16 / 16
16 別れ
しおりを挟む
「ああ! 使い鳥が!!!」
人々が空を見上げながら声をあげた。上空で羽ばたいていたルークが光に包まれ始めたのだ。
「ルーク!?」
そのままルークはゆっくりとミケーラの肩に舞い降りた。
『ミケーラ。レティシアの……いや、僕の為にありがとう』
彼の声はミケーラにしか聞こえていないのがわかった。
「そんな! 私は何もしていないわ! ただここにいただけ……」
『そんなことないよ。君があの暗闇の中で頷いてくれなかったら何も始まらなかった』
ミケーラのやったことと言えば幽霊ごっこくらいだ。後は王や大神官達がうまく手を回してくれた。
『君がうまく振る舞ってくれたからできたことだよ。何か一つでも間違えば、きっと聖女になったパミラには敵わなかったんだから』
幽霊ごっこもとてもうまかったよ、と少しからかい気味に褒めてくれた。
「消えちゃうの……?」
ミケーラは涙を浮かべていた。彼女にとってルークは初めての家族に近い存在だった。娼館という狭い世界で生きてきた彼女は、別れがこれほど悲しいものだとは知らなかった。
『僕の存在と引き換えにレティシアの身体を復活させたからね』
何のことはないといった雰囲気で話すルークに後悔は感じなかった。
「彼女の側にいける?」
『いけるといいな』
ルークは決して言わなかったが、レティシアを心から愛していたのだ。だから自分の全てを捨てて彼女を陥れた者達に罰を与えようとした。
「これからどうしたらいい?」
『この身体で精一杯生きて。レティシアの分まで』
それは前にミケーラがルークに行った言葉だった。
「それでいいの?」
『いいんだよ』
そうしていつものように、ミケーラに頬ずりをした。
「さようなら」
『さようなら』
光の粒となったルークは消えていった。
その後、ミケーラは王太子レオンハルトと結婚し、この国の王妃となった。彼女が死の間際に望んだとおり、裕福な生活を送ることが出来た。だがそれを享受するだけにとどまらない。
ミケーラは自分はレティシアでもあると考え、彼女が培ってきた知識や教養をこの国の為に使った。きっとその方が彼女もルークも褒めてくれるような気がしたからだ。
だからミケーラは死が少しも怖くはなかった。
(ああでも次死ぬ時は、余計な願いを考えないようにしなくちゃ)
かつて処刑場が設けられた広間には、使い鳥の美しい像が建てられいた。
ミケーラは、その日が来るまで後悔のないよう精一杯生きることをルークの像の前で誓ったのだった。
人々が空を見上げながら声をあげた。上空で羽ばたいていたルークが光に包まれ始めたのだ。
「ルーク!?」
そのままルークはゆっくりとミケーラの肩に舞い降りた。
『ミケーラ。レティシアの……いや、僕の為にありがとう』
彼の声はミケーラにしか聞こえていないのがわかった。
「そんな! 私は何もしていないわ! ただここにいただけ……」
『そんなことないよ。君があの暗闇の中で頷いてくれなかったら何も始まらなかった』
ミケーラのやったことと言えば幽霊ごっこくらいだ。後は王や大神官達がうまく手を回してくれた。
『君がうまく振る舞ってくれたからできたことだよ。何か一つでも間違えば、きっと聖女になったパミラには敵わなかったんだから』
幽霊ごっこもとてもうまかったよ、と少しからかい気味に褒めてくれた。
「消えちゃうの……?」
ミケーラは涙を浮かべていた。彼女にとってルークは初めての家族に近い存在だった。娼館という狭い世界で生きてきた彼女は、別れがこれほど悲しいものだとは知らなかった。
『僕の存在と引き換えにレティシアの身体を復活させたからね』
何のことはないといった雰囲気で話すルークに後悔は感じなかった。
「彼女の側にいける?」
『いけるといいな』
ルークは決して言わなかったが、レティシアを心から愛していたのだ。だから自分の全てを捨てて彼女を陥れた者達に罰を与えようとした。
「これからどうしたらいい?」
『この身体で精一杯生きて。レティシアの分まで』
それは前にミケーラがルークに行った言葉だった。
「それでいいの?」
『いいんだよ』
そうしていつものように、ミケーラに頬ずりをした。
「さようなら」
『さようなら』
光の粒となったルークは消えていった。
その後、ミケーラは王太子レオンハルトと結婚し、この国の王妃となった。彼女が死の間際に望んだとおり、裕福な生活を送ることが出来た。だがそれを享受するだけにとどまらない。
ミケーラは自分はレティシアでもあると考え、彼女が培ってきた知識や教養をこの国の為に使った。きっとその方が彼女もルークも褒めてくれるような気がしたからだ。
だからミケーラは死が少しも怖くはなかった。
(ああでも次死ぬ時は、余計な願いを考えないようにしなくちゃ)
かつて処刑場が設けられた広間には、使い鳥の美しい像が建てられいた。
ミケーラは、その日が来るまで後悔のないよう精一杯生きることをルークの像の前で誓ったのだった。
応援ありがとうございます!
22
お気に入りに追加
650
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(8件)
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
パルマ、パミラ、ガスコンロ系の名前ないかなぁ(勝手に3姉妹)と思ったり、可愛い誤字脱字にほのぼのしてしまいました。感動したり、クスッと笑う場面、それぞれの過去・前世違いや聖女から偽聖女、悪役令嬢から……素敵な作品ありがとうございます。
番外編や、その後も読んでみたくなりました。
誤字脱字は本当……すみません!なおそうと思って放置が続いております……
実は途中まで書いたの番外編が何作かあるので、ほんとその内ポイっと投稿すると思います。
嬉しいご感想いただけて、本当に幸せです。ありがとうございました!
偽聖女はパルマなのかパミラなのかどっち?
あれ?二人いる?
あれ!?2人いるぞ……!!!?なにか突然1人似た名前の登場人物が増えたぞ!!?
大変失礼いたしました……修正いたしました……。
ご指摘、本当にありがとうございました!
題名見て、面白そう💕と思い
実際、読ませて頂き面白かったです。
悪役令嬢として嵌められ処刑された
公爵令嬢の凛とした佇まいと知性等
美しいわ〜😆
そして娼館で育ちながらも決して
卑屈にならず自分の現状を受け入れ
何事に対しても素直過ぎるくらい
前向きな娼婦👏👏👏
残酷な中に救いのある物語で
最終話は感動すら感じ作者様の
他の作品も読ませて頂きたく
お気に入りに追加させて頂きます💕
素敵な作品ありがとうございます♬
蘭丸様
実は題名、なかなかしっくりこずに連載中に変更…という経緯があるのでそう言っていただけて安心しました~!思い切って変えてよかった…!!!
ミケーラは閉鎖的な世界で生きてきたので世間一般からはズレてはいましたが、
「無知の知」はあったので、素直にそして深く感謝しながらレティシアの記憶(と使命感)を受け継いだのでした。
なんとも恐れ多い、大変光栄なご感想ありがとうございます!
作品ごとにテンションの差がかなりありますので、
もし気に入っていただけるものがあればとっても嬉しいです!