やさしいキスの見つけ方

神室さち

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抱きしめて抱きしめて抱きしめてキスを交わそう

5-2 家

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「ん、ふぁ……いっ! やっ!!」
 とろん…と、気持ちいい余韻に浸ろうとしていた夏清の意識が慣れない所に入れられた井名里の指が動いたことで一気に覚醒する。
「やめっ! やだぁそんなとこ……後ろのほう、指、入れないで……出してよぅ」
 胸に抱いていた井名里の頭を引き剥がして、夏清が涙目で懇願する。
「なんで? こっち入れた瞬間、前、すごく締まったけど?」
 そう言って、少し指を動かす。前の方には人差し指と中指、二本入っているが、後ろはまだ小指の第一関節がやっと入っただけだ。
「んっ! やだってばぁ……だって、なんか、変だよ。トイレ行きたいカンジ」
 猛烈な異物感にとうとう夏清が涙を浮かべている。最近やっと嘘泣きと本泣きの違いがわかってきた。今日の涙は二対八で嘘泣きである確率が低そうな様子だが、見なかったことにして前だけ指を抜く。抜いた指に絡み付いて溢れてくる蜜の量が、いつもより多い。
 それをすくい取ろうとする井名里の指の動きに、夏清が腰を引こうとして、なれない刺激にまたかわいらしく悲鳴をあげる。それを許さずに引き寄せて、股間からへそを伝って、胸の間までべったりと塗りつけて、さらに舐める。
「や、だ。そんなことしないでってばぁ」
 ぞくぞくと、夏清の背中を奇妙な快感が走る。悟られまいとしても、上ずった声をあげてしまえば無理だ。
 一方の井名里は、びっくりするくらいおとなしくしている夏清に、チャンスとばかりにやってはみたものの、胸や腹にキスをして愛撫をしても、全く緩むことのないそこに、さすがにいきなりは無理かと、今日のところは諦めることにする。時間はこれから、まだまだあるのだ。
 未練はあるが、これ以上いじめるわけにもいかない。指が抜かれて夏清が体から力を抜いて、ほっとしたような顔をする。
「それに、そんなとこでしたがる人いないもん」
「いるって」
「嘘。どこに?」
「目の前」
 狭い洗い場に膝をついていた井名里が、出しっぱなしのシャワーをとり、手を洗って夏清の体も流す。
「そんな変態、先生だけに決まってるもん。絶対だまされないもん」
「でも気持ちよかっただろ?」
 冷たくなった夏清の髪にもう一度シャワーをかけて、夏清の使っている甘そうなシャンプーをとり、聞きながらあわ立てて頭につける。
「………」
 おとなしく洗ってもらいながら、夏清が黙り込む。自分の思う『気持ちいい』のとはちょっと違うのだが、確かにいつもより早くあっさりとイってしまったのは、そのせいのような気もする。
「ほれ、目に入るぞ」
 うつむこうとした夏清の頭をかくんとあげさせ、額に落ちかけた泡を取る。
 指がかかる影に一度目を閉じた夏清が、おずおずと瞳を開く。答えられない夏清の様子を、井名里が楽しそうに笑って見下ろす。からかうようなその表情に、夏清が頬を膨らませる。
 むー、と言いながらぷりぷりに頬に空気を入れている夏清に、こらえきれずに井名里が軽くキスをする。
「でも普通、やらないんだよね?」
 長い指にマッサージされているようで髪を洗ってもらうのは実はものすごく気持ちいい。やっと落ち着いた夏清が、念を押すように井名里に聞く。
「さあ? わりとやってんじゃないのか? 今度ツレにでもリサーチしてみようか?」
 知りたいけど知られたくない。リサーチすることはイコールでこちらもリサーチされてしまう。自分まで変な趣味を持っていると思われるのは絶対にいやだ。
「………それは、ちょっとやだ……」
 色々考えをめぐらせているうちに、くるりと後ろを向かされて、シャワーで髪を流してもらいながら、夏清がつぶやく。井名里がざくざくときれいに流して、トリートメントを出して髪につけ、シャンプーなどが置いてあるスチールラックにひっかけてあるプラスチックの髪留めで、夏清の髪を器用にまとめて留める。
「よし」
 きれいにまとまったのか、井名里が満足そうにそう言って、今度はボディーソープをとる。
「や、ちょっと、スポンジ使ってってば。うひゃ!」
 ぬるりとした感触を残して、井名里の大きな手が肩から背中、わきの下を通って胸に回ってくる。
 夏清の体はどこもかしこもやわらかくて触りごこちがいい。せっかく洗うのに、そんなものを使っていてはもったいないことこの上ない。
「却下」
「却下って! 使ってよぅ 先生って、なんか洗い方やらしいからやだ」
「ほほう、やらしい洗い方ってこうか?」
「いやーっ!! ……ーっ! っん!!」
 腕の中で夏清が暴れる。
 何度やっても最初は拒否して抵抗する夏清に、そろそろ慣れて素直になってくれと思っていた井名里だが、従順になられると逆に歯止めが効かなくなってやり過ぎそうになってしまい、いつもどおりやりにくくて仕方ないことがわかり、やっとペースが戻ってきて嬉々として夏清の体をいじりまわす。抵抗しているうちは大丈夫だということをもう知っているから。
 石けんですべりがよくなった指の間でぴんと勃った乳首を転がされて夏清が息をのむ。
 嫌だ嫌だといいながら、それでもどんどん抵抗する力が抜けていく。最後には、嗚咽とも取れるくらいのインターバルの短い悲鳴しか聞こえなくなる。
「洗っても洗っても、すごいけど? ココ」
「……ちがっ!! っぁん!」
 井名里が、音を立ててそこに這わせた指を動かす。否定したくて夏清が頭を振った拍子に、留めていた髪が解けて広がる。髪留めが床に当たって軽い音を立てて転がった。
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