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プロローグ
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俺はとてつもなく困っていた。貯金額を見てみると残高は限りなく少なく、もうすぐ貯金が底をつきそうな為、今月の家賃代を払うのでやっとだ。なぜこうなっているかというと、親が借金を作って蒸発したからだ。親だからといって連帯保証人になんてなるんじゃなかった。後悔しても遅いので、今は打開策を考えることに集中する。悲観的にならずにポジティブに物事を考えることが出来る。こういうところは自分のいいところだと思う。
(さて、どうしたもんか)
給料が高くてすぐ入れるような仕事もないだろう。自分は会社員であるが今の給料では低すぎる為、一生かかっても借金を返しきれるとは思わない。ちなみに借金額は一億円。どうしてそんな額になってしまったのか。俺も聞いたときは現実を受け止めきれなかった。しかし親がどこにいるか分からない以上、自分で払うしかないのだ。
こういう時はネットで情報を集めるに限る。「高時給 仕事」と調べ、見ていく。案の定すぐ入れて尚且つ高時給という仕事はない。諦めかけていたその時、とあるサイトを見つけた。「なんだろう、これ。」そこにはとある条件を達成出来たら報酬をもらえるという謳い文句が書かれており、時々文字化けしている箇所もあった。なかなかに怪しい。しかも期限は今日までで場所指定までされている。普通の人であれば到底信じられない内容である。でもその時の俺は早く借金を返さないといけない焦燥感に駆られていたし、怪しくても藁にも縋る思いだったのだ。参加の申し込みをし、急いでその場所に向かうことにした。
「場所指定されてるところはここか。」
サイトに書かれた場所を頼りに来てみると、かなり豪華そうな建物だった。高層マンションぐらいの高さである。こんなところに来たこともない為緊張したが、とりあえず中に入り、進んでいく。指定の階につき到着すると、雰囲気がなんだか暗かった。外観は豪華できらびやかな感じなのに中はこんな風になっているのかと思っていると、廊下の奥から誰かが歩いてくる。目を凝らし見てみると、それはうさぎの着ぐるみだった。急に現れた着ぐるみにぎょっとしてしまう。
(やっぱり、怪しすぎる!今からでも逃げるべきか?)
今更ながらに怖くなった俺はエレベーターを使い下に戻ろうとするが、なぜかボタンを押しても一向に来る気配がない。その間にもウサギの着ぐるみはこちらに迫っている。もうダメだと思い、ぎゅっと目をつぶる。しかし一向になにもない為、目を開けてみる。すると、そこには土下座をしている着ぐるみの姿があった。
「き、着ぐるみが土下座してる!」言葉を発すると、着ぐるみは勢いよく顔を上げる。怖いから急に動かないでほしい。
「よく来てくれた!まさかあんな怪しいサイトに応募してくれる人がいるなんて!僕は今猛烈に感動している!」
一気に言葉をしゃべった着ぐるみは余程嬉しいのか俺に抱き着いてきた。く、苦しい!
「あ、怪しいって自覚あったんですね。ていうか!苦しいから放してください!」
「おっと、悪かったね。興奮するとついこうなってしまうんだ。気にしないでくれ。」
気にするなというほうが無理があると思うが、それはいったん置いておこう。気を取られていたが、仕事をするためにここに来たのだ。仕事内容は書かれていなかったが多額のお金をもらえるのだ。覚悟はきちんとしてきた。(借金を返す為なら、なんだってやってやる!)人知らず決意していると、着ぐるみの男は喋った。「それじゃあ、ここじゃなんだし、部屋に移動しよう。そこで君にしてもらいたい事を話すよ。」
そういうと来た道をまっすぐ進み始めたので、俺も後に続いて進んでいった。
「さあ、ここが部屋だ。入ってくれ。」
そういい、部屋に通された俺はソファーに腰掛ける。着ぐるみの男も向かい側に腰がける。
机の上にお茶が置いてあった。のどが渇いていたので飲んでもいいかと聞くといいと言われたので一気飲みした。
「では、君の仕事について単刀直入に言おう。」
俺は緊張する。覚悟は決めてきたつもりだったが、いざとなると怖い。ここまできたら腹をくくるしかないのだ。
(臓器を提供とか、させられるんだろうな。)
そんなことを考えているとばらばらと机の上に何かが置かれた。何かと思ってみてみると、それはカセットだった。しかもソフト名には「BL」と書かれている。しかも一つではない。見た限りすべてのソフトにだ。
「えっと、これはなんですかね?」
「見たとおりだよ。BLゲームだ。」いや、それは見たら分かるに決まっている。質問したのはなぜこのゲームが出されたのかということだ。困惑の表情を浮かべていると、相手は察したのか言葉を続ける。
「なぜ、このゲームを君に見せたかというと、君にはこれからBLゲームの世界に行ってきてもらいたいからだ。」
今、何て言ったのだろうか?BLゲームの世界?聞き間違いだろうか。
「もう一回行ってもらってもいいですか?」
「BLゲームの世界に行ってきてもらいたいんだ!」
さらに大きな声で言われ自分の聞き間違いではないと気付く。まったくもって意味が分からない。普通「プレイする」だろ。「行ってもらいたい」とはどういうことだ。
「目の前にあるのはすべてBL関連のゲームだ。その中から君に一つソフトを選んでもらう。そしてその世界の人物を一人選ぶ。要するに攻略相手だ。その相手を救ってもらいたい。」
「中って、そもそもゲームの世界に行けるわけないじゃないですか。」
「それができるんだよ。私の機械にかかればね。」
そういうとにやっと笑う。着ぐるみなのに表情を変えれるのかと不思議に思う。
いや、そんなことよりさっき言われたことのほうが不思議すぎる。なんだゲームの世界に行くって。普通に考えるとあり得ない。しかし、いちいち疑問を持つときりがないように思える。そもそもこの施設もこのウサギの着ぐるみも謎が多すぎるのだ。これは悪い夢だと思うことにして、すべてを受け入れよう。
「さて、それではソフトを一つ選んでもらおうかな。」
そう言われ机のほうを見るが、どれがいいのか分からない。
(しかも、題名しか書かれてないからそこからどんなストーリーとか想像しないといけないな。)
ゲームの世界に行けるとは本気で思っていないが、一応の為に設定は分かりやすいものがいい。学園ものとかなら、何とかできないこともないだろうと考える。昔、学園恋愛ゲームを妹にさせられたことがあるからだ。自分になじみのないものは絶対に無理だ。特にホラー系はその代表格といっても過言ではない。倒す系のゲームなら問題ないが、怖い一枚絵とかは苦手意識がある。どれにするか迷っていると、ふと一枚のソフトが目に入った。
そこには「〇〇〇系学園生活」と書かれていた。〇の部分に文字が書かれていないことを不思議に思ったが、そんなことを考えている暇もないだろう。学園生活と書かれているし、変な物語ではないはずだ。俺はそのソフトを手にし、着ぐるみの男に渡した。
「よし、じゃあこれから君をゲーム世界に飛ばす為の準備をする。一緒に来てくれ。」
俺は立ち上がり、その男に着いていった。
「さーて、ここに座ってもらおうかな。」
ゲーム世界に飛ばすための機械があると言われていたが、本当に行けるんじゃないかというくらいしっかりした作りだった。
ふと、隣を見てみると人がいた。しかし、顔を見てみると目がなく、その間からは血が噴き出している。
「え、なん、だこれ。」
驚きで声も出ない。というか、体から力が抜けるようだ。
「どう、いうことだ、これ、は?」俺は着ぐるみを睨む。すると笑い声を漏らしながら言った。
「彼らは“失敗作”だ。ゲームの中で死んだ。だから現実でも死んだだけのことさ。」
その声には何の感情もこもっていないように聞こえた。
「君が来た時に出した飲み物に毒を仕込ませてもらった。碌な抵抗もできないことだろう。」
あの時出されたお茶に毒が仕込まれていたなんて。逃げようとするが、着ぐるみの言った通りろくに体も動かない。すると着ぐるみは急に脱ぎ始めた。その中からは一人の男が出てくる。
俺は男の姿に驚いた。目には眼帯を巻いており、片腕が欠損している。体にも切り傷がいくつもありそれはとても痛々しいものだった。
「これはね、“奴ら”につけられた傷だ。君もそれを今から体験することになる。」
どういうことだと聞こうとした時、男は俺の体を持ち上げ機械に括り付けた。
「おい、離、せ!」体をよじると男は俺に言った。
「どうか、“僕達”を救ってくれ。」
その声を最後に俺の意識は途絶えた。
暗い、悲しい、痛い。
・・・・・・い。
なにか、声が聞こえる。誰かに呼ばれているみたいだ。
「・・・・い、おい!」
意識が覚醒する。目を開けると、目の前には男の顔が目いっぱい広がっていた。
「ち、近い。距離が近い!」俺はとっさに手を突き出すと、相手の顔にクリーンヒットを決めてしまった。「わ、悪い。大丈夫か?」「ああ、大丈夫だぜ!こっちこそ急にごめんな。俺の名前は天だ。よろしく!呻いてたから心配になって。」そう言い、にかっと笑う青年はとても人当たりがよさそうな笑みを浮かべる。体格も良く、スポーツ選手かと思うほどだ。
というか、ここはどこなんだろう。俺はさっきまで借金返済の為に高層ビルに訪れて、そこでウサギの着ぐるみを着た男に訳の分からないことを言われた。もしかしてここは本当にゲームの世界ではないだろうか。信じたくはなかったが、この光景を見ると信じざるを得なかった。部屋には人が何人か横たわっている。
(しかも全員、出血がひどい。)
俺達を救ってくれ。そう男は言っていた。もしかすると人を守ってくれという意味なのか?しかし、俺は敵が何者かも誰を救えばいいのかも分からない。どうすればゲームの世界から出られるかもだ。まずは情報を集めないと話にならない。そう思った俺は最初に出会った男に聞くことにした。
「ここはどこなんだ?それになんで多くの人たちが大量出血してるんだ。」
「お前、覚えてないのか!学園に急に多くのゾンビが入ってきて。ほとんどの人たちがやられただろ。生き残っているのはCクラスの俺達だけだ。」
そう言うと、顔を苦しそうに歪めた。俺は聞いた内容に驚く。ゾンビが出てくるということは、間違いなくホラー系統のゲームだろう。あの時、無意識にソフトを選んでしまった自分を悔やんでしまう。しかも残っている人達はここにいる人だけだということだろうか。ということは、ゲームの世界では顔見知りということだ。
「そういえば君の名前を聞いてなかったな。」
「え?俺の名前を知らないのか?」
「君は今日転校してきたばかりだろ。しかも自己紹介されるときにゾンビが来たから、結局分からなかった。」
転校初日の自己紹介の時にゾンビが来るなんてどんだけ運がないんだ、この主人公は。そういったところは自分に似ているように思う。
すると目の前が明るくなった。そこには四角いテロップと一緒に主人公名を入力してくださいという文字がある。急に現れた文字に驚くがここがゲームの世界だというなら不思議ではないだろう。そう思いながら俺は現実世界での名前から“ゆう”という名前を付けた。
「俺はゆうだ。よろしく、天。」
「こちらこそよろしくな!ゆう。」
妙な達成感を覚えていると後ろから声がかけられる。
「ねえ、君大丈夫?」
声がした方向を振り返ってみると俺は驚く。白く長い髪は結われて一つにまとめられている。身長は俺よりも低く、160いくかいかないかくらいだ。ウサギの着ぐるみを着た男の姿にそっくりだった。
「さっきからぼーっとしてるから、具合悪いのかと思って。」
「だ、大丈夫。少し考え事をしてただけだから。」
「そっか。なら良かった。」
そう言い、笑う姿は天使のようだ。とてもあのときの着ぐるみの男と一緒だとは思えないほどに。そう思っていると、天が会話に参加した。
「あ、雪!起きたのか。いつまで寝てんのかと思ったぜ。」
「少し疲れて寝てただけでしょ。それくらい許してよ。ちゃんと仕事してきたんだし。」
仕事?その単語に疑問を持ち、聞いてみる。
「仕事って、どういうことだ?」
「ああ、君は知らないだろうけど、彼は体術が得意なんだ。しかも華奢で動きもすばしっこいから、よくこの部屋から出て食品を取ってきてもらうんだよ。」
「華奢は余計。この運動馬鹿。」
「誉め言葉だな。」
二人のやり取りを聞きながら俺は考える。
この部屋に閉じこもっているということは、この外は危険だから出られない。なぜなら外にはゾンビがいるから。きっと学園中に徘徊しているであろう姿を想像し、背筋がゾッとする。
こんな状況何とかしたほうがいいに決まっている。そうしないと帰れないわけだから、そうするしか選択肢もない。しかし、問題なのは食料と飲料だ。学校に食べ物があるとはいい長くはもたないだろう。そう考えていると、天が言葉を発する。
「そろそろどうにかしないとな。食料と水も、もう残り少ない。もって一週間だ。」
「かなりまずいね。そろそろ動かないと。助けを待ってても、来る可能性の方が低いし。」
「なら、早く行動を起こすべきだ。」
部屋の中に凛々しい声が響く。声を発した男はこちらに向かってきた。
その男は目の前に立つと、じっと見降ろしてくる。身長は天よりも高く180はありそうだ。
整った顔立ちをしていて、その顔には表情がない。男からの圧を感じて身を縮めてしまう。「ちょっと、蓮。ゆうに圧かけないで。怖がってるでしょ。」
「・・・・ふん。」
そういうと、興味なさそうに俺から目線をそらした。雪には感謝の目線を送っておこう。
雪のほうをみると優しく微笑んでくれた。
「でも、蓮の言うとおりだな。そろそろ行動を起こさないと。」
天は腕を組み頭を悩ませている。確かに早くしないと飢え死んでしまうことは確定だ。この世界で死ぬと現実世界でも死ぬと、あいつは言っていた。そんなことになるのはごめんだ。
そうなる前にどうにかしないと。でもどうすればいいんだろう。助けが来ないとなると、自力で脱出するしかない。しかし、学園の中だけでなく外も同じことになっているのだとしたら、逃げ道はない。どうすればこのゲームのクリアにつながるのか分からなかった。
すると蓮が言葉を発した。
「緊急装置に向かえばいい。」
「緊急装置?」
おれは思わずつぶやく。すると雪ははっとしたように言った。
「そうだね。そこに行けば外に助けを呼ぶことが出来るし、待っているよりもずっと確率は高いね。」
「そうと決まったら急ごう。でも、人選はどうするんだ?動けるのは俺達だけだし。」
「二手に分かれたらいい。この部屋で待っている組と、この部屋から外に出て緊急装置を探す組に。」
そう言う連に俺は言った。
「俺は外に出て、緊急装置を探したい。」
そういうと、皆は驚いた顔をした。
「なに言ってるんだ!君はまだここに来たばかりだろ。中に残った方が安全だ!」
天は慌てた様子でそう言ってくる。きっと心配してくれているのだろう。しかしこれだけは譲れなかった。
「頼む。行かせてくれ。」そう訴えると、天は俺の覚悟を感じたのか、分かったと言ってくれた。
「なら、もう一人はゆうに選んでもらおうよ。」
雪はそう言い、目線を天と蓮に向ける。
「ああ、もちろんだ。蓮もそれでいいよな?」
「勝手にしろ。俺はどちらでもいい」
そういい、皆は目線をこちらに向けてくる。誰にすればいいのだろうか。皆、この学園の生徒なのだから頼りになるだろう。天は体格も良かったし、力もある。雪はよく外に出ていたと言っているからきっと心強いだろう。蓮は正直言って、性格が苦手だ。でも、緊急装置のことも提案していたし頭がいいのだろう。色々考えていると目の前にテロップが表示される。
ルートを選択してください。その下にはそれぞれ天・雪・蓮の名前が書かれていた。
悩んだ俺はパートナーを一人に絞った。
俺が選ぶのは・・・・。
(さて、どうしたもんか)
給料が高くてすぐ入れるような仕事もないだろう。自分は会社員であるが今の給料では低すぎる為、一生かかっても借金を返しきれるとは思わない。ちなみに借金額は一億円。どうしてそんな額になってしまったのか。俺も聞いたときは現実を受け止めきれなかった。しかし親がどこにいるか分からない以上、自分で払うしかないのだ。
こういう時はネットで情報を集めるに限る。「高時給 仕事」と調べ、見ていく。案の定すぐ入れて尚且つ高時給という仕事はない。諦めかけていたその時、とあるサイトを見つけた。「なんだろう、これ。」そこにはとある条件を達成出来たら報酬をもらえるという謳い文句が書かれており、時々文字化けしている箇所もあった。なかなかに怪しい。しかも期限は今日までで場所指定までされている。普通の人であれば到底信じられない内容である。でもその時の俺は早く借金を返さないといけない焦燥感に駆られていたし、怪しくても藁にも縋る思いだったのだ。参加の申し込みをし、急いでその場所に向かうことにした。
「場所指定されてるところはここか。」
サイトに書かれた場所を頼りに来てみると、かなり豪華そうな建物だった。高層マンションぐらいの高さである。こんなところに来たこともない為緊張したが、とりあえず中に入り、進んでいく。指定の階につき到着すると、雰囲気がなんだか暗かった。外観は豪華できらびやかな感じなのに中はこんな風になっているのかと思っていると、廊下の奥から誰かが歩いてくる。目を凝らし見てみると、それはうさぎの着ぐるみだった。急に現れた着ぐるみにぎょっとしてしまう。
(やっぱり、怪しすぎる!今からでも逃げるべきか?)
今更ながらに怖くなった俺はエレベーターを使い下に戻ろうとするが、なぜかボタンを押しても一向に来る気配がない。その間にもウサギの着ぐるみはこちらに迫っている。もうダメだと思い、ぎゅっと目をつぶる。しかし一向になにもない為、目を開けてみる。すると、そこには土下座をしている着ぐるみの姿があった。
「き、着ぐるみが土下座してる!」言葉を発すると、着ぐるみは勢いよく顔を上げる。怖いから急に動かないでほしい。
「よく来てくれた!まさかあんな怪しいサイトに応募してくれる人がいるなんて!僕は今猛烈に感動している!」
一気に言葉をしゃべった着ぐるみは余程嬉しいのか俺に抱き着いてきた。く、苦しい!
「あ、怪しいって自覚あったんですね。ていうか!苦しいから放してください!」
「おっと、悪かったね。興奮するとついこうなってしまうんだ。気にしないでくれ。」
気にするなというほうが無理があると思うが、それはいったん置いておこう。気を取られていたが、仕事をするためにここに来たのだ。仕事内容は書かれていなかったが多額のお金をもらえるのだ。覚悟はきちんとしてきた。(借金を返す為なら、なんだってやってやる!)人知らず決意していると、着ぐるみの男は喋った。「それじゃあ、ここじゃなんだし、部屋に移動しよう。そこで君にしてもらいたい事を話すよ。」
そういうと来た道をまっすぐ進み始めたので、俺も後に続いて進んでいった。
「さあ、ここが部屋だ。入ってくれ。」
そういい、部屋に通された俺はソファーに腰掛ける。着ぐるみの男も向かい側に腰がける。
机の上にお茶が置いてあった。のどが渇いていたので飲んでもいいかと聞くといいと言われたので一気飲みした。
「では、君の仕事について単刀直入に言おう。」
俺は緊張する。覚悟は決めてきたつもりだったが、いざとなると怖い。ここまできたら腹をくくるしかないのだ。
(臓器を提供とか、させられるんだろうな。)
そんなことを考えているとばらばらと机の上に何かが置かれた。何かと思ってみてみると、それはカセットだった。しかもソフト名には「BL」と書かれている。しかも一つではない。見た限りすべてのソフトにだ。
「えっと、これはなんですかね?」
「見たとおりだよ。BLゲームだ。」いや、それは見たら分かるに決まっている。質問したのはなぜこのゲームが出されたのかということだ。困惑の表情を浮かべていると、相手は察したのか言葉を続ける。
「なぜ、このゲームを君に見せたかというと、君にはこれからBLゲームの世界に行ってきてもらいたいからだ。」
今、何て言ったのだろうか?BLゲームの世界?聞き間違いだろうか。
「もう一回行ってもらってもいいですか?」
「BLゲームの世界に行ってきてもらいたいんだ!」
さらに大きな声で言われ自分の聞き間違いではないと気付く。まったくもって意味が分からない。普通「プレイする」だろ。「行ってもらいたい」とはどういうことだ。
「目の前にあるのはすべてBL関連のゲームだ。その中から君に一つソフトを選んでもらう。そしてその世界の人物を一人選ぶ。要するに攻略相手だ。その相手を救ってもらいたい。」
「中って、そもそもゲームの世界に行けるわけないじゃないですか。」
「それができるんだよ。私の機械にかかればね。」
そういうとにやっと笑う。着ぐるみなのに表情を変えれるのかと不思議に思う。
いや、そんなことよりさっき言われたことのほうが不思議すぎる。なんだゲームの世界に行くって。普通に考えるとあり得ない。しかし、いちいち疑問を持つときりがないように思える。そもそもこの施設もこのウサギの着ぐるみも謎が多すぎるのだ。これは悪い夢だと思うことにして、すべてを受け入れよう。
「さて、それではソフトを一つ選んでもらおうかな。」
そう言われ机のほうを見るが、どれがいいのか分からない。
(しかも、題名しか書かれてないからそこからどんなストーリーとか想像しないといけないな。)
ゲームの世界に行けるとは本気で思っていないが、一応の為に設定は分かりやすいものがいい。学園ものとかなら、何とかできないこともないだろうと考える。昔、学園恋愛ゲームを妹にさせられたことがあるからだ。自分になじみのないものは絶対に無理だ。特にホラー系はその代表格といっても過言ではない。倒す系のゲームなら問題ないが、怖い一枚絵とかは苦手意識がある。どれにするか迷っていると、ふと一枚のソフトが目に入った。
そこには「〇〇〇系学園生活」と書かれていた。〇の部分に文字が書かれていないことを不思議に思ったが、そんなことを考えている暇もないだろう。学園生活と書かれているし、変な物語ではないはずだ。俺はそのソフトを手にし、着ぐるみの男に渡した。
「よし、じゃあこれから君をゲーム世界に飛ばす為の準備をする。一緒に来てくれ。」
俺は立ち上がり、その男に着いていった。
「さーて、ここに座ってもらおうかな。」
ゲーム世界に飛ばすための機械があると言われていたが、本当に行けるんじゃないかというくらいしっかりした作りだった。
ふと、隣を見てみると人がいた。しかし、顔を見てみると目がなく、その間からは血が噴き出している。
「え、なん、だこれ。」
驚きで声も出ない。というか、体から力が抜けるようだ。
「どう、いうことだ、これ、は?」俺は着ぐるみを睨む。すると笑い声を漏らしながら言った。
「彼らは“失敗作”だ。ゲームの中で死んだ。だから現実でも死んだだけのことさ。」
その声には何の感情もこもっていないように聞こえた。
「君が来た時に出した飲み物に毒を仕込ませてもらった。碌な抵抗もできないことだろう。」
あの時出されたお茶に毒が仕込まれていたなんて。逃げようとするが、着ぐるみの言った通りろくに体も動かない。すると着ぐるみは急に脱ぎ始めた。その中からは一人の男が出てくる。
俺は男の姿に驚いた。目には眼帯を巻いており、片腕が欠損している。体にも切り傷がいくつもありそれはとても痛々しいものだった。
「これはね、“奴ら”につけられた傷だ。君もそれを今から体験することになる。」
どういうことだと聞こうとした時、男は俺の体を持ち上げ機械に括り付けた。
「おい、離、せ!」体をよじると男は俺に言った。
「どうか、“僕達”を救ってくれ。」
その声を最後に俺の意識は途絶えた。
暗い、悲しい、痛い。
・・・・・・い。
なにか、声が聞こえる。誰かに呼ばれているみたいだ。
「・・・・い、おい!」
意識が覚醒する。目を開けると、目の前には男の顔が目いっぱい広がっていた。
「ち、近い。距離が近い!」俺はとっさに手を突き出すと、相手の顔にクリーンヒットを決めてしまった。「わ、悪い。大丈夫か?」「ああ、大丈夫だぜ!こっちこそ急にごめんな。俺の名前は天だ。よろしく!呻いてたから心配になって。」そう言い、にかっと笑う青年はとても人当たりがよさそうな笑みを浮かべる。体格も良く、スポーツ選手かと思うほどだ。
というか、ここはどこなんだろう。俺はさっきまで借金返済の為に高層ビルに訪れて、そこでウサギの着ぐるみを着た男に訳の分からないことを言われた。もしかしてここは本当にゲームの世界ではないだろうか。信じたくはなかったが、この光景を見ると信じざるを得なかった。部屋には人が何人か横たわっている。
(しかも全員、出血がひどい。)
俺達を救ってくれ。そう男は言っていた。もしかすると人を守ってくれという意味なのか?しかし、俺は敵が何者かも誰を救えばいいのかも分からない。どうすればゲームの世界から出られるかもだ。まずは情報を集めないと話にならない。そう思った俺は最初に出会った男に聞くことにした。
「ここはどこなんだ?それになんで多くの人たちが大量出血してるんだ。」
「お前、覚えてないのか!学園に急に多くのゾンビが入ってきて。ほとんどの人たちがやられただろ。生き残っているのはCクラスの俺達だけだ。」
そう言うと、顔を苦しそうに歪めた。俺は聞いた内容に驚く。ゾンビが出てくるということは、間違いなくホラー系統のゲームだろう。あの時、無意識にソフトを選んでしまった自分を悔やんでしまう。しかも残っている人達はここにいる人だけだということだろうか。ということは、ゲームの世界では顔見知りということだ。
「そういえば君の名前を聞いてなかったな。」
「え?俺の名前を知らないのか?」
「君は今日転校してきたばかりだろ。しかも自己紹介されるときにゾンビが来たから、結局分からなかった。」
転校初日の自己紹介の時にゾンビが来るなんてどんだけ運がないんだ、この主人公は。そういったところは自分に似ているように思う。
すると目の前が明るくなった。そこには四角いテロップと一緒に主人公名を入力してくださいという文字がある。急に現れた文字に驚くがここがゲームの世界だというなら不思議ではないだろう。そう思いながら俺は現実世界での名前から“ゆう”という名前を付けた。
「俺はゆうだ。よろしく、天。」
「こちらこそよろしくな!ゆう。」
妙な達成感を覚えていると後ろから声がかけられる。
「ねえ、君大丈夫?」
声がした方向を振り返ってみると俺は驚く。白く長い髪は結われて一つにまとめられている。身長は俺よりも低く、160いくかいかないかくらいだ。ウサギの着ぐるみを着た男の姿にそっくりだった。
「さっきからぼーっとしてるから、具合悪いのかと思って。」
「だ、大丈夫。少し考え事をしてただけだから。」
「そっか。なら良かった。」
そう言い、笑う姿は天使のようだ。とてもあのときの着ぐるみの男と一緒だとは思えないほどに。そう思っていると、天が会話に参加した。
「あ、雪!起きたのか。いつまで寝てんのかと思ったぜ。」
「少し疲れて寝てただけでしょ。それくらい許してよ。ちゃんと仕事してきたんだし。」
仕事?その単語に疑問を持ち、聞いてみる。
「仕事って、どういうことだ?」
「ああ、君は知らないだろうけど、彼は体術が得意なんだ。しかも華奢で動きもすばしっこいから、よくこの部屋から出て食品を取ってきてもらうんだよ。」
「華奢は余計。この運動馬鹿。」
「誉め言葉だな。」
二人のやり取りを聞きながら俺は考える。
この部屋に閉じこもっているということは、この外は危険だから出られない。なぜなら外にはゾンビがいるから。きっと学園中に徘徊しているであろう姿を想像し、背筋がゾッとする。
こんな状況何とかしたほうがいいに決まっている。そうしないと帰れないわけだから、そうするしか選択肢もない。しかし、問題なのは食料と飲料だ。学校に食べ物があるとはいい長くはもたないだろう。そう考えていると、天が言葉を発する。
「そろそろどうにかしないとな。食料と水も、もう残り少ない。もって一週間だ。」
「かなりまずいね。そろそろ動かないと。助けを待ってても、来る可能性の方が低いし。」
「なら、早く行動を起こすべきだ。」
部屋の中に凛々しい声が響く。声を発した男はこちらに向かってきた。
その男は目の前に立つと、じっと見降ろしてくる。身長は天よりも高く180はありそうだ。
整った顔立ちをしていて、その顔には表情がない。男からの圧を感じて身を縮めてしまう。「ちょっと、蓮。ゆうに圧かけないで。怖がってるでしょ。」
「・・・・ふん。」
そういうと、興味なさそうに俺から目線をそらした。雪には感謝の目線を送っておこう。
雪のほうをみると優しく微笑んでくれた。
「でも、蓮の言うとおりだな。そろそろ行動を起こさないと。」
天は腕を組み頭を悩ませている。確かに早くしないと飢え死んでしまうことは確定だ。この世界で死ぬと現実世界でも死ぬと、あいつは言っていた。そんなことになるのはごめんだ。
そうなる前にどうにかしないと。でもどうすればいいんだろう。助けが来ないとなると、自力で脱出するしかない。しかし、学園の中だけでなく外も同じことになっているのだとしたら、逃げ道はない。どうすればこのゲームのクリアにつながるのか分からなかった。
すると蓮が言葉を発した。
「緊急装置に向かえばいい。」
「緊急装置?」
おれは思わずつぶやく。すると雪ははっとしたように言った。
「そうだね。そこに行けば外に助けを呼ぶことが出来るし、待っているよりもずっと確率は高いね。」
「そうと決まったら急ごう。でも、人選はどうするんだ?動けるのは俺達だけだし。」
「二手に分かれたらいい。この部屋で待っている組と、この部屋から外に出て緊急装置を探す組に。」
そう言う連に俺は言った。
「俺は外に出て、緊急装置を探したい。」
そういうと、皆は驚いた顔をした。
「なに言ってるんだ!君はまだここに来たばかりだろ。中に残った方が安全だ!」
天は慌てた様子でそう言ってくる。きっと心配してくれているのだろう。しかしこれだけは譲れなかった。
「頼む。行かせてくれ。」そう訴えると、天は俺の覚悟を感じたのか、分かったと言ってくれた。
「なら、もう一人はゆうに選んでもらおうよ。」
雪はそう言い、目線を天と蓮に向ける。
「ああ、もちろんだ。蓮もそれでいいよな?」
「勝手にしろ。俺はどちらでもいい」
そういい、皆は目線をこちらに向けてくる。誰にすればいいのだろうか。皆、この学園の生徒なのだから頼りになるだろう。天は体格も良かったし、力もある。雪はよく外に出ていたと言っているからきっと心強いだろう。蓮は正直言って、性格が苦手だ。でも、緊急装置のことも提案していたし頭がいいのだろう。色々考えていると目の前にテロップが表示される。
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悩んだ俺はパートナーを一人に絞った。
俺が選ぶのは・・・・。
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