胸元を指でなぞって俺の頬に触れた。

 男なら誰もが喜びそうな柔いソレを触らせようと。

 手首を掴もうとするのを、視線をそらして必死に抑えつける。

 「⋯⋯もう」

 聞こえない程の鼻息混じりの湿った吐息。

 すると彼女はもう既にくっついているにもかかわらず、悦ばせようと柔らかく暖かい感触を押し付けて、首に両手を這わせてくる。

 わざとだ。そうに決まってる。

 だが、胸の中にいる彼女のカラダは熱っぽくて、小さく吐息がこぼれ続けている。

 そんな姿に俺は、理性が飛びかけそうなのを何度もこらえて──なんて思っていると、

 「昔よりも──エロいでしょ?」

 「⋯⋯っ」

 「お金払ってるんだから、ね?」

 彼女は昔、スクールカーストの頂点にいた。

 陸上部。それに加え、勉強もできる文武両道。

 おまけに優しくて誰もが羨む学年一番の女子。

 それが"白波紗季"。

 だけど、高校受験を控えた夏の終わり頃。


 彼女は突然転校した。

 最初は理由なんて分からなかったが、それを知ったのは、すぐの事だった。

 「あら、近所の白波さんじゃない?」

 加工工場の爆発事件がニュースでやっていた。

 当時はありえない程世間が叩いていたのを覚えている。

 株価は暴落。似たような出来事が大量に起こり、会社は一気に転落した。
 
 「彼女は元気だろうか?」
 俺は何度もそう思ったが、連絡先も交換していないし、そんな事言う筋合いもないだろう。

 こんな貧乏で普通な俺が釣り合っていないのは分かってる。

 だけど──初恋だった。
 やましい気持ちは一切なく、ただ彼女に憧れ、ただ好きだった。


 「ねぇ。昔の私と⋯⋯今の私⋯⋯どっちの方が好き?」

 またも耳元でそう囁いては、快楽が襲ってくる。

 耳を弄られては、俺が話そうとするのを拒むように──彼女はひたすらに俺の欲を暴発させ続ける。

 「ハァ⋯⋯っぁ」

 「ねぇ。伊崎くん」

 潤んでいる彼女の瞳を見続けていると、どんどん彼女が大きくなって気付けば視界は真っ暗。

 「⋯⋯っ」

 押し倒され、何度も、何度も深い口づけを俺の頭を逃さんと両手で包み込みながらしてくる。

 頭がぼーっとして、でも、目の前の甘く暖かい感触が止まらない。

 「あ、あのっ」

 自分だって分かっている。

 大人にもなって経験がなくて、初めてこういう所に来て一番最初の担当になったのが白波さんって気付いたとき、正直嬉しかったから。

 あの初恋の人と⋯⋯なんて。

 「伊崎くんは⋯⋯変わったね」

 「え、え?」

 「昔とは違って⋯⋯男っぽくなった」

 あの頃と同じ、天真爛漫な彼女の見せる太陽のような笑顔。

 もう、彼女にお世話になったのは何回目だろう。

 「ね、ねぇ伊崎くん。も、もし良かったら」

 「白波さん」

 「⋯⋯っ、ご、ごめんなさい」

 「さっき変わったねって言ってもらえたけど、俺⋯⋯こんな所に来てるけど妹と住んでて、ギリギリなんだ。白波さんの事を幸せに出来るお金はないんだ」

 なんて恥ずかしい事を言ってるんだ。
 俺に、もっとお金があったら。
 俺に、もっと度胸があれば。
 俺に⋯⋯

 「いいの」

 「え?」

 「数ヶ月前さ、あの時伊崎くんが来てくれたでしょ?私、これからどうなるんだろーって。正直思ってたの」

 もう何回も来ているけど、こんな話は初めてだ。

 「うん」

 「お父さんがなんとか頑張っていたけど、私も働かないとって。だけど、どこもあの事件のせいで雇ってくれなくて、結局ここしかなかったの。その一回目、初日のお客さんが伊崎くんだったんだよ? 運命でしょ? 汚されるなんて思ってた相手が⋯⋯」

 言わないでくれ。

 「私の"初恋の人"とって」

 「え?」

 「い、今のなしっ!! ここ、エッチする場所だから、も、もうおしまい!続きしよ!」

 その後、何回も来ては、白波さんとケーキを食べたり、昔の話で楽しんだりもした。

 一緒にどうすれば乗り越えられるかを模索したりもした。

 多分、半ば恋人ぽかったかもしれない。

 でも、いっつもモヤモヤしてて。

 自分以外とあんなことしているのを止められない自分が悔しくて。

 家に帰ってからもそれが取れずにまた仕事に行って。

 だから⋯⋯だからさ。

 「ねぇ、伊崎くん」

 それでも毎晩、毎晩白波さんを思い出してはムラムラしている自分が限りなく恥ずかしい。

 「っ⋯⋯んっ⋯⋯!」

 「綺麗だ、白波さん」

 俺は、どうしたら良かったんだろって。
 恥ずかしくて仕方がない。






 「くっそエロい夢だったな」

 あぁ──。だから顔に見覚えがあったのか。

 大の字で天井を見上げていた俺はぼーっとしながら夢を思い出そうとするが。
 
 「エロい夢ってこと以外にはほとんど何も覚えてないが」

 と。自分の下半身に違和感を覚えた。
 
 「ハッ」

 この時代の俺は、まだ目覚めすらしてなかったんだな。

 男としてはクソだな。

 ウチでは貴重な(汚れてるけど)シーツも自分のせいで汚してしまっていた。

 ま、エロかったから良いとする。

 

 「あ、お兄ちゃんおはよー」

 「南、おはよう」

 「ねぇ、お兄ちゃんみてみて」

 南はそうテレビの方を指差す。
 
 「やっぱ山田祐希馬鹿イケメンだと思わない?」
 
 「ん? あぁ⋯⋯まだ居たのか」

 「何その反応」
 
 「まぁ、かっこいいと思うぞ? そこら辺の奴らよりはずっとな」

 ⋯⋯反射で言葉が出たが、誰だっけな。

 あぁそいつ、今が12年だからじゃあ来年か。

 薬物で芸能界引退だけどな。
 ってギリギリ頭に浮かぶな。

 「あっ、てことはそっちの知識も"イケる"のか」

 「何言ってんのお兄ちゃん」

 「ん?いや、こっちの話だ。 南、お前飯食ったか?」

 「いいんや? ていうかお兄ちゃんさ、あの白波先輩の家で何したの~?」

 「ニタニタすんな」

 そう言って南の生意気な頭をグッと押し込める。

 「ぐえっ」
 
 「お兄ちゃんありがとうございますと言ってみろ」

 「うわ、お兄ちゃんいつからそんなオラオラするようになったの!? 南は許さないぞ!」

 「なんだよ。つーかそんなの無理だわ」

 何百年この感じで変わってないと思ってるんだ。

 「オニイチャンアリガトー」

 「何だその棒読みは⋯⋯。まぁいい」

 昨日貰ったお土産である刺し身の数々を南に手渡す。

 「おぉー!! お兄ちゃん神!!」

 「そうだろうそうだろう?」

 「はい!後光が差しているかのようです!」

 跪く南に笑いながら、俺はそのまま朝の支度を済ませる。

 「どったの? 昨日もどっか行ってたよね?」

 「図書館」

 「図書館?勉強? パパとママが参考書買ってくれてたじゃん?」

 「それとは別件だ」

 「ん。私も友達の家に行くから、またねん」

 「おう」

 さて、行くか。
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