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プロローグ
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湧き上がる大歓声。それは観客の熱が混じり、うねりを上げて会場全体を包み込み、轟音となり響く。会場を、観客を、揺らし、その場にいるだけでとてつもないエネルギーを感じる。
その声を出させるのは中央のリングで闘う二人の男。何度も叩かれ、蹴られ、投げ飛ばされても不屈の闘志を露わにして立ち上がり、絶体絶命の窮地に陥っても決して諦めない。その姿に観客は熱くなり、感動し、その選手の背中を押すように声を送るのだ。
『アレクサンダー選手が走り、ロープの反動を利用して――ラリアットだ!!』
短髪で体格の良い海外の選手が走り、対戦相手である茶髪の選手へと駆け出す。そして、豪腕が振り下ろされた。
バチン、と炸裂音が響くとまるで車にはねられたかのように身体が一回転し、リングに落下した。それを確認すると海外の選手が倒れた相手に覆い被さる。
『ワン、ツー、ス――返した! 棚神、返したぁぁぁ!!』
スリーカウントで決着。だが、その選手はあと少しのところで肩を上げて、そのカウントを止めてみせた。その姿に更に大きな歓声が上がる。
だけど、ここがチャンスとみた海外の選手が倒れた相手を引き起こし、強制的に立たせると股に頭を入れて肩車の体制になる。二人合わせたその高さは三メートル以上ある。その高さから、上にいる選手を脳天から落とそうとしているのだ。
しかし、上にいる選手が一瞬の隙を突いた。咄嗟に後方へと跳び降り、同時に自身の腕を相手の首に絡める。百キロ以上ある男性の体重がかかれば耐えることは出来ず、相手は後頭部をリングに叩きつけられた。
その痛みに海外の選手はリング中央でのたうち回る。その間に彼はリングのコーナトップに駆け寄り、その上に立つ。
『出るぞ! 出るぞ! 棚神の――』
アナウンサーは喉を潰しても構わないと言わんばかりに声を張り上げる。
そして、その選手は高く、高く、翔んだ。
ライトの逆光の効果かもしれないが、その背中には確かに翼が見えた。
『フライハイだーー!』
その選手のジャンピングボディプレスが、海外の選手へ炸裂した。そして、そのまま相手の肩を押さえつける。
『ワン! ツー! スリー!』
マイクを使っているアナウンサーの声が消えるぐらいの観客によるスリーカウントの大合唱。
その選手の勝利に再び大歓声が上がる。
死闘を終えた、選手が呼吸を整えるとマイクを手に取った。
「みなさん、たくさんの歓声ありがとうございます。その声があったから、俺は何度でも立ち上がれた。折れそうになった心を奮い立たせることができた。本当にありがとう」
再び大歓声。会場が揺れる。
「俺が――棚神がいる限り、このファイティングプロレスは絶対に大丈夫だから。これからも熱い応援、宜しくお願い致します。みさなん! 大好きだー!!」
その言葉でまた先程を上回る大歓声。そして、その選手の入場曲が響き渡る。
本日の勝者であるその選手は花道を歩き、帰って行く――その時だ。
花道の道中で選手とハイタッチがしたいのであろう高校生ぐらいの青年が必死で手を伸ばしていた。それに気づいた選手が彼の元へと行き、ハイタッチをし、頭をくしゃくしゃと撫でた。そして、再び、花道へと戻る。
「棚神選手! 俺も絶対――」
その青年の声は大歓声に飲み込まれた。しかし、その選手はその青年に向かって微笑みながら、
「待っているぞ」
確かにそう言ったのだ。
その声を出させるのは中央のリングで闘う二人の男。何度も叩かれ、蹴られ、投げ飛ばされても不屈の闘志を露わにして立ち上がり、絶体絶命の窮地に陥っても決して諦めない。その姿に観客は熱くなり、感動し、その選手の背中を押すように声を送るのだ。
『アレクサンダー選手が走り、ロープの反動を利用して――ラリアットだ!!』
短髪で体格の良い海外の選手が走り、対戦相手である茶髪の選手へと駆け出す。そして、豪腕が振り下ろされた。
バチン、と炸裂音が響くとまるで車にはねられたかのように身体が一回転し、リングに落下した。それを確認すると海外の選手が倒れた相手に覆い被さる。
『ワン、ツー、ス――返した! 棚神、返したぁぁぁ!!』
スリーカウントで決着。だが、その選手はあと少しのところで肩を上げて、そのカウントを止めてみせた。その姿に更に大きな歓声が上がる。
だけど、ここがチャンスとみた海外の選手が倒れた相手を引き起こし、強制的に立たせると股に頭を入れて肩車の体制になる。二人合わせたその高さは三メートル以上ある。その高さから、上にいる選手を脳天から落とそうとしているのだ。
しかし、上にいる選手が一瞬の隙を突いた。咄嗟に後方へと跳び降り、同時に自身の腕を相手の首に絡める。百キロ以上ある男性の体重がかかれば耐えることは出来ず、相手は後頭部をリングに叩きつけられた。
その痛みに海外の選手はリング中央でのたうち回る。その間に彼はリングのコーナトップに駆け寄り、その上に立つ。
『出るぞ! 出るぞ! 棚神の――』
アナウンサーは喉を潰しても構わないと言わんばかりに声を張り上げる。
そして、その選手は高く、高く、翔んだ。
ライトの逆光の効果かもしれないが、その背中には確かに翼が見えた。
『フライハイだーー!』
その選手のジャンピングボディプレスが、海外の選手へ炸裂した。そして、そのまま相手の肩を押さえつける。
『ワン! ツー! スリー!』
マイクを使っているアナウンサーの声が消えるぐらいの観客によるスリーカウントの大合唱。
その選手の勝利に再び大歓声が上がる。
死闘を終えた、選手が呼吸を整えるとマイクを手に取った。
「みなさん、たくさんの歓声ありがとうございます。その声があったから、俺は何度でも立ち上がれた。折れそうになった心を奮い立たせることができた。本当にありがとう」
再び大歓声。会場が揺れる。
「俺が――棚神がいる限り、このファイティングプロレスは絶対に大丈夫だから。これからも熱い応援、宜しくお願い致します。みさなん! 大好きだー!!」
その言葉でまた先程を上回る大歓声。そして、その選手の入場曲が響き渡る。
本日の勝者であるその選手は花道を歩き、帰って行く――その時だ。
花道の道中で選手とハイタッチがしたいのであろう高校生ぐらいの青年が必死で手を伸ばしていた。それに気づいた選手が彼の元へと行き、ハイタッチをし、頭をくしゃくしゃと撫でた。そして、再び、花道へと戻る。
「棚神選手! 俺も絶対――」
その青年の声は大歓声に飲み込まれた。しかし、その選手はその青年に向かって微笑みながら、
「待っているぞ」
確かにそう言ったのだ。
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