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第7章 世界は変化する
第8話 対話
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ライル・エリクシアはほくそ笑んでいた。お目当てのものがギルドの遺物保管庫に眠っており、無事に手に入れることができたからだ。
「本当にその合成魔石でよろしいので? もう使えませんが……価格は高いですが天然魔石もありますよ」
ギルドの担当職員はその錆びついた色合いの鉱物を購入者ライルに手渡しながら、少し遠慮がちに声をかける。やっぱやめた! が今ならまだ間に合いますよと。
「いえ、探していたものなので。……ですがどこか部屋を貸していただけませんか。少し調整をして足りないものがあれば追加で購入したいのです」
職員の方はこんな古いものが直せるのか? と、内心思っているのがありありとわかる顔をしていた。だがもちろん口には出さない。こういうところには稀にライルのように突拍子もないと思われる研究をしている学者がやってくるのだ。
「ではあちらをお使いください。新しく作った保管庫なんですが、まだ何も入っていないので」
どうも、と軽く会釈しライルは早速魔王探知機の改良を始めた。
(天然魔石より合成魔石の方が圧倒的に強力で安定した出力を保てるんだが)
なぜ天然物の方が価値が高いのか、イマイチ納得できないとライルは思っている。魔石は魔法道具のエネルギー源として使われることがあり、ライルに言わせれば初代ライルが生きていた時代を除けば、三百年前から出土する合成魔石のできはかなりいいのだ。特に一代前のライルの死後の物が。今しがた購入した魔石がまさにそれだった。
ライルはポケットから工具を取り出し、慣れた手つきで飴玉サイズの合成魔石を解体していく。
(ふむ。ここの魔術紋を書き換えればいけるな)
彼の見立て通りその合成魔石はすぐに元に戻った。錆びついた色から乳白色へと変わっている。
誰にも見られないよう、ライルはニンマリと笑いそれを魔王探知機の中にある同様のものと取り替えた。これで感度が増した。次こそちゃんと作動すると。
「……!!!」
途端にその装置は強烈な赤い光をあげ、コンパスの芯は一直線に遺跡群の方向へと向いた。
ライルは血相を変えてギルドを飛び出し、何十年かぶりに全速力で走った。
あまりにも人が良すぎる旅の仲間が遺跡の跡地をまわっているはずだ。早く知らせて逃げなくては。
(しかしこの光の強さは……)
いつ悲鳴が聞こえてもおかしくない。見るも無惨な惨状が待ち受けているかも……そんな考えで頭の中がいっぱいになるが、いつまで経っても状況は変わらない。島に住む人々は眼鏡をずらし息を切らしながら走る男性を見て、不思議そうな顔をしているだけだった。
手元のコンパスだけが相変わらず真っ赤な警報光を灯している。
蒼達は昼間に別れた、遺跡が見渡せる丘にいた。頭が四つに犬が一頭……いや、奥にさらに二人。女と子供。手に握りしめた魔王探知機はどんどん熱くなる。過剰に反応しているのがわかった。
手のひらに感じる熱さとは逆に、ライルの体の血の気は引いていき何も考えられなくなっていた。
ついにパリンと音がして魔王探知機が壊る。
「逃げて! 逃げるんだ!!!!! そいつは魔王だ!!!!!」
喉が割れんばかりに叫んだ。
◇◇◇
「あれ? ライルさん!? 大丈夫ですか!!?」
蒼が振り返ると、息も絶え絶えに真っ青になっているライルがいた。しきりに逃げろと叫んでいる。
「……魔王だって言ってるよ」
フィアがちょっと気まずそうな声を出した。
「僕達を心配して走って来てくれたんですね」
「流石に気の毒だ。早く真実を」
レーベンは感激し、オルフェはこの後ライルがどんな反応するか想像もできないと顔をしかめた。
「ライルさん。大丈夫です。こちらへ」
アルフレドが迎えに行く。手にオヤツのバターサンドを持ったまま。
「な……な! な!? わかってるんですか!? あなた達! わかって今一緒にオヤツを食べている!?」
見たことがないほどパニックになっているライルを見て、蒼達は心底申し訳なさそうな顔になった。まさか彼がここまで自分達を心配してくれるとは思っても見なかった。いつもクールで塩対応なライルが目を白黒させている。
(そりゃあビックリするわよねぇ)
蒼達は諸悪の根源と言われている魔王と、聖水を準備するどころか剣も抜かずに一緒にいるのだから。
「何もしない。何もする気はない。今はただこのバターサンドというお菓子を食べたい」
ミュスティーがジッと目を逸らさずライルに話しかけた。
「お、お前が……」
ライルの声は震えている。
「そう。ワタシが魔王」
少しの同様も見せず、はっきりと答える。ミュスティーの隣にいるサニーは目を伏せていた。
「真実を」
誰を見たらいいのかわからないライルはただそう声を絞り出した。
◇◇◇
「今のワタシは人間の体に魔王を入れ込んだ状態になっている」
あらためて自己紹介するようにミュスティーが自分で話始める。穏やかな風が吹く陽の光の下で。
ライルは溢れる質問をグッと抑えて続きを待っていた。そういう約束だからだ。
「この身体はお前達が呼ぶ、『魔王に与する者』達によって作られた」
理由はライルがかつて予測し蒼に話した通り。『与する者達』は魔王の力を人の力でコントロールしようとしている。自分達はそこから逃げ出して今ここにいるのだと。
「かつての魔王のような振る舞いをする気はない。ただ、人として生きたいと思っている」
蒼はその時、ライルの瞳が揺れるのを確かに見た。彼はまだ嘘を見抜ける加護を持ったままだ。ミュスティーの言葉が嘘ではないと知り、動揺している。
「今のワタシはまだ弱い。与する者達が一生懸命ワタシの力を高めようとしているが、上手くいっていない」
ミュスティーはここでニヤリと不敵に笑った。ザマアミロという感覚が彼にはあるのだと知って、蒼達はこっそり驚いている。
魔王の力が弱いまま。それは英雄の末裔達や上級神官達の努力であり、アオイ達の地道な浄化作業であり、そして翔達の頑張りの積み重ねだった。
「だからそこの戦士の末裔はワタシと食事をすることにした。変なことをしないか見張るために手元に置いておきたいと思っている。弱いとわかっているからそうできる。少しでも変な動きをすればワタシの首は飛ぶだろう」
アルフレドは表情を変えない。その通りだからだ。
「ワタシはまだ死にたくない。消滅したくない。だからそうならない道を探している」
その感覚が人間由来のものか、それともやはり今回の魔王が特殊だからなのか、それはわからない。
「ここへはサニーの、母の予知に導かれてやってきた」
「サニーさんは神官の末裔だって仰ってましたもんね」
眉をひそめたライルを見て、レーベンがすかさずフォローする。サニーは予知の加護を受け継いでおり、それを頼りにここまで——蒼達のところまでやってきた。
ミュスティーが話すのをやめたので、ライルが少し呼吸を整えた後質問に入る。
「予知の内容は?」
「どこか知らない部屋の箱の中に御使が現れました」
答えたのはサニー。彼女の予知はいつも断片的。写真を見るように予知を見る。
彼女はセレーニアの遺跡群、地下へ続く入り口、それにオルフェ、蒼の家の門、そして箱の中にいる動く御使を見た。
ここまで、蒼達はすでに彼らから同じ説明を受けていた。
蒼達と再開してあまり時間をおかず、意を決したようにサニーもミュスティーもその場でカミングアウトしたのだ。自分達は魔王とその母であると。どうか助けてほしいと。
そしてここから先は蒼達が躊躇っていた質問だ。
「あなたはサニーさんを母と呼んだが、つまりその肉体はサニーさんの息子のもの。神官の末裔の身体の中にいるということですか?」
神官の末裔の肉体は瘴気に強い。つまり魔王や魔物のエネルギー源とは相性が悪いのでは? と尋ねたいのだ。蒼達がその質問をしなかったのは、もちろんサニーがどんな気持ちで息子の中にいる魔王と行動を共にしているかわからなかったからだ。
「神官の末裔どころではありません。息子は勇者の末裔です」
「え? ええええええ!!?」
諦めたような声でサニーが答え、もちろん全員が驚いた。
勇者の末裔はほとんど残っていないとされていた。翔を含めたほんの数人が大切に守られて暮らしていたのだ。誰も彼もが勇者の血を欲しがったが、それこそ争いの元だと他の末裔達とは違い、かなり閉鎖的な婚姻関係を続けたとされている。
そして追い打ちをかけるかのようにサニーは続ける。
「魔法使いの末裔の血も、戦士の末裔の血も、そしてテイマーの末裔の血も入っています。強い肉体を作るために」
「つまり魔王の入れ物として用意されたと?」
「その通り。魂のない肉体を作り出し、そこに魔王を入れました」
それはまさに、一代前のライル・エリクシアがやろうとしていたこと。彼らはオートマタと人間とのキメラ化を考えたが上手くいかなかった。『与する者』はそこからさらに研究を重ね、魔王に適する身体を作り上げたのだ。
「サニーさんはどうして『与する者』を抜けたんですか?」
恐る恐る蒼は尋ねる。彼女は魔王を魔王としてではなく、息子として扱っているように見えたからだ。以前出会った時も、ミュスティーを、魔王を守るように前に立っていた。
「話が違ったからです。できる限り平和的に魔王の力をため、その後魔王の力を見せつける。争いに向かう世界を牽制するための武器として魔王と共に生きようと。そう言っていたのに」
最後の魔王発生から三百年。それだけ時間が経てばその恐ろしさを忘れる世界の為政者達もいた。
(つまり最初は、この世界の警察としての役割を担おうとしてたってことか)
だが結局、その力を使って自分達が世界を支配した方が早いのではないかと言い出す者達が組織の主流になってしまう。
「黒い鎖を使って魔王を、息子を使役するつもりだったのです」
「あの忌々しい鎖か!」
オルフェはしっかり覚えている。その鎖を巻かれ、どうしようもなく惨めな日々を送ったことを。
「そんなこと、私には耐えられなかった。人のように育っていくミュスティーを見ていたらどうしても……」
そんなサニーを横目で見ながら、ミュスティーはバターサンドを小さく口の中に含んだ。
ライルは頭を抱えている。何が何だかわからない。どうしたらいいかもわからないと。
「よし。じゃあとりあえず、テレビ会議ですね!」
蒼はもうヤケに近い感情だった。だがもうこうするしかないとわかっている。蒼の最終防衛基地へ魔王を迎え入れるしかないのだと。
勢いよく謎の単語が出てきて、その場にいる蒼以外がポカンと首を傾げていた。
「本当にその合成魔石でよろしいので? もう使えませんが……価格は高いですが天然魔石もありますよ」
ギルドの担当職員はその錆びついた色合いの鉱物を購入者ライルに手渡しながら、少し遠慮がちに声をかける。やっぱやめた! が今ならまだ間に合いますよと。
「いえ、探していたものなので。……ですがどこか部屋を貸していただけませんか。少し調整をして足りないものがあれば追加で購入したいのです」
職員の方はこんな古いものが直せるのか? と、内心思っているのがありありとわかる顔をしていた。だがもちろん口には出さない。こういうところには稀にライルのように突拍子もないと思われる研究をしている学者がやってくるのだ。
「ではあちらをお使いください。新しく作った保管庫なんですが、まだ何も入っていないので」
どうも、と軽く会釈しライルは早速魔王探知機の改良を始めた。
(天然魔石より合成魔石の方が圧倒的に強力で安定した出力を保てるんだが)
なぜ天然物の方が価値が高いのか、イマイチ納得できないとライルは思っている。魔石は魔法道具のエネルギー源として使われることがあり、ライルに言わせれば初代ライルが生きていた時代を除けば、三百年前から出土する合成魔石のできはかなりいいのだ。特に一代前のライルの死後の物が。今しがた購入した魔石がまさにそれだった。
ライルはポケットから工具を取り出し、慣れた手つきで飴玉サイズの合成魔石を解体していく。
(ふむ。ここの魔術紋を書き換えればいけるな)
彼の見立て通りその合成魔石はすぐに元に戻った。錆びついた色から乳白色へと変わっている。
誰にも見られないよう、ライルはニンマリと笑いそれを魔王探知機の中にある同様のものと取り替えた。これで感度が増した。次こそちゃんと作動すると。
「……!!!」
途端にその装置は強烈な赤い光をあげ、コンパスの芯は一直線に遺跡群の方向へと向いた。
ライルは血相を変えてギルドを飛び出し、何十年かぶりに全速力で走った。
あまりにも人が良すぎる旅の仲間が遺跡の跡地をまわっているはずだ。早く知らせて逃げなくては。
(しかしこの光の強さは……)
いつ悲鳴が聞こえてもおかしくない。見るも無惨な惨状が待ち受けているかも……そんな考えで頭の中がいっぱいになるが、いつまで経っても状況は変わらない。島に住む人々は眼鏡をずらし息を切らしながら走る男性を見て、不思議そうな顔をしているだけだった。
手元のコンパスだけが相変わらず真っ赤な警報光を灯している。
蒼達は昼間に別れた、遺跡が見渡せる丘にいた。頭が四つに犬が一頭……いや、奥にさらに二人。女と子供。手に握りしめた魔王探知機はどんどん熱くなる。過剰に反応しているのがわかった。
手のひらに感じる熱さとは逆に、ライルの体の血の気は引いていき何も考えられなくなっていた。
ついにパリンと音がして魔王探知機が壊る。
「逃げて! 逃げるんだ!!!!! そいつは魔王だ!!!!!」
喉が割れんばかりに叫んだ。
◇◇◇
「あれ? ライルさん!? 大丈夫ですか!!?」
蒼が振り返ると、息も絶え絶えに真っ青になっているライルがいた。しきりに逃げろと叫んでいる。
「……魔王だって言ってるよ」
フィアがちょっと気まずそうな声を出した。
「僕達を心配して走って来てくれたんですね」
「流石に気の毒だ。早く真実を」
レーベンは感激し、オルフェはこの後ライルがどんな反応するか想像もできないと顔をしかめた。
「ライルさん。大丈夫です。こちらへ」
アルフレドが迎えに行く。手にオヤツのバターサンドを持ったまま。
「な……な! な!? わかってるんですか!? あなた達! わかって今一緒にオヤツを食べている!?」
見たことがないほどパニックになっているライルを見て、蒼達は心底申し訳なさそうな顔になった。まさか彼がここまで自分達を心配してくれるとは思っても見なかった。いつもクールで塩対応なライルが目を白黒させている。
(そりゃあビックリするわよねぇ)
蒼達は諸悪の根源と言われている魔王と、聖水を準備するどころか剣も抜かずに一緒にいるのだから。
「何もしない。何もする気はない。今はただこのバターサンドというお菓子を食べたい」
ミュスティーがジッと目を逸らさずライルに話しかけた。
「お、お前が……」
ライルの声は震えている。
「そう。ワタシが魔王」
少しの同様も見せず、はっきりと答える。ミュスティーの隣にいるサニーは目を伏せていた。
「真実を」
誰を見たらいいのかわからないライルはただそう声を絞り出した。
◇◇◇
「今のワタシは人間の体に魔王を入れ込んだ状態になっている」
あらためて自己紹介するようにミュスティーが自分で話始める。穏やかな風が吹く陽の光の下で。
ライルは溢れる質問をグッと抑えて続きを待っていた。そういう約束だからだ。
「この身体はお前達が呼ぶ、『魔王に与する者』達によって作られた」
理由はライルがかつて予測し蒼に話した通り。『与する者達』は魔王の力を人の力でコントロールしようとしている。自分達はそこから逃げ出して今ここにいるのだと。
「かつての魔王のような振る舞いをする気はない。ただ、人として生きたいと思っている」
蒼はその時、ライルの瞳が揺れるのを確かに見た。彼はまだ嘘を見抜ける加護を持ったままだ。ミュスティーの言葉が嘘ではないと知り、動揺している。
「今のワタシはまだ弱い。与する者達が一生懸命ワタシの力を高めようとしているが、上手くいっていない」
ミュスティーはここでニヤリと不敵に笑った。ザマアミロという感覚が彼にはあるのだと知って、蒼達はこっそり驚いている。
魔王の力が弱いまま。それは英雄の末裔達や上級神官達の努力であり、アオイ達の地道な浄化作業であり、そして翔達の頑張りの積み重ねだった。
「だからそこの戦士の末裔はワタシと食事をすることにした。変なことをしないか見張るために手元に置いておきたいと思っている。弱いとわかっているからそうできる。少しでも変な動きをすればワタシの首は飛ぶだろう」
アルフレドは表情を変えない。その通りだからだ。
「ワタシはまだ死にたくない。消滅したくない。だからそうならない道を探している」
その感覚が人間由来のものか、それともやはり今回の魔王が特殊だからなのか、それはわからない。
「ここへはサニーの、母の予知に導かれてやってきた」
「サニーさんは神官の末裔だって仰ってましたもんね」
眉をひそめたライルを見て、レーベンがすかさずフォローする。サニーは予知の加護を受け継いでおり、それを頼りにここまで——蒼達のところまでやってきた。
ミュスティーが話すのをやめたので、ライルが少し呼吸を整えた後質問に入る。
「予知の内容は?」
「どこか知らない部屋の箱の中に御使が現れました」
答えたのはサニー。彼女の予知はいつも断片的。写真を見るように予知を見る。
彼女はセレーニアの遺跡群、地下へ続く入り口、それにオルフェ、蒼の家の門、そして箱の中にいる動く御使を見た。
ここまで、蒼達はすでに彼らから同じ説明を受けていた。
蒼達と再開してあまり時間をおかず、意を決したようにサニーもミュスティーもその場でカミングアウトしたのだ。自分達は魔王とその母であると。どうか助けてほしいと。
そしてここから先は蒼達が躊躇っていた質問だ。
「あなたはサニーさんを母と呼んだが、つまりその肉体はサニーさんの息子のもの。神官の末裔の身体の中にいるということですか?」
神官の末裔の肉体は瘴気に強い。つまり魔王や魔物のエネルギー源とは相性が悪いのでは? と尋ねたいのだ。蒼達がその質問をしなかったのは、もちろんサニーがどんな気持ちで息子の中にいる魔王と行動を共にしているかわからなかったからだ。
「神官の末裔どころではありません。息子は勇者の末裔です」
「え? ええええええ!!?」
諦めたような声でサニーが答え、もちろん全員が驚いた。
勇者の末裔はほとんど残っていないとされていた。翔を含めたほんの数人が大切に守られて暮らしていたのだ。誰も彼もが勇者の血を欲しがったが、それこそ争いの元だと他の末裔達とは違い、かなり閉鎖的な婚姻関係を続けたとされている。
そして追い打ちをかけるかのようにサニーは続ける。
「魔法使いの末裔の血も、戦士の末裔の血も、そしてテイマーの末裔の血も入っています。強い肉体を作るために」
「つまり魔王の入れ物として用意されたと?」
「その通り。魂のない肉体を作り出し、そこに魔王を入れました」
それはまさに、一代前のライル・エリクシアがやろうとしていたこと。彼らはオートマタと人間とのキメラ化を考えたが上手くいかなかった。『与する者』はそこからさらに研究を重ね、魔王に適する身体を作り上げたのだ。
「サニーさんはどうして『与する者』を抜けたんですか?」
恐る恐る蒼は尋ねる。彼女は魔王を魔王としてではなく、息子として扱っているように見えたからだ。以前出会った時も、ミュスティーを、魔王を守るように前に立っていた。
「話が違ったからです。できる限り平和的に魔王の力をため、その後魔王の力を見せつける。争いに向かう世界を牽制するための武器として魔王と共に生きようと。そう言っていたのに」
最後の魔王発生から三百年。それだけ時間が経てばその恐ろしさを忘れる世界の為政者達もいた。
(つまり最初は、この世界の警察としての役割を担おうとしてたってことか)
だが結局、その力を使って自分達が世界を支配した方が早いのではないかと言い出す者達が組織の主流になってしまう。
「黒い鎖を使って魔王を、息子を使役するつもりだったのです」
「あの忌々しい鎖か!」
オルフェはしっかり覚えている。その鎖を巻かれ、どうしようもなく惨めな日々を送ったことを。
「そんなこと、私には耐えられなかった。人のように育っていくミュスティーを見ていたらどうしても……」
そんなサニーを横目で見ながら、ミュスティーはバターサンドを小さく口の中に含んだ。
ライルは頭を抱えている。何が何だかわからない。どうしたらいいかもわからないと。
「よし。じゃあとりあえず、テレビ会議ですね!」
蒼はもうヤケに近い感情だった。だがもうこうするしかないとわかっている。蒼の最終防衛基地へ魔王を迎え入れるしかないのだと。
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