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白波ホールディングス編
取引
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「さて、生意気な小僧が⋯⋯昨日に続いてなんだ」
「あ、昨日はお世話になりました」
例の如く執事の人間に案内され、ココらへんの中では一等地の部類に入る豪邸へと踏み入れる。
あ、タイプの女性や。視線を外されてる。
⋯⋯くっそう。
「入ってきた瞬間にその物言いは酷くないですか?」
「その妙な余裕だよ。それが気に食わんのだ。一体どの立場で──」
「はいはい。あなた? 今回は私が得になると思って呼んだんですから」
「久美子がそう言うなら仕方ないが」
おぉ。ベタ惚れか、いいな。
つーかこんなでかい机要らんだろ。
まぁ飯は食わせてもらうけどな。
「掛けてくれ」
そう言われてさっさと座る。
「む? 何だその座り方は」
「え? 別に⋯⋯普通だと思いますけど」
「足を組み、腕を組む。それが取引とやらを持ち込む人間の態度か? 親御さんの教育が気になるところだが、まぁそれもすぐに分かることだろう」
「ですね。どうせ、そっちの態度を見れるのも今の内ですからねー」
俺の言葉にムキッとしたのか、明らか空気が最悪だ。
「ガキの態度に寛大で助かりますよ」
「ふっ、まぁいい。それで?その話とやらは?」
「あぁ──」
軽く息を整えて、間を置く。
俺は指を3本だけ立てて話を始める。
「とりあえず最初にこちらの条件の提示をさせてもらいます」
「話しにならんな」
「別にどう受け取ってもらって構いません。白波ホールディングスにとっては受けざるを得ない話ですので」
「──なんだと?」
眉をピクピクさせている白波会長を無視して話を続ける。
「一つ目の条件は、汚しても構わない場所を用意してもらうことです。あぁ、一応犯罪の為に使うと言うわけではないので安心してください」
「聞いている限りもう怪しいがな」
「二つ目は、白波ホールディングス組織の中に俺単独の子会社を一つ作って欲しいということです」
カラン。
一口高級なお酒を飲んだ白波会長のグラスの音が静かに応接間に広がっていく。
「小僧⋯⋯。誰に向かって言っているんだ?」
「白波ホールディングス現会長の白波隆臣さんです」
年齢は確か40後半。
現存する中だとトップでそこまで若い人間はいないだろう。優秀さと人望がそうさせたのだろうと伺える。
この中でただ一人──冷静に俺を値踏みしている。
「ふんっ。随分と大胆な口を聞くではないか」
「三つ」
少々面倒なので強引に進めると少し目を見開いている。
「これら全てを飲む上に今すぐ現金が欲しい。ひとまずは以上です。お怒りになるのはもっともですが、取引に応じてくださるなら、ここにいる使用人と側近の方々の退出をしていただければ、直ちに取引開始となります」
どよめく応接間。
すると、隣で聞いていた側近の二人のうち一人が、顔を真っ赤にして怒鳴りだす。
「会長! 聞くまでもありません! こんなガキ放り出しましょう!!」
他にもいる使用人達のお怒りのボルテージがマックスの中。
肝心のこの男は俺を真っ直ぐ見つめて悩んでいる様子。
何に対して考えているのかまではわからんが。
数分の沈黙が流れた。
重い空気の中、白波会長がやっとの事口を開いた。
「つまりなんだ? その条件とやらを守れば、この場でその取引という中の一つを見せれると?」
「会長、正気ですか!?」
「お前は黙っていなさい」
しゅんと後ろへ下がる一人の側近。
「仰るとおりです。会長やこの場にいらっしゃる皆さんの視線や思っている事はなんとなく分かります。こんなガキで、昨日なんて貧乏全開でここに来させていただいるので。
まぁ⋯⋯言い方はアレですが、別にこの取引は何もここでわざわざやる必要がないというモノなので、別の大手企業に行きたいってところですが、相手をしてくれるなんて微塵も思っていないので最初にここに案件を持ってきたわけです。
あ、後別に断っていただいても構いません。
但し、その時は地獄を見るということだけは忠告しておきます」
重たいこの応接間が、更に凍えていく。
途中までこちらの味方の様子の久美子夫人も、気が付けば殺してやると言った殺気すら見える。
「その言い方を読み取るに、私と久美子と側近以外に聞かせるにはまずい話というわけだな?」
「ご明察です」
さすがこの年齢で会長になっただけはあるな。
白波会長はその直後に指で全員退室という仕草をとった。
側近の一人がヤケに抗議をしていたが、周りの使用人達に連れられ、強制退室となった。
「さっ⋯⋯聞こえは悪いかもしれないが、少し大きい子供の大きな我儘を受け入れてやった」
余裕のある大人の威厳溢れた口調で煙草を咥え、火をつける。
「伊崎湊翔くん。君が帰った後に少し整理させてもらったよ。特筆する点はなく、重度の貧乏。
最初はなんでうちの娘がそこまで君に気に掛けるのだろうと。
そう⋯⋯思っていたのだが、私もすっかり忘れていたよ。君は8年程までにうちの娘が轢かれそうになっていたところを身を挺して助けたあの勇敢な子供だったのだな」
「いえ、昔の事ですよ」
「その一点については──君に最大限の感謝を」
「貴方にそう言ってもらえるほどのものではありませんよ。これでプラマイゼロです」
素直な彼の言葉に、俺も思わず穏やかな笑みで返す。
大人でここまで素直に言えるとは。
俺も見習うべき点だ。
「さて──退室させた⋯⋯ということの意味を分かっているかな?」
「ええ。もちろんです。 では、直ちにこちらの出せる助言を話そうと思います」
「⋯⋯助言? 君が⋯⋯か?」
「疑う事は分かります。お話は先に致しますが、話が終わり次第、今から言う場所に、俺を連れて行ってください」
訝しむ白波会長にそう伝え、俺は先に話せる事を話す。
全く信じられない様子なのは理解できるが、これが今持っている全てを失うということがどれだけの損失なのか──そして、これがアイツの悲しい未来も止める事ができるだろう。
アイツは過去の存在。
今の俺にはもう何の感情も湧かないが、今回はどうにかなればいいなと、少しでも思うばかりだ。
この助言は──数兆円よりも価値があるだろう。
「あ、昨日はお世話になりました」
例の如く執事の人間に案内され、ココらへんの中では一等地の部類に入る豪邸へと踏み入れる。
あ、タイプの女性や。視線を外されてる。
⋯⋯くっそう。
「入ってきた瞬間にその物言いは酷くないですか?」
「その妙な余裕だよ。それが気に食わんのだ。一体どの立場で──」
「はいはい。あなた? 今回は私が得になると思って呼んだんですから」
「久美子がそう言うなら仕方ないが」
おぉ。ベタ惚れか、いいな。
つーかこんなでかい机要らんだろ。
まぁ飯は食わせてもらうけどな。
「掛けてくれ」
そう言われてさっさと座る。
「む? 何だその座り方は」
「え? 別に⋯⋯普通だと思いますけど」
「足を組み、腕を組む。それが取引とやらを持ち込む人間の態度か? 親御さんの教育が気になるところだが、まぁそれもすぐに分かることだろう」
「ですね。どうせ、そっちの態度を見れるのも今の内ですからねー」
俺の言葉にムキッとしたのか、明らか空気が最悪だ。
「ガキの態度に寛大で助かりますよ」
「ふっ、まぁいい。それで?その話とやらは?」
「あぁ──」
軽く息を整えて、間を置く。
俺は指を3本だけ立てて話を始める。
「とりあえず最初にこちらの条件の提示をさせてもらいます」
「話しにならんな」
「別にどう受け取ってもらって構いません。白波ホールディングスにとっては受けざるを得ない話ですので」
「──なんだと?」
眉をピクピクさせている白波会長を無視して話を続ける。
「一つ目の条件は、汚しても構わない場所を用意してもらうことです。あぁ、一応犯罪の為に使うと言うわけではないので安心してください」
「聞いている限りもう怪しいがな」
「二つ目は、白波ホールディングス組織の中に俺単独の子会社を一つ作って欲しいということです」
カラン。
一口高級なお酒を飲んだ白波会長のグラスの音が静かに応接間に広がっていく。
「小僧⋯⋯。誰に向かって言っているんだ?」
「白波ホールディングス現会長の白波隆臣さんです」
年齢は確か40後半。
現存する中だとトップでそこまで若い人間はいないだろう。優秀さと人望がそうさせたのだろうと伺える。
この中でただ一人──冷静に俺を値踏みしている。
「ふんっ。随分と大胆な口を聞くではないか」
「三つ」
少々面倒なので強引に進めると少し目を見開いている。
「これら全てを飲む上に今すぐ現金が欲しい。ひとまずは以上です。お怒りになるのはもっともですが、取引に応じてくださるなら、ここにいる使用人と側近の方々の退出をしていただければ、直ちに取引開始となります」
どよめく応接間。
すると、隣で聞いていた側近の二人のうち一人が、顔を真っ赤にして怒鳴りだす。
「会長! 聞くまでもありません! こんなガキ放り出しましょう!!」
他にもいる使用人達のお怒りのボルテージがマックスの中。
肝心のこの男は俺を真っ直ぐ見つめて悩んでいる様子。
何に対して考えているのかまではわからんが。
数分の沈黙が流れた。
重い空気の中、白波会長がやっとの事口を開いた。
「つまりなんだ? その条件とやらを守れば、この場でその取引という中の一つを見せれると?」
「会長、正気ですか!?」
「お前は黙っていなさい」
しゅんと後ろへ下がる一人の側近。
「仰るとおりです。会長やこの場にいらっしゃる皆さんの視線や思っている事はなんとなく分かります。こんなガキで、昨日なんて貧乏全開でここに来させていただいるので。
まぁ⋯⋯言い方はアレですが、別にこの取引は何もここでわざわざやる必要がないというモノなので、別の大手企業に行きたいってところですが、相手をしてくれるなんて微塵も思っていないので最初にここに案件を持ってきたわけです。
あ、後別に断っていただいても構いません。
但し、その時は地獄を見るということだけは忠告しておきます」
重たいこの応接間が、更に凍えていく。
途中までこちらの味方の様子の久美子夫人も、気が付けば殺してやると言った殺気すら見える。
「その言い方を読み取るに、私と久美子と側近以外に聞かせるにはまずい話というわけだな?」
「ご明察です」
さすがこの年齢で会長になっただけはあるな。
白波会長はその直後に指で全員退室という仕草をとった。
側近の一人がヤケに抗議をしていたが、周りの使用人達に連れられ、強制退室となった。
「さっ⋯⋯聞こえは悪いかもしれないが、少し大きい子供の大きな我儘を受け入れてやった」
余裕のある大人の威厳溢れた口調で煙草を咥え、火をつける。
「伊崎湊翔くん。君が帰った後に少し整理させてもらったよ。特筆する点はなく、重度の貧乏。
最初はなんでうちの娘がそこまで君に気に掛けるのだろうと。
そう⋯⋯思っていたのだが、私もすっかり忘れていたよ。君は8年程までにうちの娘が轢かれそうになっていたところを身を挺して助けたあの勇敢な子供だったのだな」
「いえ、昔の事ですよ」
「その一点については──君に最大限の感謝を」
「貴方にそう言ってもらえるほどのものではありませんよ。これでプラマイゼロです」
素直な彼の言葉に、俺も思わず穏やかな笑みで返す。
大人でここまで素直に言えるとは。
俺も見習うべき点だ。
「さて──退室させた⋯⋯ということの意味を分かっているかな?」
「ええ。もちろんです。 では、直ちにこちらの出せる助言を話そうと思います」
「⋯⋯助言? 君が⋯⋯か?」
「疑う事は分かります。お話は先に致しますが、話が終わり次第、今から言う場所に、俺を連れて行ってください」
訝しむ白波会長にそう伝え、俺は先に話せる事を話す。
全く信じられない様子なのは理解できるが、これが今持っている全てを失うということがどれだけの損失なのか──そして、これがアイツの悲しい未来も止める事ができるだろう。
アイツは過去の存在。
今の俺にはもう何の感情も湧かないが、今回はどうにかなればいいなと、少しでも思うばかりだ。
この助言は──数兆円よりも価値があるだろう。
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