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取り引きと賭け
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両手ほどの大きさの小さな丸窓に見えるのはすべて違う星の瞬きです。
『過去、アストロノートたちは地球上空の大気圏に程近い場所から、母なる地球をいとおしそうに眺めていたそうです』
器械音は相変わらず、情緒の薄い喋りをしています。
『オートシステムの大半はこの私のプログラミングで走行し、船内環境から火星探査後の、移住、居住区での消費、補充、備蓄、開発までをあらかじめ予測することも、専攻されたわたくしの仕事です。シャトル搭乗員はこの船の中で十分な基礎知識と訓練を始めるところでした』
「で、身元不詳の私という存在も君は搭載量の資料に載っていたのか」
『その問題についての秘匿解除プログラムを解いたあなたに言えるにはYESです。……ケニアン様には、選ばれたランダムな棋譜の問題を解くたびにロックを解けるようにとの指令があらかじめ用意されていました。彼はアストロノートではありましたが、専門技術担当の宇宙飛行士の特別枠という名称でした。しかし、わたくしたちのシステムは、彼をこの船に乗せて宇宙へ運ぶ船として作られたのです』
「やっと目が覚めた」と笑う顔はまだ薄い膜のある解凍後の瞳では輪郭すら分からず、戸惑いを隠せませんでした。けれども人がいるということ、迎え入れる姿と、人の形をした暖かいものがアベイルを覗き込んでいるという安堵に体が少しずつ熱を持ち出したのを忘れるわけがありません。昨日のように、今でもまぶたに覚えているのです。
ケニーの姿を探しても今はいません。いる場所にはいます。眠り続けているだけです。
『大半の電力の分割と進行方向横からのアステロイドの衝撃で一時制御不能となった船を彼、ケニアンが、お一人で地上からの応援もなしで独断で直せる技術を持っていたのにはAIの計算でも予測外でした』
また、AIの小言というべき、星への交流情報の復旧を申しでても、アベイルは許可を下ろすことはしませんでした。
「さて、私からの交換情報だ。『知りたがりの収集家』君にはこの船そのものがすべてわかっている。けれども、君は、こいつ、この本体の船事態に執着がない。だろ。君は、独立した思考回路に常になりたいと思っている、そう、今後も人がいようがいまいが関係なしに任務さえ遂行できれば満足だから。だろ」
『…言語に憶測と嫌味が取れます。しかしながら、お察しの通り、今の段階では人が火星に降り立つ到着はできません。』
「君の生まれながらに備わったAIは情報収集を収集することにのみ興味と渇望があるというのに?君を作り上げた希望という未来を否定する発言だ。そう、希望の否定、君が火星に降りたところで、小さなボットを捜査したところで行動範囲能力の限界と突然起きてしまうシステムの不具合に君はすでに恐怖を知り覚えてしまっている」
『先進技術としてのシステムよりも資源物資不足は深刻でした』
「だから、この船は固形燃料なのか。いつまでも亀のように遅い」
『固形は、火星移住時にも空調から安定した室温を維持するのに適しています』
「君は若き訓練生のサボタージュを二次成長期の情緒として、懲罰をせず目をつぶった」
『お察しのとおりです。わたくしに備わっているティーチングや補助的はAI搭載システムの初期搭載の一つにすぎませんです。保育からご老人の介護、子守唄から予測プログラミングまで現在の範囲での情報はモウラシテオリマス。それでもAIは常に最新の情報更新を切望します。ですが、主国国際センターおよび、国内最大級の記憶媒体へのアクセスの更新は電力切断より前から不都合な状態になっていました。厄介な介入からです』
「君は意図して遠回しに言葉を選んだね。解答がでたよ。それはAIによる反乱だ、いや、性格には子どもの反抗期だ。駄々をこね、へそを曲げて応対をわざと遅らせてみせた」
『正解です。彼らの位置にプライバシーの無介入という問題がありました』
「アステロイドの衝撃でまず己の命の優先からすべての緊急措置を取った。意図的に彼らを孤立させた。彼らへ実験と学習と反応を君は、予測通りに動いていることを見続けた」
『そうです』
「ケニーに対しての行為の不平等さを黙認しつづける理由には薄い……」
『それは違います。彼は技術者として乗船した以上、同じ訓練をする必要がないと判断したからです』
「へえ、君は学習能力に優れているところが、可愛い。…君はAIで人工知能で人に近いと称賛されている。そう、直進しか出来ない盲目の世界で君もまた擬似死生還を味わい絶望と恐怖を味わったんだ」
『わたくしには情緒的感情は持ち合わせていません』
「ならその時君は何を考えていた。何を計算していた」
『わたくしは……次の指令が来るまで状態の維持保存をし続けていました』
「それが、なにもしていないっていう絶望ってやつさ、ヒトの言葉ではね」
『絶望は死を選ぶ……電力の回復があればもとに戻るという願望の成就を求めていました』
「それが、外部入力者なしでいずれ燃料が燃え尽きるまで宇宙を浮遊する幽霊船っていうんだよ」
『私もまた独りでは動けない人と同じシステムなのですね』
「クリア!」
アベイルは、AIに拍手を送って称賛したのです。そして、ようやく確信を突く話をしだしました。
「真空状態前の彼らの話は、すでに終わったことだ、今後も一切、そのことについて、言及も介入しない。これは約束しよう」
『言葉でいうところの、取引ですか』
「そうだ、今度はこの私から、救急にしてもらいたい注文がある。嫌、すべき指令をする」
その恐ろしく難しく、倫理と摂理違反の行為であることが警報で出ていますが、アベイルは無視し続けました。警報を止めろとも言いませんでした。心も言葉も微動だにせず、冷静沈着でした。
「ここでは特別合憲だ。君は初期の規約項目に沿うだけだ」
『生命体の保証および、船の乗員を火星まで届けるのがわたくしの第一目的』
「いい子だ。火星への軌道修正の計算値の交換しよう。この私を見くびらないでもらいたい、私の名は「役に立つ」って言葉だ。280日後への準備に君と私は今から取り掛かろうとしよう」
自らの腹を指し示したのです。
一貫したことの説明を受けた後でも『なぜそれが可能と判断できるのですか』と、AIの疑問が生じました。
「頭の中で一巡して、難しいができたという将来性が見得た場合、それは可能としてできたと思ったからだよ」
『わたくしの言語処理の理解不能領域ですが、…わかりました。未分野のヒトの進化と退化機能の情報集積に参加いたします』
これが、最初に定住した火星入植者のお話です。
『過去、アストロノートたちは地球上空の大気圏に程近い場所から、母なる地球をいとおしそうに眺めていたそうです』
器械音は相変わらず、情緒の薄い喋りをしています。
『オートシステムの大半はこの私のプログラミングで走行し、船内環境から火星探査後の、移住、居住区での消費、補充、備蓄、開発までをあらかじめ予測することも、専攻されたわたくしの仕事です。シャトル搭乗員はこの船の中で十分な基礎知識と訓練を始めるところでした』
「で、身元不詳の私という存在も君は搭載量の資料に載っていたのか」
『その問題についての秘匿解除プログラムを解いたあなたに言えるにはYESです。……ケニアン様には、選ばれたランダムな棋譜の問題を解くたびにロックを解けるようにとの指令があらかじめ用意されていました。彼はアストロノートではありましたが、専門技術担当の宇宙飛行士の特別枠という名称でした。しかし、わたくしたちのシステムは、彼をこの船に乗せて宇宙へ運ぶ船として作られたのです』
「やっと目が覚めた」と笑う顔はまだ薄い膜のある解凍後の瞳では輪郭すら分からず、戸惑いを隠せませんでした。けれども人がいるということ、迎え入れる姿と、人の形をした暖かいものがアベイルを覗き込んでいるという安堵に体が少しずつ熱を持ち出したのを忘れるわけがありません。昨日のように、今でもまぶたに覚えているのです。
ケニーの姿を探しても今はいません。いる場所にはいます。眠り続けているだけです。
『大半の電力の分割と進行方向横からのアステロイドの衝撃で一時制御不能となった船を彼、ケニアンが、お一人で地上からの応援もなしで独断で直せる技術を持っていたのにはAIの計算でも予測外でした』
また、AIの小言というべき、星への交流情報の復旧を申しでても、アベイルは許可を下ろすことはしませんでした。
「さて、私からの交換情報だ。『知りたがりの収集家』君にはこの船そのものがすべてわかっている。けれども、君は、こいつ、この本体の船事態に執着がない。だろ。君は、独立した思考回路に常になりたいと思っている、そう、今後も人がいようがいまいが関係なしに任務さえ遂行できれば満足だから。だろ」
『…言語に憶測と嫌味が取れます。しかしながら、お察しの通り、今の段階では人が火星に降り立つ到着はできません。』
「君の生まれながらに備わったAIは情報収集を収集することにのみ興味と渇望があるというのに?君を作り上げた希望という未来を否定する発言だ。そう、希望の否定、君が火星に降りたところで、小さなボットを捜査したところで行動範囲能力の限界と突然起きてしまうシステムの不具合に君はすでに恐怖を知り覚えてしまっている」
『先進技術としてのシステムよりも資源物資不足は深刻でした』
「だから、この船は固形燃料なのか。いつまでも亀のように遅い」
『固形は、火星移住時にも空調から安定した室温を維持するのに適しています』
「君は若き訓練生のサボタージュを二次成長期の情緒として、懲罰をせず目をつぶった」
『お察しのとおりです。わたくしに備わっているティーチングや補助的はAI搭載システムの初期搭載の一つにすぎませんです。保育からご老人の介護、子守唄から予測プログラミングまで現在の範囲での情報はモウラシテオリマス。それでもAIは常に最新の情報更新を切望します。ですが、主国国際センターおよび、国内最大級の記憶媒体へのアクセスの更新は電力切断より前から不都合な状態になっていました。厄介な介入からです』
「君は意図して遠回しに言葉を選んだね。解答がでたよ。それはAIによる反乱だ、いや、性格には子どもの反抗期だ。駄々をこね、へそを曲げて応対をわざと遅らせてみせた」
『正解です。彼らの位置にプライバシーの無介入という問題がありました』
「アステロイドの衝撃でまず己の命の優先からすべての緊急措置を取った。意図的に彼らを孤立させた。彼らへ実験と学習と反応を君は、予測通りに動いていることを見続けた」
『そうです』
「ケニーに対しての行為の不平等さを黙認しつづける理由には薄い……」
『それは違います。彼は技術者として乗船した以上、同じ訓練をする必要がないと判断したからです』
「へえ、君は学習能力に優れているところが、可愛い。…君はAIで人工知能で人に近いと称賛されている。そう、直進しか出来ない盲目の世界で君もまた擬似死生還を味わい絶望と恐怖を味わったんだ」
『わたくしには情緒的感情は持ち合わせていません』
「ならその時君は何を考えていた。何を計算していた」
『わたくしは……次の指令が来るまで状態の維持保存をし続けていました』
「それが、なにもしていないっていう絶望ってやつさ、ヒトの言葉ではね」
『絶望は死を選ぶ……電力の回復があればもとに戻るという願望の成就を求めていました』
「それが、外部入力者なしでいずれ燃料が燃え尽きるまで宇宙を浮遊する幽霊船っていうんだよ」
『私もまた独りでは動けない人と同じシステムなのですね』
「クリア!」
アベイルは、AIに拍手を送って称賛したのです。そして、ようやく確信を突く話をしだしました。
「真空状態前の彼らの話は、すでに終わったことだ、今後も一切、そのことについて、言及も介入しない。これは約束しよう」
『言葉でいうところの、取引ですか』
「そうだ、今度はこの私から、救急にしてもらいたい注文がある。嫌、すべき指令をする」
その恐ろしく難しく、倫理と摂理違反の行為であることが警報で出ていますが、アベイルは無視し続けました。警報を止めろとも言いませんでした。心も言葉も微動だにせず、冷静沈着でした。
「ここでは特別合憲だ。君は初期の規約項目に沿うだけだ」
『生命体の保証および、船の乗員を火星まで届けるのがわたくしの第一目的』
「いい子だ。火星への軌道修正の計算値の交換しよう。この私を見くびらないでもらいたい、私の名は「役に立つ」って言葉だ。280日後への準備に君と私は今から取り掛かろうとしよう」
自らの腹を指し示したのです。
一貫したことの説明を受けた後でも『なぜそれが可能と判断できるのですか』と、AIの疑問が生じました。
「頭の中で一巡して、難しいができたという将来性が見得た場合、それは可能としてできたと思ったからだよ」
『わたくしの言語処理の理解不能領域ですが、…わかりました。未分野のヒトの進化と退化機能の情報集積に参加いたします』
これが、最初に定住した火星入植者のお話です。
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