ならば今、勇敢な恋のうたを歌おう

神室さち

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2 なんとなくもやもやする、のはなぜなのかと。

戦場にふさわしい武装って大体過剰。

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「その服」

 そう言って、大峰さんがちらりとこちらを窺う。

「……変ですか?」

「いや、似合ってるよ。制服姿で髪もまとめてるところしか見たことなかったから、ギャップにびっくりしたけど」


 こっちの最寄駅のトイレで化粧を直して、カバンに入りっぱなしだった姉が入れた服を、薄手だけど保温性の高い長袖タートルの白いインナーの上に着て、結ったままだった髪も解いて下ろした。

 きつく巻いて纏めていた、もともと少し癖のある髪は勝手にゆるく巻いていて、自然としっくり落ち着いた。

 店までたどり着いて、止(とど)めにメガネも外した。コンタクトの持ち合わせがないから視界はボヤボヤだけど、全然見えないわけじゃないから構わない。


 いやいっそ、見えない方がいい。


 こんな意趣返しみたいなことは、我ながら小っちゃいなぁと思いながら、でもさりげない親切を装ってウソをついた内藤さんには腹が立ったので、もうバカにされてもいいやと思って思い切ってみたんだけど、とりあえず、大丈夫だったみたいでほっとする。


「俺よりコイツの方が動揺がひどくてな、街宮さんが気になるのに近づけないって言うから連れてきてやったんだけど」

「そ、そういうのを、大きなお世話っていうんです」

 グイッと腕を引っ張られて、ずれかけたメガネを人差し指で戻しながら、小畑さんはどもりながら抗議している。

「そうそう。小さな親切大きなお世話ってね」

 猫科の肉食獣に咥えられた小動物を思わせる小畑さんの様子を眺めていたら、別の方向から全然知らない人がやってきて、断りもせずに隣にどっかり座った。


「いやー ワタヌキの総務はレベル高いって聞いてたけど、ホントだったんだな」

 多分、この人もイケメンというジャンルに分類されるんだろうけど、佐藤君と比べたらかなりナンパな感じな人だ。


 ウチの総務がレベル高いって、内藤さん達の事だよね。


「ああ、俺、友枝」

 じーっと見ているとスマートな動作で名刺を一枚くれた。佐藤君たちと同じ会社のSEらしい。ウチの担当じゃないけど。

「はぁ」

 気の抜けた私の返事もお構いなしで、友枝さんと大峰さんに挟まれた小畑さんを交えて、なんだかんだと漫才みたいな会話にも挟まれる。

 適当に振られた話に相槌を打ちながら、テーブルにあるものを食べつつ、ちびちびウーロン茶を飲んでいると、退屈したらしい小畑さんがそっと逃げにかかる。身じろぎしたそのポケットからちらっと見えたものに、気づいたら反応してしまっていた。

「あっ それ、年末限定の刃朔羅(はざくら)。いいなぁ 私、それ当たらなかったんです」


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