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前世の記憶は突然に。

なぜ、私の前世の趣味は手芸ではなかったのか。

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 ラームは大勢の手によって、実に手際よくさばかれていった。

 毛皮も、とてもいい感じにはがれた。

 毛皮だけで結構な重さで、お父さんとお兄ちゃんたちが三人がかりで家に持って帰り、軒につるしてくれたので、お母さんとメルとお嫁に行ったララにも手伝ってもらって毛刈りをし、分厚い皮と分けた。

 毛の方は水魔法でひたすら洗って干してを繰り返しました。


 何度も洗って獣臭さを取って、さて。


 羊毛を糸にする、糸車はおとぎ話の絵本で見たことはある。巻く角度を変えて糸によりをかけていくんだろうなってこともわかる。でも糸車を再現することは無理だ。よくわからん。


 糸にすることを早々に断念し、次なるは……フェルトである。

 確かあれ、羊毛を蒸して縮めて作ったんだと思う。多分。


 というわけで、ほんの少しだけ茹でてみたところ、沸騰するまでやったら思った以上にカッチカチになった……失敗。サイズ的にも、鍋敷きくらいにしかならないな、これは。


 でも、茹でたら匂いが格段に落ちた。


 次はぬるま湯でやってみる。徐々に温度を上げて、ふわふわかつ、簡単にちぎれないくらいの硬さにするために試行錯誤。

 それなりに納得できるフェルトができたので、お母さんに赤ちゃん用の布団を仕立ててもらった。


 私の裁縫能力は……無力どころかむしろマイナスだったので、もうあきらめて上手な人に頼るよりほかにない。泣いてない。


 これで、冬が来ても寒くて死ぬようなことはなくなるはず!



 この村の赤ちゃん死因はダントツ一番凍死なのだ。悲しいことに。


 一昨年の冬は、お父さんが、移住してから一番寒かったって言うくらい寒くて、小さい子が大勢亡くなったんだ。


 なんせ羊毛は大量にある。

 畑仕事の合間をぬって、ひたすらフェルトを量産する。

 赤ちゃんがいるのはうちだけじゃない。これだけあれば、村中の赤ちゃんや小さい子が着て寝られるお布団が作れると思うんだ。


 噂を聞いて、私やメルの友達や、ほかにも小さい子がいるお母さん──私とそう変わらない年齢の子たちがうちにやってきて、パッチワークみたいにして布団にしたり、我が家は大変にぎやかになった。


 割と忙しくしていたら、突然村長さんがうちに来た。いや、電話とかないから、来るならいきなりになるのは普通なんだけどさ。



「……これがなんだ……ふぇると、だっけか」

「そう。ララのとこに持って行ったのを見たの?」

 ララはまだ、妊娠したとかそう言うのはないけれど、そのうち子供ができるだろうし、結婚祝いに渡したのだ。村長さんは、それを見たらしい。


 我が家の庭で何とか家内制手工業的に生産して、ぎりぎりサイズが二十センチ四方くらいのフェルト。

 これ、そもそも一.五倍くらいのサイズを縮めてるから、それ以上のサイズをこの体で生み出せないのです。

 それを適当な大きさに縫い合わせてもらっている。


 そのフェルトを手に取った村長さんに、お母さんが対応してくれる。


「ああ、すごいな、軽くて暖かで。ラームの毛がこんな風になるとは」


 感心してくれている村長さんの手前、ほんとは糸にして編みたかったとか、編み物は存在するのでおそらく出荷した毛は糸になっているはず、とは言えない。


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