【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏

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白波ホールディングス編

中学生のお早い自由研究

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 千葉県船橋にある某所。
 湾岸にある工業地帯ではリムジンが複数台あるセンターに入っていくのが見える。

 白波アクアホールディングス第三水産加工センターである。

 リムジンが止まり、中から仰々しい程の威圧感あるスーツを着た数人が車内から出てくる。

 そして。その中から、一人の場違い感違いない少年が、気だるげな表情と態度で最後に出てきた。

 「ようこそお越しくださいました! 白波会長! そして、紗季お嬢様と⋯⋯」

 「お供Aです。こんにちは」

 「伊崎くん、その説明だと彼らがわからないではないか」

 「あら、確かにそうですね」

 「すまないね。今は忙しい真っ只中だろうに」

 「いえ! 全く問題ございません! 要件の方をお伺い出来ていないんですけれども⋯⋯」

 「あぁ。娘とこの伊崎くんの夏休みに課されている自由研究でウチが適任だということでこうして足を運んだんだ」

 「あっ! 左様でございますか。でしたら、すぐに施設の案内役を用意させます!」

 「神原くんももうここのセンター長か」

 白波会長が名札を見ながら上品にそう言うと、恥ずかしそうに神原が頭を掻く。

 「今年の査定で上手く行けば、会長の新たな道へと行けるはずです! 楽しみにしていてください!」

 「あぁ! 神原くんには期待しているからな」

 「会長にお目通りだけでも思ってウチのメンバーを呼んで参りましたので、良ければ一度お時間を頂ければと思いまして」

 「そうだな。神原くんしか知らないのは不便と同時に自社の人間を知らないなどという無知を晒す羽目になるしな。神原くんの紹介だ──さぞ優秀な者達なのだろうな」

 「はいっ! では」

 と、神原たちと白波会長がスーッと、この場から消えていくのだった。

 


 *

 「伊崎くんっ!」

 「おっ、じゃあ──」

 と、二人で話していると。

 「紗季様、それから伊崎さん⋯⋯で良かったかな? 二人の案内を任された神代と申します。中学生には少し早いかもしれないけど、これ」

 スッと丁寧な所作で軽くお辞儀しながら、名刺をくれた。

 「神代力さんですか。名前カッコイイですね」

 「名前負けしているとよく言われますが」

 「⋯⋯⋯⋯」

 「どうしたんだよ、白波」

 「⋯⋯なんでもない」

 「あぁ──彼女は私が来るといつも不機嫌になってしまうんですよ。誠実な対応を心掛けているつもりなんですがねぇ」

 確かに。彼はしっかりと清潔感溢れる青年、といった感じだ。

 髪も長過ぎず短過ぎず。
 背も180くらいの絶妙なスタイル。
 顔も中の上くらいだ。

 特筆するべき点が良い意味でない。

 だが隣を見ると、コイツは明らかに少し怯えている。
 
 「イテッ」

 「大丈夫だ。神代さんは誠実な対応してくれているんだから、無視はねぇだろ?」

 「ま、まぁ⋯⋯うん。すみませんでした」

 何かあるにしろ、今そんな状態ではいかん。

 「はい。大丈夫ですよ」

 中腰になって満面の笑みで答える神代。

 「自己紹介も済みましたし、早速お二人への案内──始めてもよろしいですか?」

 「よろしくお願いします」







 「こちらが第一次加工ラインと言って、魚介類の前処理と選別、洗浄を行う場所になります」

 白衣を着た職員たちが規則正しく歩いている中、神代は丁寧にこちらの質問に答えながら静かに説明する。

 「白波の家って凄かったんだな」

 「ふふ、私は初めてって訳じゃないけど、やっぱりここいいよね!」

 「テンションは戻ったみたいだな」

 指で額を突っついてやると、プクッと頬を膨らまして笑う。

 「もうっ!」

 「⋯⋯⋯⋯」

 ん? 今一瞬──。

 「どうしました? 何か?」

 「あ、いえ」

 多分コイツだよな?
 とんでもない殺気を感じたんだけど。
 まぁいいか。

 ここまでの感想としては、特別驚きはしないが、さすが業界最大級の水産加工センターだ。
 セキュリティを抜けると圧巻のスケールだ。

 向こうでは科学が発展しないから、ここまで機械で制御されている場所は見たことはない。
 ──ウチ以外では。

 「ここから奥に進むと、加熱と冷却、そして真空包装ラインになります。製品の品質と鮮度を保つ為に、全工程は自社で開発したシステムを使って管理しています」

 「なるほど。ここの電力供給って独立はしていますか?」

 「おぉ。自由研究と伺っていましたが、細部まで気になっていただいているんですね。

 そうですね、こちらは地下に専用のユニット持っています。一時期稼働が安定しなかった時期があったことから、後に強化されました」

 ふーん。この辺かなぁ。

 「そして、こちらには問題が多くある一角になります」

 見たところ特別変な感じは見受けられない場所だが、案内役の人が言うんだから何かしらあるだろう。

 「排水と排熱の合流処理ラインになります。現場の人間からはデッドスポットなんて言われているんですよ」

 「そうなんですね、なんででしょう?」

 「設計上負荷が集中しやすく、老朽化も早いからですね。正直なところ、当センターの中で一番予算を削られていると言っても過言ではありません」

 「学生の戯言だと思って聞いていただければと思うんですが」

 「はい。遠慮なくお聞きください」

 「では遠慮なく失礼して。神代さんは設計上最も集中しやすくて老朽化も早いと仰ったわけですが、予算を削られると矛盾した事を言っているような気がするのですが⋯⋯。
 集中しやすく、老朽化も早いのであれば、頻繁に取り替えと言いますか、修理とかすればいいのでは?」

 「ふふ。さすがは未来の若者ですね。疑問はごもっともです。
 この処理ラインはかなりの安定具合なんです。
 それこそ、昭和後期に制作されたものなのですが、未だに異常報告もなく、見た目も問題ないんです。しかも処理ラインの稼働率があまり高くないのがポイントです。どうしても優先度が下ってしまうのが現状ですね。今は新たなラインも出来上がっていますし、処理もそちらの方が高いところありますので」

 「なるほど。色々複雑な事情があるんですね」

 「仰るとおりですよ。しかし伊崎さんは中学三年生にもかかわらず、鋭い質問を投げてきますから正直内心バクバクです」

 「そんな止めてください」

 全く自分らしくない物言いをしながら、その後も淡々と案内と質問を交互に行っていく。
 
 「では、少し休憩にしましょうか。ここから出るとなると時間と面倒さがあると思いますから⋯⋯あ、あそこに椅子がありますのであの辺りで休憩にいたしましょう」

 進む神代を背に、俺は処理ラインを眺める。

 なるほど。ここだったのか。
 常人の目には全く映らないであろう振動。

 「伊崎くん?」

 「あぁ。ごめんごめん」

 なんとなくの原因しか知らなかったからもしかしたら上手く行かない可能性もあったが、問題なさそうだな。

 と、俺は処理ラインを後にして一休みするのだった。
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