壊れるぐらい愛して

ふしきの

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第二章

3

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 腕時計の音を耳に当てる。
 アナログの時計は、確かにカチカチと音を鳴らしていた。

 ここへ来た人は皆自分の名前や素性もみんな忘れたみたいに、何かに没頭していた。
 ある人は、その自然に、ある人は、その景観に…魅了されて、そして全員が全てある一定の方式によって呼び出されて…人が集まっては集い消えていく場所。

 子供が彼に触れた。
 彼の刻まれた傷が一瞬のうちに子供の体に写し取られると、子供はにっこりと笑った。そしてその子の体に吸収されるように傷が消えていった。
 彼は笑った。
 子供は、走り去っていった。

 時間すらわからない、確かに没頭する作業が終わりなく続いている。
 彼は、いつもどおり、仕事が終わると、海岸へやってきて、一人耳を当てる。
 カチカチと音は鳴る。
 一定の時が来た時に震える機能は無くなってしまった。時計のガラスはひび割れ、針が全く見えないくらいのすり傷ができてしまい曇っている…でも確かに秒針音は鳴っている。

 彼は耳をすませる。
 この音を聞くと安心できたから。
「愛してる」
 そう呟いた。
『僕はとても幸せなんだよ。僕は、おかあさまににててとても頑固なんだ。それを含めて好きになってくれた。僕は僕が好きになった人が僕を好きになってくれた。それがとても幸せなんだよ。ああ、でも、これは最後じゃない。僕の広大な仕事はこれからなのに、君の温もりの中でそれを今伝えられないのが残念なんだ……』
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