改編版アストロノートとペテン師

ふしきの

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会話の始まり

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「両腕じゃ足りないし、さらに言えば末端の五本指でも不足する、だから、補助器具が必要になってくるのだけれど、度重なる事故で船内の八割がた、壊れたんだ」
 ケニーは、細部を歩くアント、スパイダー、ビートととても小さい追尾補修機械の箱たちを紹介しました。
「で、私が今一番の危機的な感情をもって見ている君のそれは、どういうものなのか、教えていただきたい」
「ああ、これ、ガンクリッパ?言葉通り、穴を開けたり、その穴の奥から離皮架することができる優れものだよ。坑道の壁の補修に使ったりする。汎用性が高いから医療機器としても使ったりするけれどね……使えなかった、僕はあの日使うべきだった」
 ケニーは、最初は言葉を言葉少なにきりました。
 アベイルにとっては、それは気にはなることでしたが、この微弱な重力とむき出し配管の敷かれた船内と恐ろしいほどだだっ広い異質な空間に、裸の自分がいること事態が面白く可笑しかったので、「君が言いたいとき言いたければ聞くよ。急いで喋ることはない」と静かに丁寧に言うのでした。

「宇宙空間ねぇ、で非常口は何処?」
「ハッチは搬入口と、先端にあるけれど、先端はかなりの破損が多くて壊れている。この前、突貫で内側のコーキングが終わったから近くには行けるけれど、あまり進められない場所だよ」
 と、問えば、素直に答えてはくれる。
 素直すぎて「ついでにこの枷を……」と言いたくはなったが、なぜ自分が解放されたのかは、ケニーが自発的に発言してくれるまで待った方が良い問題だと直感しました。
「それでは、この舵をとっているのは誰なんだい。そちらにまずご挨拶をかねないと」
「それは今は無理、システムが一時大きくダウンしていて、優先はしているんのだが、回避と蛇行運転だけで手いっぱいだから、舵は半手動のオートシステムになっている」
「おいおい、自動車のハンドブレーキマイサンがゆるいってことか」
 その品のない言葉にケニーは、むっとした顔から、むせるような赤い顔になって、言い返したのです。 
「自動ってものの大半はそういうものじゃないのか。自動洗濯機、自動調理器、自動操縦」
「参ったね、自動介助で半分わかったつもりだったけれど……で、そろそろ、私の尿意(コック)が自動に切り変わりそうなぐらい限界に来ているので」
「は」
 もう、これ以上の話は下品すぎてしたくないようにケニーは無視しようとしました。
「お願いします。どうかバスルームを案内しててださい」
「船にバスはついていない」
「レストルーム、もう膀胱が破裂する寸前なの」
 その、本当のバタバタした様子に、とうとう、笑いが噴き出してしまいました。
「あ、ああ、わかったから、そのコック握りしめてもうちょっと我慢して」
「おトイレきちんとさせてね」
「うん、わかった」
「ついでにこの手のプラプラする錠前もはずしてくれるとありがたいかも」
「君と出会って十分に浅いから、それは無理」
「そうね、うん、わかったから、おしっこする姿は見ないでよ」
「繊細だなぁ」
「裸とプライベートゾーンは分けたいタイプなのよ」
 ケニーとアベイルは下品というよりも子どもの喧嘩になってしまったことに気がついて、同時に笑ったのはこれが最初でした。その後、簡易トイレでこれ以上ない屈辱をアベイルは味わったのです。


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