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第二章:ファイティングプロレス

有栖_2-8

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「棚神選手はやっぱり特別な選手ですか?」

 海野と中島に道場内を案内してもらったあと、有栖は質問した。
 道場内は広々としているが紹介するポイントは少なく、リングと周囲にある機器ぐらいでそれらの説明は三十分ほどで終わってしまった。そのあとは他の選手を紹介する手筈になっていたが、もう少し時間が経たないと来ないそうなので、それまで雑談となった。

「そうですね。俺達は棚神さんの付き人も勤めているんですがやっぱり偉大ですよ」
「これまでの功績も当然ですが、今でもストイックですし、あの人を見にくるファンは今でも多くいますからね」

 そう語る海野と中島の目は輝いている。

「今でもトップ戦線に名を連ねてますもんね」
「えぇ、そうですね。ですが、最近……というかこれまでの戦いで積み重ねてきた傷や怪我も深刻になってきています。その点はスゴく心配で……」

 海野の表情が曇る。

「怪我ですか?」
「はい。棚神さんのフィニッシュはフライハイ、と呼ばれるトップコーナーから高く飛び、倒れている相手にジャンピングボディプレスを放つ技です。ですが、当人が百キロ以上の体重があるので、その高さから飛べば相手に対してのダメージだけでなく、自身にもダメージがあります。特に膝は強打するので、何度も大きな怪我をして何度も手術をしています」
「それは大変ですね」

 有栖は先程まで一緒に歩いていた棚神選手の姿を思い返す。確かに、歩くときに少しだけぎこちない様子だった。スーツで見えないが、その中はサポーターやテーピングで固めているのかもしれない。

「それでもベストコンディションを保つ為に、食事とかも自身で厳密に管理しているんですよ。食べる内容や量とか時間、タイミングとかも細かくアプリとかで管理していますよ。少しでも試合のときに体重とかが変動しちゃうと翔ぶときに誤差が出たり、怪我に繋がったりするとか……」

「そこまでしてリングに立っているんですね」

 反保が二人の話しを聞き、棚神選手が戦っているのが対戦相手だけではないと知り、驚いていた。

「はい。本来なら引退していてもおかしくない怪我もしています。それでも、あの人はファイティングプロレスの為に翔んできたんです。その姿に多くのファンが魅了されて、多くの人が憧れて――結果、ファイティングプロレスを救い、今があるんです。あの人に憧れて選手になった人もいるんですよ? 本当に、あの人は『太陽』ですよ」

 そう言って海野が笑顔を見せる。

「おい、海野。そろそろ、他の選手も紹介できそうだぞ。ユースティティアのみなさんを案内しよう」
「そうだな」

 中島に言われ、海野が同意する。

「それでは、他の選手を紹介しますね。ちょっと色んな場所に移動しますがご了承ください」
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