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1 恋の始まりなど、いつだって気づかぬもので。
戦場の提供はご遠慮願いたい。
しおりを挟む今日は週の山場の水曜をやり過ごして木曜日。社会人一年生としては、ぎりぎり週末ではない。
「飲み会をするんだけど、ウチの男どもと、街宮さんの同僚の──」
「内藤さん?」
「そうそう、その人たちと。先月もやったんだけど、街宮さんは来てくれなかったし」
「えっと、それは前に、内藤さんが『飲みに誘われちゃったぁ』って言ってたヤツですか?」
「そう……彼女一人誘ったわけじゃなかったんだけどな。合コンって程じゃないけど、こっちは男ばっかりの職場だから同僚同士飲んでても花がなくて。だからお友達が大勢いそうな彼女に声かけて、何人か誘ってねって頼んであったんだけど」
「私、その。内藤さんとはお友達じゃないし……誘ってもらったとしても、お酒もにぎやかな場所も得意じゃないんで、断ってた可能性が高い、です」
あからさまに『誘ってもらえませんでした』って言うのはなんだかすごく情けない気がして、ごにょごにょ言い訳になってしまった。
この女、友達少なそうだなとか思われてるんだろうな、絶対。
実際友達少ないし。
信号はすぐに変わって、佐藤さんがシフトレバーを入れなおして車を発進させる。でも直進の車が多いので、きっと右折優先がでるまでこのままかな。この交差点を曲がれば、第二営業所はすぐだ。
よく見たら今時ミッションだ。社用車も最近はオートマが主流なのに。滑らかにシフトを入れ替えるのって、ちょっとカッコいいかも。内藤さんならきっと、今シフトレバーに乗っている佐藤君の左手とかに、そっと手を重ねちゃったりしそうだな。
そう思ったらなんか、心臓のあたりがじわってなった。これはなんだろう。
「俺もあの人に頼むのはちょっと間違えたなって思ってたところ。街宮さん、今スマホ持ってる?」
釈然としないもやもや感に、軽く前のめりになりながら、ステータスと言い張るにも寂しすぎる胸元を押さえていたら、右折を終えた佐藤君がちらっとこちらに視線を向けて言う。スマホなら、友達は極少数でも現代人必須アイテムなので、鳴らないままに持っていますが何か?
「持ってます、けど?」
そんな短いやり取りの間に、車は第二営業所についてしまった。なんだか、いつもタクシーで移動していたより早く着いたような気がする。
「トークアプリ入れてるなら交換して?」
にっこり笑っているけど、なんて言うか佐藤君の笑顔が怖い。従わないといけない気になってしまうのは何故? カバンからスマホを出して開いて。
えっと、登録ってどうやるんだっけ……
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