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1 恋の始まりなど、いつだって気づかぬもので。
うやむやのままにやりすごしたい(希望
しおりを挟む「やり方わからない? 貸して」
携帯電話を持ったまま固まった私に、佐藤君がそう言ってくれたので、素直に渡す。
すみませんすみませんすみません。私、割と機械には強いつもりなんですけど、日々日常アドレスを交換するような場面に突き当たることがないから使い方わかりません……
佐藤君の方は、慣れた手つきで私のスマホをいじって自分のスマホと突き合わせている。
「じゃあ、同じ干支同士親睦を深めましょうってことで、金曜は来てね」
「は!?」
なんでそうなるんですか? もしや佐藤君の中ではすでに私の参加は決定事項?
「え、あの、内藤さんにも呼ばれてないのに、私が突然参加するのはいろいろちょっと……」
怖いんですけど。佐藤君に誘われたと分かったら尚の事!!
「あー じゃあそこら辺は何とかするから任せといて。ハイ。俺のこれでオッケー。詳しいことはあとでね」
あっと言う間に登録は終わって、スマホが返ってくる。差し出されたスマホを受け取る為に出した手に、佐藤君の指が触れた時、びくってなったのばれてませんように!!
降りてお礼を言うと何ともさわやかな笑顔を振りまいた佐藤君が乗った車が走り去っていく。
なんだか脱力してしまいながら、第二営業所の所長に書類を手渡し、元気ないねぇ 大丈夫? とか言ってくれるオジサンたちからいつも以上にお菓子とねぎらいの言葉をもらって、行きで捕まらなかったのがウソみたいにスムーズに目の前に止まったタクシーに乗り込んで、本社に帰る。
タクシー代のレシートが片道しかないのを正直に知り合いがたまたま送ってくれたと経理に白状して、総務に戻り、課長に無事書類を渡してきたことを報告して自分の席についても、隣に座っている内藤さんからは何のアクションもなかった。
さっきのハンコ事件に対するお怒りが収まったのならやり過ごすのが一番。
とりあえず佐藤君の車に乗ったのは見られてなかったようで、胸を撫で下ろした。
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