ならば今、勇敢な恋のうたを歌おう

神室さち

文字の大きさ
16 / 34
2 なんとなくもやもやする、のはなぜなのかと。

生ぬるい程度がちょうどいいと思うんですよ。

しおりを挟む
 
 
 
 
 三頭身くらいにデフォルメされた、漫画のキャラクターのフィギュア。

 去年の年末に、ノベライズ版が出てる出版社の本をどれでも買ったら応募券がついていたけど、限定百体とか、半端ない競争率だった為に入手を逃したレア物だ。

 大きな声で呟いたつもりはなかったけど、小畑さんの耳にはしっかり聞こえたらしい。ぐりっと音が聞こえるくらい勢いよく振り向いた。

「まままままっ まち、街宮さんは、刃朔羅知ってるんですか」

「知ってます。原作の漫画、面白いですよね。確か、この春から続きがアニメ化されるんですよね」

「そっ そうなんです。またアニメになるんです。何年か前の実写映画は黒歴史だけど、アニメは声優陣も豪華で、すごく、面白いですっ!」

 そんなに振ったら首がもげるんじゃなかろうかってくらい、小畑さんがガクガク頷く。

 そしてそこから、小畑さんの怒涛の刃朔羅語りが始まった。友枝さんは逃げ出したけど、大峰さんはこの人をここに連れてきてしまった責任でも取るように苦笑を浮かべながら小畑さんを見ている。


「脇の声優陣も勿体ないほどの大御所が揃ってますけど、僕的には、秋桜(コスモス)をやってる、音葉ちゃんが一番キャラクタにしっくり合ってると思うんですよ!! なのにどうして再アニメ化が決まるたびに音葉ちゃんは秋桜を演らないんじゃないかって噂が出るのはなんでだろうと思うんですよ!」


 その声に、最初にあったどもりはない。でも、最後の方に出てきた固有名詞に私の方が咽かけた。その役は、まだ高校生で駆け出しだった姉がはじめて掴んだ準主役級の役で、出世作の一つだ。もちろん今期も秋桜を演るって聞いてるけど、それは言えない。


「あれ? そう言えば音葉ちゃんの名字も街宮だったなぁ」

「えっ あ。そうそう。同じ苗字なんですよ、光栄なことにっ!」


 街宮って苗字は、多くはないけど物凄く珍しい苗字ってわけでもないからか、引きつりそうになりながら相槌を打ったら小畑さんはそれ以上突っ込んでは来なかった。

 そう、私の姉、音葉ちゃんの職業は歌って踊れる声優さんなのだ。そのかわいい外見からは想像もつかないだろうけど、とんでもないオタクでもある。私が二次元に捕らわれたのも、姉の影響が大きい。


 ハマったことに後悔なんてないし、そもそもが引きこもりインナーサークルぐるぐる型思考タイプだから、沼に引きずり込まれたのは本望なので、何の問題もないんだけど。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛

ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎 潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。 大学卒業後、海外に留学した。 過去の恋愛にトラウマを抱えていた。 そんな時、気になる女性社員と巡り会う。 八神あやか 村藤コーポレーション社員の四十歳。 過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。 恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。 そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に...... 八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。

雨降る夜道……

Masa&G
恋愛
雨の夜、同じバス停で白いレインコートの女性が毎晩、誰かを待っている。 帰ってこないと分かっていても、 それでも待つ理由がある―― 想いが叶うとき―― 奇跡が起きる――

妖狐の嫁入り

山田あとり
恋愛
「――おまえを祓うなどできない。あきらめて、俺と生きてくれ」 稲荷神社の娘・遥香(はるか)は、妖狐の血をひくために狐憑きとさげすまれ、ひっそり生きてきた。 ある日、村八分となっている遥香を探して来たのは怨霊や魔物を祓う軍人・彰良(あきら)。 彼は陰陽師の名門・芳川家の男だった。 帝国陸軍で共に任務にあたることになった二人だったが、実は彰良にもある秘密が――。 自己評価は低いが芯に強さを秘める女が、理解者を得て才能を開花させる!   & 苦しみを抱え屈折した男が、真っ直ぐな優しさに触れ愛を知る! 明治中期風の横浜と帝都を駆ける、あやかし異能ロマンス譚です。 可愛い妖怪・豆腐小僧も戦うよ! ※この作品は、カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

2月31日 ~少しずれている世界~

希花 紀歩
恋愛
プロポーズ予定日に彼氏と親友に裏切られた・・・はずだった 4年に一度やってくる2月29日の誕生日。 日付が変わる瞬間大好きな王子様系彼氏にプロポーズされるはずだった私。 でも彼に告げられたのは結婚の申し込みではなく、別れの言葉だった。 私の親友と結婚するという彼を泊まっていた高級ホテルに置いて自宅に帰り、お酒を浴びるように飲んだ最悪の誕生日。 翌朝。仕事に行こうと目を覚ました私の隣に寝ていたのは別れたはずの彼氏だった。

花も実も

白井はやて
恋愛
町で道場を営む武家の三男朝陽には最近、会うと心が暖かくなり癒される女性がいる。 跡取り問題で自宅に滞在したくない彼は癒しの彼女に会いたくて、彼女が家族と営む団子屋へ彼は足しげく熱心に通っているのだが、男と接客している様子を見ると謎の苛立ちを抱えていた。

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

運命の番より真実の愛が欲しい

サトウミ
恋愛
田舎娘のゾーイは龍族の王子・シャウロンの『運命の番』だった。 ロマンチックな恋を夢見るゾーイは『運命の番』であるシャウロンと会えるのを楽しみにしていた。 しかし、シャウロンはゾーイに対して素っ気ない。 運命の番だからといって、必ずしも愛し合う関係だとは限らないらしい。 それを悟ったゾーイは、シャウロンのもとから去ることを決意した。

処理中です...